どうしようもない怒りをコントロールするために。正しい怒り方の3つのステップ

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 怒ること自体は間違いではない。
 問題なのは、感情に任せて喚き散らしたり開き直ったりしてしまうことである。

 戦略的に「私は怒っている」ということを適切に相手に伝えることにより、交渉を有利に進めたり、場をコントロールすることができる。
 ガミガミと説教したり、無節操に声を荒げたり、怒りの対象に恥をかかせるようなことをすることはよろしくない。

 それでも日々の生活の中で、どうしようも腹立たしいことは周期的に訪れる。
 完全に穏やかな暮らしなんてものはないと考えたほうがいい。

 であれば、我々は怒りと上手に付き合う方法を身につけるべきなのだ。
 怒らない方法ではなく、怒りをコントロールする方法だ。
 怒ることは構わないけれど、節度を持って冷静に怒ることが必要なのだ。

 難しそう?
 そんなことはない。誰でもできることだ。
 一緒に見ていこう。

 

1. 不快な気分であることを相手に示す ―不快感の通告

 繰り返すようだけれど、怒りそれ自体は悪いことではない。
 誰にでも怒りという感情は備わっており、誰でも場合によっては怒髪衝天する。
 怒りの感情を抱くことも、それを表明することも決して悪いことではない。

 従って、ちょっとイラッとさせられた段階でそれを相手に適切に伝えることは有効な戦略になり得る。
 「今ちょっと気持ちが高ぶっていて、自分の気持ちを正確に伝えられないかもしれない。だけど言わなくてはならないと思うから言うね」と「前置き」した上で、なぜ自分が不愉快に思い怒りを感じたかを説明するのである。
 この「前置き」が重要であり、これを「不快感の通告」と言う。
 目的は二つある。

 1. 相手の敵意を和らげ、これから語る「なぜ怒りを感じたのか」という話を共感を持って聞いてもらうため。
 2. 相手の感情に変化を起こすことによって、こちらの主張がよく伝わるようにするため。

 また、ちょっとした怒りの仕草を示すことも有効である。
 と言ってもゴミ箱を派手に蹴飛ばすとかそういうことではなく、軽く咳払いをする、テーブルに強く手をつく、拳を握るという程度のものである。
 本当にちょっとした仕草だ。敵意を持たれては意味がない。

 適正にコントロールされた怒りを表現することによって、解決への糸口が見つかることもあるのである。
 
 

2. 怒りを適切に表現する

 怒りを感じた時にそれを表現しないで心の中に仕舞ってしまう人は、怒りを表わす人に比べて気管支炎や心臓発作を起こす確率が高く、寿命も短いことがわかっている(ミシガン大学アーネスト・ハーバーグの研究)。
 怒りを押し殺してしまうことは精神的ダメージが大きく、多大なる健康リスクに結びつくということだ。

 とは言ってもどうすれば怒りを適切に表現できるのだろうか。ゴミ箱を派手に蹴飛ばさず周囲の顰蹙も買わなくて済むにはどうしたらいいだろうか。

 

1. 怒りを鎮めようと思わないこと

 「怒ってはいけない」「怒りを鎮めなくちゃ」と怒りを制御すべく自分に言い聞かせることは最もやってはいけないことのうちのひとつである。
 前述の健康リスクも理由だし、何より、人は「やってはいけない」と思えば思うほど逆にそのことが頭の中で膨らんでしまう習性がある。

 つまりは、「こんなことで怒ってはいけない」と思えば思うほど頭の中で怒りの感情がぐるぐるしてしまい収集がつかなくなってしまうのだ。
 その状態から怒りを鎮めるために相当なエネルギーとストレスを要するし、最悪の場合、怒りを爆発させてしまいかねない。

 

2. 状況を自分でコントロールできるか・できないかを考える

 怒りを感じたらまずは「この怒りを感じている状況は自分で変えることのできるものか・できないものか」を考えよう。

 柱に足の小指をぶつけた、旅行先で大事なものを忘れたことに気付いた、予報にない大雨が降ってきた、などの場合は自分ではコントロールが及ばないことである。
 だから怒りを表しても仕方がない。意味がない。

 それに対し、友人が連絡もなく約束を破った、店員の態度があからさまに悪い、部下が遅刻ばかりする、といった例であれば自分で状況を変える余地がある。
 よって、怒りを表明することに意味もある。

 

