【書評】『アンガーマネジメント入門』安藤俊介【著】

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アンガーマネジメント入門 (朝日文庫)

 「アンガーマネジメント」とは「アンガー=怒り」「マネジメント=管理」、すなわち、怒りを上手に管理する技術のことです。

 誤解していけないのは「怒り=悪」ではないということです。怒りというのは誰でも持ち合わせる自然な感情であり、極めて重要な感情でもあります。例えば、無法者によって身近な人が理不尽に虐げられている時、我々は怒りを感じます。その怒りのエネルギーは世の中を是正する原動力となるのです。市民が結束して絶対王政を打破したフランス革命も、アメリカにおける黒人の権利獲得も、そもそもの原動力は「怒り」なのです。つまりは「怒り=悪」ではないのです。

 そう、つまりアンガーマネジメントとは「怒りを消し去る技術」というよりは、「怒りに振り回されない技術」「どうでもいいことで感情的にならない技術」「怒るとしても冷静に怒る技術」であると言えます。「些細な事で感情的になってしまいあとで後悔する」ということをなくす技術です。

 かなり怒りっぽかった私ですが、これではいけないと猛省しアンガーマネジメントの考え方を生活に取り入れることで、思考がかなりマイルドになっていることを実感しています。考え方ひとつで怒らないことは可能なのです。

 

人はなぜ怒るのか?

 そもそも人はなぜ怒るのかを知るためには、人間が動物であることに思いを巡らせなければなりません。

 動物は身の危険を感じた時に「怒り」を感じるように脳がプログラムされています。自分のナワバリに侵入者があった場合や捕食者に脅かされそうな場合、鼓動を速くし、筋肉を緊張させ、呼吸は浅く速くなります。危険に瞬時に備えるためです。動物が身の危険を感じて怒りが発動された際には「戦う」「逃げる」の二種類の選択肢しかありません。勝ち目があれば相手に襲いかかる。なければ一目散に逃げ去る。

 このメカニズムは我々人間にとっても同様です。我々が怒りを感じた際のことを思い出してみると「相手にバカにされた」「キャパシティを超える仕事を押し付けられた」「自分の所持品が見当たらない」など、少なからず身の危険を感じる事象に関連して怒りが発動されているはずです。怒りは本能の防御反応であるとも言えます。

 動物の場合は怒りに対して「戦う」「逃げる」というシンプルな行動を起こしていても問題ないのですが、我々は人間です。全ての危険に対して怒りをあらわにし「戦う」「逃げる」という手法で解決するのは現実的に無理があります。コミュニケーションの取れない人との烙印を押されてしまうことにもなりかねません。

 そのために我々人間はアンガーマネジメントによって、怒りという感情を上手に管理していく必要があるというわけです。

 

怒りという感情はどのようにして生まれるか?

 同じ出来事に遭遇しても怒る人と怒らない人がいます。あるいは、同じ人でも怒ってしまうタイミングと怒らないタイミングがあるでしょう。

 例えば、上司に資料の間違いを指摘された際、「いちいちうるさいな、だったら自分で作れよ」とストレスに感じる人もいれば、「あー間違ってたんだな」と素直に受け止める人もいます。同じ人でも、気分が良いときにミスを指摘されてもあまり気にしないものの、落ち込んでいるときにミスを指摘されてしまうと「いつも自分ばかりこうやって怒られている。不公平だ」と怒りを感じてしまう場合もあるということです。

 これはつまり「出来事=怒りを生む」ということではなく、我々の解釈の仕方によって怒りが生まれていることを示しています。「ミスを指摘される → 怒り」ではなく、「ミスを指摘される → 自分ばかりが不運な目に遭っている → 不公平だ!(怒り)」というプロセスを踏むということです。アンガーマネジメントにおいて重要なことは、この「自分ばかりが不運な目に遭っている」の部分です。これを「出来事の意味付け」と呼びます。

 「ミスを指摘された」という出来事に対して「自分ばかりが不運な目に遭っている」という偏った意味付けしてしまうと怒りや落胆などの感情を生み出すことに繋がりがちになってしまいますが、「あー間違ってたんだな」くらいの意味付けしかしなければ怒りが生まれることはありません。

 この「出来事の意味付け」という現象を知っておくことによって、もし自分が次に怒りを感じた時に自分の怒りを客観的に捉えることができるようになります。見境なく怒っている状態というのは頭に血が昇って完全なる主観でしか物事を判断できない状態ですので、客観化や俯瞰をできるようになることはアンガーマネジメントにおいてことさら重要なことに違いありません。

 

誰でもできる!「24時間アクトカーム」から始めよう

 24時間アクトカームとは、実際の生活の中で、「感情はどのようであったとしても、表面的にはとにかく24時間穏やかにふるまう」というものです。
 この方法では、自分が怒らないと周囲はこんな反応をするのだ、ということを、少しでいいから実際に体験してもらうことが大切です。

 本書で紹介されている「24時間アクトカーム」は素晴らしい実践方法であると私は感じました。「アクト=演じる」「カーム=穏やか」、つまり「穏やかな自分を演じる」ことです。イライラすることやムカつくこと、カッとなることがあったとしても24時間アクトカーム中は表面上は穏やかに振る舞うのです。

■怒らないのは24時間だけでいいこと
 この先ずっと怒ってはならないと言われたらプレッシャーになってしまいますが、たった一日だけ穏やかに振る舞えばいいので気軽に始めることができます。24時間でも長いと感じるのであれば、就業時間中の8時間はアクトカームをするなど自分なりに工夫しても良いでしょう。

■実践的であること
 あれこれと理屈を並べる座学はとりあえず置いておいてまずはとにかく「表面上は穏やかな自分」を実践してみようということです。しかもたったの24時間。その穏やかに振る舞った24時間が自分にとって素晴らしいものだったら、次の24時間もアクトカームすれば良いのです。

■「怒ってはいけない」とは言っていないこと
 人は「○○してはいけない」と言われると、逆にしたくなってしまうものです。この24時間アクトカームは、要するに「24時間怒ってはいけない」ということを言っているのですが、表現としては「24時間でいいから穏やかな自分を演じよう」と前向きな表現がなされています。「怒ってはいけない」とネガティブに言われるよりも「穏やかな自分を演じよう」とポジティブに言われたほうがモチベーションが上がるのは明白です。

 

おわりに

 上記は私の備忘録として書き出した本書『アンガーマネジメント入門』におけるほんの一部であり、実際の本書の内容は怒らないためのテクニックや考え方の宝庫です。文庫本という読みやすく手軽に買える体裁であり、まさに入門として相応しいものとなっております。

 怒りに振り回されている自分を変えてみたいという人はアンガーマネジメントという考え方に触れることで、役に立つ部分が必ず見つかると確信しています。冒頭でも紹介した通り、ずっとイライラしていて常に一触即発状態だった私が劇的に変われたのです。

 
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