1. 黒猫・白猫
『黒猫・白猫』は「みんなが知ってる名作」というわけではないけれど、私にとっては最高の映画の一つです。
理屈じゃないエネルギーがここにある。登場人物が生きている。テーマは結婚式なのだけれど、とにかくどんちゃん騒ぎが凄すぎる。やかましい音楽、踊りまくる登場人物、画面に割り込んでくるたくさんの動物たち、もうめちゃくちゃ。圧巻。こういう映画は他に見たことがない。
脱線しながらもストーリーははっきりとしている。最後には素晴らしいハッピーエンドが待っています。終始ハイテンションでドタバタした笑いに包まれた怪作・究極の娯楽作品でありながら、ベネチア国際映画祭監督賞を受賞している。
私は落ち込んだ時には必ず『黒猫・白猫』を見ます。ラストシーンでは笑いながらも泣いてしまう。「人生は素晴らしいかも」と少し思える。それだけで明日を生きていける。
2. 未来は今
人生に奇跡は起きるのか? 起きる。少なくともこの映画の中では。
役員たちの陰謀によって、ハッドサッカー社に入社してたった1日の間抜けな青年が社長に就任させられることで巻き起こる栄光と挫折のコメディ作品。挫折の後には何が待っているのか。奇跡である。
はっきり言って、この映画のクライマックスで起こる奇跡は誰にでも起こるものではない。それくらい突拍子もない。だけど、人生にはどんなことだって起こる。一発逆転の大袈裟なミラクルは起こらなくとも、ほんの小さな奇跡くらいは起こってもいいんじゃないかと思えて笑いながら前向きな気持ちになれる。
3. 素晴らしき哉、人生!
アメリカを代表する名作映画。1946年の白黒映画であり、古臭そうで敬遠しがちだけれど決してつまらない作品ではない。
人生に絶望しつつあった時に見てみたのだが、ラストシーンでは「なんだこりゃ」と大笑いしながらも涙がこぼれた。人生に絶望した男の復活劇。
ご都合主義的な展開であるかもしれない。良いことをすれば必ず報われる? 持つべきものは友? 人生はそんなに都合よくはできていない。だけど、この作品で描かれる論理を超越したものが胸に刺さるのも確かである。人によっては人生を変える一本になるだろう。
4. ぐるりのこと。
一組の夫婦の10年を淡々と描いた作品。ここで言う「淡々と」とは「つまらない」という意味ではない。控えめに言って傑作である。
夫役のリリー・フランキーさんの飄々とした感じを見ているだけで生きていく希望が持てる。妻役の木村多江さんは美しい。作中、妻はうつ病を患ってしまうのだけれど、静かだけれど確かな日常によってそれを乗り越える。壮言大語、気宇壮大な言葉は要らない。
カリスマ性溢れる正義のヒーローが勧善懲悪によって世界を、人生を救う物語はもはや終わった。私たちの人生は驚くほど淡々としている。淡々としているからうまくいく。人生どうにでもなる、と思わせてくれる心温まる作品。
5. 罪とか罰とか
論理性無視のハチャメチャなナンセンスコメディである。どういう頭をしていればこういう作品が作れるのだろうか。
この映画から学べることは何もない。頭を空っぽにしてただただ笑っていればいい。感動、学び、気付きなどを求めるなら他の作品を見給え。だけど、突拍子もないわけのわからない笑いを求めるなら本作をおいて他ない。似たような映画はおそらく他にない。
個人的にはこんなにもおもしろい超傑作なのだけれど、レビューを見てみると好き嫌いがはっきりと半々くらいにわかれているようである。監督は『時効警察』にも参加していたケラリーノ・サンドロヴィッチ。時効警察のギャグ部分を純粋培養したような映画、と聞いて面白そうと思うなら見て損はあるまい。
6. ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
コメディ映画のニュースタンダード。人気作なので見たことのある人も多いかもしれない。
結婚式前日に新郎を含めた友人たちで馬鹿騒ぎをした翌日、皆の記憶がなくなっている上に、ホテルの部屋の中はめちゃくちゃでなぜか虎さえいる。そして、新郎が行方不明。一体なぜこんなことになったのかを解き明かしながら暗中模索で新郎を探す男3人の珍道中である。
余計な説明は不要だろう。世界中で支持された笑って元気になれる映画だ。
7. ライフ・イズ・ミラクル
上で挙げた『黒猫・白猫』と同じエミール・クストリッツァ監督作品。私はこの監督が大好きだ。戦争中であるにも関わらず人々は呑気に馬鹿騒ぎをしているし、動物たちは縦横無尽に暴れている。
映画館に見に行ったのだが、作中で5回くらい泣きそうになった。お涙頂戴の場面があるわけではない。例えば、ベッドが空を飛んだり、草原を布団にくるまって転げ回ったりなど、理屈を超えたマジックリアリズム的なシーンのいちいちが私にとってはとても美しく思えて感極まりつつあったのだった。
『黒猫・白猫』は完全無欠のハッピーエンドだったが、本作『ライフ・イズ・ミラクル』もラストシーンが本当に素晴らしい。絶望をふっ飛ばす計り知れない力がある。これ以上にミラクルなエンディングを私は知らない。
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