3. 深呼吸して落ち着く(怒りを鎮めるためではない)。戦略を練る

 怒りを感じてカッとなるとすぐに行動したくなるのだけれど、まずは落ち着こう。
 何事も「ゆっくり」を心がけること。
 あえて間を置くこと。
 相手を威嚇しない程度の声の調子で話すこと。
 深呼吸をすること。

 落ち着く目的は、怒りを鎮めるためではない。
 鎮まったならそれに越したことはないが、幅広い戦略で怒りに対処するためである。
 怒り心頭でカッカしているとどうしても視野が狭くなりがちで、すぐにでも飛び出して何か行動をしたくなるものである。
 その頭が爆発しそうな状態をまずは少しでも落ち着かせ、自分にとってより良い選択をすることを考えよう。

 

4. 「怒りを表すことが状況を改善するか、それとも悪くするか」を常に自問して最善の行動を取る

 怒りの対処の仕方に決まった正解はない。
 状況や相手にもよるので、その対策は千差万別である。
 「常にこうすれば絶対に正解」というのはない。

 将棋のように相手の出方を数手先まで読んで、それに備えること。
 適切な対処のためにはこちらの主張を突き通すこともあるだろうし、信頼関係を壊さないために相手の放った言葉を無視することもあるかもしれない。

 ただひとつ言えることは「怒りを表すことが状況を改善するか、それとも悪くするか」を常に自問し、冷静に、客観的に対処することが肝要であるということだ。
 怒らないことが美徳であるとは限らないし、怒ることが醜悪なことであるとも限らないのである。

 

3. 怒りを速度で表し、スピードを落とすよう心がけること

キレてしまうのは、心に迫る脅威をいち早く排除しようとするため

 非常に腹を立てている時に攻撃的になってしまうのは、こちらから攻撃しないともっとひどい目に遭うと思い込んでいるからである。

 心理学者ジョン・リスキンドは、その「思い込み」こそが問題であるとした。
 つまり、怒りの感情自体が悪者なのではなく、このまま状況が悪化すれば危険が増し、対処できることが急速に失われていくと錯覚してしまうことが問題なのだ。

 おおよそ怒りを爆発させてしまう・キレてしまう場合というのは、何か心に危機が差し迫っていて、その脅威を今すぐに排除しなければ取り返しのつかないことになってしまうと思い込んでしまうことによる。
 しかしながら、実際にはキレてしまったほうが取り返しのつかないことになってしまうのである。皮肉だ。

 

怒りの程度をスピードに表してみる

 肝要なことは、自分の怒りの状態を知ることである。
 収まりつつあるのか、怒りが増幅されているのか、一定なのか。
 見境なく制御不能になる前に「自分は今ものすごく怒っていて、暴力も厭わない状態だ」とセルフチェックすることであり、「少し間を置けば大丈夫かもしれない」と思える余裕を作り出せれば、取り返しのつかないことを避けることができる。

 そのために、怒りの程度を速度表で表してみるという方法がある。

 時速145km以上 怒りが爆発する、暴力を振るう
 時速140km 激怒する
 時速130km かっとなる
 時速120km 憤慨する
 時速110km 憤る
 時速100km 怒りを覚える
 時速90km 頭にくる、腹立たしい
 時速80km 心をかき乱される
 時速70km むっとする、いらつく
 時速65km 気分を害する
 時速55km以下 冷静、穏やか、落ち着き

 『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』(草思社)より

 自分の中での「怒りの制限速度」を超えてしまっている際には、相手と自制の効いたコミュニケーションを取るために速度を落とさなくてはならない。
 頭の中でゆっくりとブレーキをかけることを想像してみよう。時速200kmもの猛スピードだったものが時速120km程度まで抑えられれば成功である。
 そうなると、相手との距離も程よく離れ、相手の声に耳を傾けることもできるようになっているはずだ。

 怒りをコントロールする上でこのように速度に例えることは、おもしろい試みであると共に大変に実用的なものである。
 怒っている最中というのは、概ね時間がないような、何かに差し迫られているような気分になっている。
 そこで、このように怒りを速度に例える癖を付けてみると、気持ちにゆとりを持って一息つけることができるようになるはずだ。

 

まとめ:正しい怒り方の3つのステップ

 1. 気分を害することをされたら、不愉快であること・怒りで気持ちが高ぶっていることを相手にきちんと伝える。

 2. 「こんなことで怒ってはいけない」と思わないこと。まずは冷静になり、最善の行動を選択できるよう自問し続ける。

 3. 怒りを爆発させないために、怒りを速度で表してみて可視化・客観化して気持ちにゆとりをもたらす。