入社1年目で会社を辞めるかけがえのない3つのメリット

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 「入社したら3年は辞めるな」はもはや時代遅れの言説であることは周知の通りです。同様にして、横暴なブラック企業・やりがい搾取の文脈で語られる「今逃げたら一生逃げ続ける人生になるぞ」というのも詭弁です。私は「人生は逃げてナンボ」であると考えています。

 「逃げる=悪いこと」ではありません。「続ける vs 逃げる」の選択はそれぞれのメリットとデメリットを天秤にかけた上で自分の頭で考えて判断するべきであると思います。間違っても「『社畜は思考停止だ』と誰かが言ったから辞める」とか「『辞めることは逃げることだ』と言われたから続ける」という判断はあまりよろしくない。

 であれば、入社1年目であっても「このまま続けても意味がない」「このまま続けたら体調を崩してしまう」と思うなら何の躊躇いもなく辞めてしまっても構わないと私は考えます。むしろ入社1年目でも会社を辞めるメリットはあります。

 

入社1年目で会社を辞めるメリット=転職に有利

 逆説的な話とは思いますが、早期に会社を辞めて新たなスタートを切ることは転職に有利です。

 入社1年目で会社を辞めることが躊躇われる理由の一つに「転職に不利になるのではないか」と思ってしまうことが挙げられます。それは「根性がない人」「すぐに諦める人」との烙印を押されてしまうのではないかという懸念です。「最低でも3年は勤めなければならない」との強迫観念に駆られてしまうのは「3年は勤めた」という実績が欲しいというただそれだけの理由である場合が多いです。

 しかし、「3年勤めるデメリット=1年目で辞めるメリット」は確かに存在します。下記で「入社1年目で会社を辞めるかけがえのない3つのメリット」を見ていきましょう。

 

メリット1. 時間を無駄にしないために

 人生は有限です。会社勤めの人ならおおよそ60歳で定年になり、80歳くらいで命の灯火が薄らぎ、やがて消失します。人生の青年期である3年というのは極めて貴重な時間です。たった3年だけどされど3年。

 その3年を必死に会社にしがみついて有意義なものにする人もいるでしょうけれど、必ずしも全ての就職がそうであるとは限りません。就職というのはブラックボックスであり自分に適した会社に勤めることができるかどうかは、はっきり言って運です。

 
 誰しもが「面白そうと思って観てみた映画だったけれどつまらなかった」「運命の相手だと思って付き合ってみたけれどなんか違かった」という経験があるでしょう。就職も同じです。「就職してみたけれどなんか違かった」というのは誰にも起こりうる当たり前のことです。

 「つまらない映画を途中で観るのをやめること」や「相性の合わなかった相手と別れること」が弾劾の対象に全くならないのに、就職に関してだけは「辞めるのは逃げることだ」などと強く非難され、あまつさえ人格否定さえされてしまうのはおかしなことです。

 
 全く反りが合わずに関係が修復不可能な相手と別れることがお互いの時間を無駄にしないための賢明な判断であるとすれば、入社1年目であろうとも自分の時間を無駄にしないために辞めるという判断をすることは賢い選択になり得るのではないでしょうか。

 

メリット2. 自分の健康のために

 2017年7月末、新国立競技場建設に当たっていた23歳の現場監督が失踪の末に自殺したとの大変に痛ましい報道がありました(参考記事:新国立で過労自殺、時間外200時間を会社「把握せず」 |日本経済新聞)。この他にも2016年末に報道のあった電通における過労自殺、外食大手のワタミにおいて繰り返された過労自殺。

 これらに共通するのは皆、入社1年目で亡くなってしまっているという点です。新国立競技場建設の男性は入社11ヶ月、電通の高橋まつりさんは入社9ヶ月、ワタミの森美菜さんは入社わずか2ヶ月。

 これらの極めて痛ましい事実を突きつけられても「入社後3年は石にかじりついてでも頑張れ」と言えるでしょうか。最悪の事態は避けられたとしても、甚大なるストレスによってうつなどの精神疾患を患ってしまったら社会復帰が遅れ、貴重で素晴らしいはずの人生の時間を無駄にしかねません。

 
 私事ですが、新卒入社した会社を体調不良(抑うつ状態との診断)によって数カ月の失踪の末に退職しました。辞めるための踏ん切りが付かずにストレスの中でズルズルと仕事を続け、ある日それが些細なきっかけによって爆発してしまったのでした。ですが、それからの人生、なんとかなっています。損失を補うためにがむしゃらに頑張ったわけでもないのに、なぜかそれなりになんとか不幸でない程度に生きている。

