八つ当たりや愚痴は逆効果。仕事のストレス、本当の解消法とは?

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 誠にお恥ずかしい話なのだが、私は短気である。

 周囲からは「穏やかだね」とか「怒ることあるの?」とか言われたりして、なぜかどこへ行っても「温厚な人」という評判を得てしまうのだが、実はぜんぜん違う。常に怒っていると言っても過言ではないのである。
 何らかの原因により導火線にすぐに火が付いて、すぐに爆発する。
 自分でも何が怒りの原因になるのかがさっぱりわからないので、己のことながら大変に困っているのである。

 そしてさらに悪いことには、私は物に当たる癖がある。
 従って、スーパーで野菜を売っていた際には頭に来ると白菜の箱を蹴飛ばし、米を売っていた際には30kgの米袋に八つ当たりし、オフィスでの事務作業ではゴミ箱を粉砕しと、周囲にかけた迷惑は甚大である。
 その度に自分が嫌になる。社会人としてどうかと思う。申し訳ございません。

 さて、この「怒り」については、その対処の仕方について相反する2つの説が知られている。すなわち、「発散させよ」説と「発散させるのではなく気分転換せよ」説である。
 つまり、「発散させよ」説は、「怒りを溜め込んではいけない。枕などを怒りの対象に見立てて殴るなどして、思う存分発散せよ」と教えているのであり、「気分転換せよ」説は、「発散するのではなく、音楽を聞いたり、映画を見たりするなどして、怒りとは全く別の行為をして過ぎ去るのを待つのが良い」と教えている。

 怒りの取り扱い方について、近年正しいとされているのは、後者「気分転換」説の方である。
 その理由を説明していこう。

 

発散=「カタルシスの仮説」は古い

怒りを感じたら何か無害な方法で発散させるのが良い、というのが従来の定説であった。

 ベッドやソファの枕――あるいはボクシングのトレーニング用サンドバッグに怒りをこめてパンチを叩きこむことだ。もし、誰か特定の者に腹を立てているのなら、枕やサンドバッグをそいつの顔に見立てればいい。そうすることで、それまで体内でモヤモヤしていた有毒な怒りや憎しみの感情を浄化し、あなた自身に苦痛を与えるのをストップさせることができる。

 ジョン・リー(心理療法士)

 怒りにおける対処の仕方としては一般的な方法であるし、ドラマやアニメ、映画などの物語でもストレスの溜まった登場人物が自宅で夜な夜なぬいぐるみにボディブローを打ち込んだりしているのを見たことのある人も多いと想像する。

 怒りは発散するのが良いという考え方を「カタルシス(浄化)の仮説」と呼ぶ。
 つまり、怒りだけでなく悩みや不安を含めたネガティブな感情は、心の中に留めておくのではなく外部に解放することで、我々自身が浄化され、そのネガティブな感情は雲散霧消するという考え方である。
 また、問題を他の誰かと共有することにより、その個人の負担を皆で分担するというチームワークの考え方の基礎にもなっている。

 我々の感情は圧力鍋のようなものであると、よく例えられる。
 圧力鍋の中で怒りが沸々と沸き立っている。その怒りを少しずつでも発散させなければ、我慢して我慢した末に大爆発を起こしてしまいますよ、と。

 また、私が我慢してしまう性格であると周囲の者がわかっているためか、「愚痴でもいいから言ってね。言うことで解決されないかもしれないけれど、発散にはなるから」と言われたりする。

 

怒りや悩みの解放は、それらを増幅させるだけ

 それらネガティブな感情を外に出すと、より事態は悪化するという研究結果が出ているので、2つ紹介しよう。

 

怒りの発散の実験

 何人かの侮辱を受けた被験者に数分間、木材に釘を打ち込ませたあと、彼らに再度相手の批判をさせたところ、釘を打ち込む前よりもさらに激しい反感を示した。

 オリバー・バークマン『HELP! 最強知的”お助け”本』下隆全・訳

 木材に釘を打ち込む行為が、つまりは発散である。
 その発散行為によって被験者は快感を得たかもしれないが、それは心の根底にある怒りを静めることには役に立たず、むしろ怒りは掻き立てられたのである。
 この実験の他にも、多くの研究によって、怒りの発散はむしろ怒りを助長することがわかっている。

 つまりは、私が怒りのあまりに白菜の箱を蹴っ飛ばしたことも、単なる怒りを膨張させるだけの行為でしかなかったということである。
 八つ当たりすることによってスッキリはするかもしれないが、それは怒りを静めることとは関係がない。むしろ、イライラを増やす結果になる。
 私は愚かだ。

 

不安や悩みの共有も同じこと

 同様の結果が、最近行われた重大の少女を対象にした調査にも現れている。(略)強迫観念に取り憑かれたように語ることによって否定的な情動が増幅されていることがわかる。

 オリバー・バークマン『HELP! 最強知的”お助け”本』下隆全・訳

 つまりは、不安や不満、悩み事などを、感情の赴くままに一方的に誰かに喋り聴かせることによって、喋っているうちにさらに否定的な感情が増幅されてしまうということである。

 これはよく聞くことである。
 例えば、「恋人が浮気をしているかもしれない」というほんの少しの疑念を友人に話し始めたら、あれこれと話しているうちに当人の中でコントロール不能なほどに不安が増大してしまい、最終的に泣き出してしまった、なんて経験がある人やそんな人の相手をしたことのある人もいると思う。
 その典型例である。

 

怒りや悩みにはどのように対処すべきか

 これは私に言っている。
 怒りを感じても八つ当たりをするな。あるいは、怒らなくて済むような状況を作り上げるのだ。
 間違っても白菜の箱を蹴飛ばしてはならない。

 また、家に帰ってきてもまだモヤモヤするようなら、怒りとは両立しないことをすべきである。
 読書、音楽鑑賞、料理、風呂に入る、コメディ映画でも見る、寝る、など。
 それら行為は、怒りの原因を解消するわけではないけれど、怒りを静めるための枠組みを整えてくれる。
 そう考えると、「ストレス発散にカラオケ」というのは理にかなった解消方法なのかもしれない。日本人でよかった。

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 不安や悩みはどうすればいいのか。
 誰にも相談するな、ということではない。
 ただ、強迫観念に駆られたように文句を言い続けたり、感傷的に語り続けることは少なくとも解決には繋がらず、むしろ事態を悪化させることになりかねないということだ。

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 愚痴を言うのは確かに楽しい。私もつい、「あのばかやろうが」とか言ってしまう。
 だけど、言っている時にはスッキリしているように思えるが、事態は何も解決しておらず、むしろ不満が増大しているように私も確かに感じている。際限のない愚痴は心にとって不健康だ。
 であれば、解決になるような話し合いの場を設けるとか、それが無理なら不満を笑いに変えてしまうとかするほうが前向きであり、健康的なのだ。