商売を始めるつもりならスーパーマーケットに就職すれば学ぶことが多いという話

 私が新卒でスーパーマーケットに就職して良かったと思うことに「商売をするための基礎を学ぶことができた」が挙げられます。

 スーパーマーケットの各部門で仕事をするということは、自分の店の利益管理をすることと同義です。特に生鮮三部門(鮮魚・精肉・青果)においては自店で市場に発注し、戦略を立案し、売上を向上させながら利益管理も行うこととなります。もちろん、ロスが多かったりそもそもの戦略に不備があったりするなどして利益が確保できていなければ上司から叱責されるわけですが、それは自分の店における儲けが少ないために生活が困窮することと同じことです。

 スーパーマーケットにおいて利益を出すための方法・手段・戦略・考え方を身につけることは、いつか自分で店を出した時に自分の力で生活費を稼ぐ力を身につけることに繋がるというわけです。

 

殆どの商売が失敗する理由 ―商売の仕組みを理解していないこと

 脱サラして一念発起して始めた商売が一年経たずに廃業を迎えてしまうのは、そもそもが商売で生活するための仕組みを理解していないことによるものが大きいように思います。

 その仕組みとは「利益 = 売上ー仕入ー諸経費」という単純な式です。何かを仕入れた額よりも高い値段でお客さんに売り、そこ差額から人件費や家賃などの経費を引いて手元に残ったお金が利益であり、生活していくためのお金であるということです。

 例えば、脱サラして書店を始めた人の実話ですが「一ヶ月で一冊500円の本が600冊売れれば売上30万円か。それだけあれば生活していけるな」と打算したけれど、実際には商売は軌道に乗らず数ヶ月で廃業してしまった。当たり前の話です。売上30万円=月収30万円ではないからです。
 売上30万円から仕入、家賃、光熱費、万引きなどによるロスを引いて手元に残った額が利益であり、いわゆる月収となるのです。

 「売上=収入ではない」というような単純な事実を理解していない人は意外と多いです。スーパーマーケットの仕事はまさにこの計算を毎日する仕事ですので、商売のスペシャリストであると言えるでしょう。

 

スーパーマーケットでの具体的な仕事内容

 将来八百屋を開こうとしている人でなくても、スーパーマーケットでの仕事で獲得した知識は何らかの商売をするに当たって役に立つことが少なからずあります。

1. 利益を確保するための手段を学ぶことができる

 商売の基本は「安く買ったものを高く売る」ことに集約されますが、そう単純には行かずに様々な要素が絡まります。仕入れすぎてしまった、人件費がかかりすぎている、思ったほど売上が伸びないなど、困難は次々と生まれていきます。

 スーパーマーケットにはそれまで培ってきたノウハウがあります。「こういう時にはこう対処せよ」という定石の手段があるものです。スーパーマーケットで仕事をすることによって、それら至高のノウハウを自然と身に付けることができるというわけです。それらのノウハウを応用することによって、あなたの商売の大きな手助けになります。

2. 利益の計算の仕方とその重要性がわかる

 利益を算出するためにはそれ専用の計算式があります。スーパーマーケットにおける生鮮三部門の社員は毎週きちんと棚卸しをして、自らの手で自部門の利益を算出しています。

 綿密な計算と戦略だけが商売を成功させるための秘訣です。個人事業では何もかもがどんぶり勘定になりがちです。戦略なく価格を設定した挙句、赤字が取り返しのつかないレベルになってしまってからその事実に気づき慌てふためくということが起こりがちです。

 毎週きちんと棚卸しを行うだけでなく一日ごとに売上と利益について上司からうるさく指摘されるスーパーマーケットの社員を経験することによって、きちんと利益管理するという習慣がつくはずです。どんぶり勘定で商売をすることの危険には気づけるはずなのです。

3. 整理整頓の仕方がわかる

 整理整頓の仕方を身に付けておくことは地味に役に立ちます。

 前述の通りスーパーマーケットはそれまで培われてきたノウハウの集積であり、整理整頓についても同様です。「効率の良い整理の仕方」「危険の少ない片付け方」「見える化」「定位置管理」など、仕事だけでなく普段の生活でも役に立つことが多いと感じます。職場における片付けの重要性についても学ぶことができ、片付けを自然と行うモチベーションを培うことにも繋がります。

 あなたがいつか商売を始める際、備品や在庫を効率的に整理するためのノウハウが身についているはずです。

 

まとめ

 スーパーマーケット勤務は社会の底辺の仕事と位置付けられがちです。私も当時はそう思っていました。

 だけど、自分で商売をするためのノウハウを学ぶことができるというかけがえのないメリットがあると気づいたのは退職してからしばらく経ってからのことです。商社のエリート営業マンにおいても「売上=収入ではない」ことを理解していない人は、一定数いるものです。

 スーパーマーケット勤務が底辺の仕事であり、誰でも出来る仕事であると言われるのは、実は商売をするのはそれほど難しいことではないことを示しているのかもしれません。

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