 「今の会社を辞めること=人生のレールを踏み外すこと」では全くありません。自分の健康や人生を棒に振ってしまうくらいなら、思い切って辞めてしまうという選択肢がもっと重要視されてもいいはずです。

 

メリット3. 企業は「色に染まっていない」人材を求めている

 先述の通り、会社を辞めることを躊躇してしまう理由の一つに「入社1年目で辞めること=根性なし、すぐに諦める人」との烙印を押され、転職に不利になってしまうのではないかとの思い込みがあります。しかし、これは全くの思い違いです。

 
 どのような人材を求めるかは企業によって違いはあれど、一番厄介なのは「中途半端」な人材です。特に「中途半端に前の会社の色に染まっている人物」はその中途半端な知識と中途半端なプライドによって扱いが難しいものです。

 「中途半端に前の会社の色に染まっている人物」は、「前の会社ではこうだった」「前の会社とやり方が違う」とトラブルを起こしかねません。それが業務の効率化やイノベーションに繋がれば良いのですが、往々にしてそうはならずに「前の会社とはやり方が違う」は単なるわがままになりがちです。で、トラブルメーカーとの烙印を押されてしまうのです。

 入社1年目であれば殆ど新卒と同じなので、新たな会社がまっさらな状態からスムーズに教育を施し、その会社に適した人材に育成することが可能です。会社としても極めて扱いやすいのです。

 
 もちろん、転職にはメリットもあるけれど、同時にリスクも伴います。面接では当然のごとく「前職を辞めた理由」を聞かれるでしょうからそれに対して理路整然と返答しなければなりませんし、前職と比べて給与が下がるかもしれないという懸念もあります。全く新しい環境で働くことにもなりますので、一から人間関係を構築しなければなりません。

 ですが、逆に、「転職しないこと」にもメリットはあるし、同時にリスクもあるということは覚えておいて損はないでしょう。それは現状維持できるというメリットであり、やりたくない仕事を続けるというリスクです。日本においては未だに「一つの会社で勤め上げることが美徳」という信仰が根強いですが、それは人生における唯一の正解ではないのです。むしろ人によってはデメリットであり、リスクである可能性もあるということです。

 

おまけ:「一貫性の原理」に惑わされるな

 人には誰でも「一貫性の原理」という心理効果が備わっています。自分の選択や発言、信念などに一貫性を持たせたいと思うが故に合理的な判断ができなくなってしまう心理バイアス(=偏り)効果です。

 
 かつて私が勤めていた零細企業において、社長の独断で新たに3店舗をいきなり出店したことがありました。ですが、その全ての店舗において営業開始初月から全くお客さんが来ず大赤字、貧乏くじを引かされたが如く立地が極めて悪いために将来性も全くないという惨状。その出店は誰が見ても失敗でした。

 しかし「そのうち評判が立てば必ず黒字になる。ピンチはチャンスだ」と社長は全く店を畳む様子はなく、かと言って何かテコ入れする様子もなく、結局、だらだらと数年間そのまま赤字を累積させた挙句、会社の資金が枯渇しつつある頃にやむなく新規出店の全店舗を閉鎖していました。

 これが一貫性の原理です。「出店した」という事実に一貫性を持たせたいがために「赤字で将来性のない店舗は速やかに閉鎖する」という当たり前の判断ができなくなってしまうのです。

 
 これは私たちの就職に関しても言えることであると思います。「入社したのだから」という理由だけで辞めるのが躊躇われてしまう、「1年続けたのだから」という理由だけで辞めたいけれど2年目も過ごしてしまう、「入社して3年経ったのだから」というだけの理由でそのまま何の展望もないままにストレスフルな現状に甘んじてしまう。

 であれば、自らの心理バイアスに粘着させられないためにも、自分に合わないと感じる仕事は早期に見切りをつけてしまうという戦略も無用なものではないでしょう。明確な意志を持って勤め続けるのであれば問題ないのですが、一貫性を持たせるためだけに不合理な判断をしてしまうことには何の意味もありません。人生は思っているより短い。

 
 今一度、少しでいいから自分自身を見つめ直して「一貫性に固執するあまりに空虚な現状を生きていないか」と自分に問うことは、この忙しすぎる日常の中で必要なことではないかと思います。