求人詐欺。中小・零細企業では求人票と違う労働条件で契約させられることは日常茶飯事であるという話

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 求人票・募集要項と違う労働条件で入社後に契約させられることを「求人詐欺」と言います。

 会社側の魂胆は、多くの応募が来るように過剰に見栄えの良い(社保あり、基本給20万円、雇用期間の定めなし、など)求人票を作成して募集をかけ、労働者を雇用してから低い労働条件での契約を迫るというわけです。労働者としても揉め事を起こしなくないし、解雇されたら水の泡なので渋々受け入れるしか選択肢がないというわけです。

 

「求人詐欺」抑止への画期的判決 ―2017年3月

 いわゆるブラック企業の跋扈と共に「求人詐欺」も社会問題化しており、その裏にはブラック社労士のアドバイスがあるといいますが、それに一石を投じる判決が2017年3月京都地裁でありました。求人票・募集要項と異なる契約内容に労働者が合意してしまったとしても無効にできるというものです。つまり、契約に合意してしまった労働者が悪いのではなく、そもそも違う契約内容を提示して合意させようとした企業側が悪い、という判断です。

 この画期的な判決によって悪質な「求人詐欺」がなくなっていけば良いのですが、ブラック企業が未だに大きな顔をして社会に憚っていることを考えると、まだまだ遠い先の未来のような気もします。

 
参考記事:
求人詐欺に画期的判決 求人票と異なる契約を結ばされても無効に – Yahoo!ニュース

 
 さて、ここからが本稿の本題です。私は今まで2社の中小・零細企業で働いたことがあるのですが、このような「求人詐欺」は日常茶飯事でした。先述の「ブラック社労士のアドバイス」によるものと言うよりは、私が見てきた中で言えば「社長のワンマン経営による横暴な独断」によるものが殆どを占めました。

 下記で簡単にですがその事例を紹介していきましょう。

 

1. 子どもの入院のため連休したAさんを減給した例

 田舎の農業法人での話です。事務員を基本給15万円で募集しており、何人かの面接の末、Aさんが採用されました。明るくて誠実そうな女性でした。

 そのAさん、採用されて働き始めてから1週間後にたまたま息子さんが体調を崩してしまい、3日間程会社を休むことになりました。会社側も「そういうことなら仕方ない」と快諾したかに見えました。後に支給された給与と給与明細を見てAさんは驚きました。基本給15万円のはずが12万円に何の断りもなく減らされていたからです。

 私は社内では比較的中立の立場であり、Aさんの話も社長の話も良く聞いていたのですが、社長いわく、「入社後1ヶ月も経たないうちに休むなんてとんでもない話」「1日ごとに状況説明の連絡をしてこないのは不遜である」と断定して、基本給を減らしたのだそうです。Aさんは抗議しましたが受け入れられなかったようです。

 

2. 聞いていない研修期間を設けられ、低い時給からスタートさせられたBさんの例

 ある和菓子屋の話。Bさんを他社からの引き抜きすることとなったのだけれど、前の職場で時給900円を貰っていたので同じ金額で雇ってくれると社長と話をし、合意しました(零細企業なので採用面接は社長が行うのです)。しかし、初めての給与明細を見てみると、時給850円になっていました。

 話と違うので当然にBさんは経理担当(社長夫人)に抗議。返ってきた言葉は「どの会社にも研修期間ってものがあるのは当然の話。いきなり満額の時給を貰えるわけがない。だけど、社長とそのように話をしたっていうなら仕方ない、来月から時給900円を支給します」とのこと。

 Bさんは何も悪くないのに、すごく嫌味ったらしくそのように言われて不愉快な気分になったそうです。当然です。

 

3. 社保に入れなかったCさんの例

 これも和菓子屋の話。Cさんは面接で社保完備と聞かされており、その条件ならということで入社を決めました。

 しかし蓋を開けてみれば社保未加入。当然ながらCさんは抗議をするわけですが、面接をした社長は「俺はそんなことは言っていない」と逆上。実はその面接の場にいた何人かによれば確かに社長は「社保完備」と言っていたらしいのですが、なんせワンマン独裁経営なので、社長が「言っていない」というのなら「言っていない」のです。

 入社してみればCさんはかなり問題のある人物であることがわかったので、結果的に高い給与を払わないことは賢明な選択だったといえるのですが、それとこれとは別の話。

 

まとめ:広い視野、軽いフットワークで選択しよう

 私の少ない社会経験の中でもこれだけの例が出てくるので、日本中を見渡せば毎日のように規模の大小に関わらず求人詐欺は起こっていると想像に難くありません。

 冒頭でも述べた通り、求人詐欺への画期的な判例が作られたことによって良い方向へ改善される社会の流れであることは明白なのですが、それらブラック企業が完全に撲滅されるのは遠い先の話になりそうであるというのも事実。であれば、自分の身は自分で守るしかありません。

 私見では「この仕事を失ったら職がなくなる」と狭い視野で考えるのではなく、「求人詐欺をするような会社は遅かれ早かれ更に何か大きな問題が起きるはずだ」と広い視野と軽いフットワークを保つことが大事であると考えます。ブラック企業に長居しても良いことは何一つありませんし、私たちは会社と結婚しなければならないわけでもありません。

 それぞれの状況があるので一般化はできないのですが、早々と見切りをつけて新しい環境に向けて動き出すという選択肢もあるのだということを心に置いておくべきと思います。