地方百貨店のテナントで働いている。
デパートの凋落は今に始まった話ではない。
にも関わらず、何の対策も打てずにここまできた。結果、いまだに止まらない不振。
地方デパートが続々閉店・撤退しているというニュースは毎年のように聞く。
その度に、郊外型ショッピングモールのせいだとか、インターネットでのショッピングサイトのせいだとか言われているが、本当にそうだろうか。
私は実際に百貨店の中で働いてみて、デパートの凋落は自滅であるとの確信に至った。
イオンのせいでもなければ、Amazonのせいでもない。単なる自滅。
内部から見た百貨店没落の要因を3点挙げていこう。
従業員の質の低さ
百貨店と言えば「商品知識の豊富な質の高い販売員」と言われるが、私には従業員の質が高いとは到底思えない。
むしろイオンや、私が以前に勤めていたスーパーマーケットの方が圧倒的に質が高いと思える。
商品知識については私は比較する術を知らないが、少なくとも接客態度や生産性については地方スーパーマーケットの方がよっぽど高いのが実情である。
百貨店従業員Aの場合
売場の商品棚の前に10分以上も寄りかかったまま休息している。もちろん「いらっしゃいませ」の声がけもない。
百貨店従業員Bの場合
たまたま賞味期限切れの商品を見つけたので報告したところ、「あちゃー、参ったなぁ」と言ったきりそのままどこかへ行ってしまった。
百貨店従業員Cの場合
売場で私用の電話をして、大声で笑ったりしている。
百貨店従業員Dの場合
お客さんが並んでいる列に割り込んで買い物をする。
百貨店従業員Eの場合
しわしわのシャツ、ヨレヨレのネクタイ、ぼざぼさに禿げ散らかした頭。清潔感もへったくれもない格好でレジに立っている。声が小さくて何を言っているのか全く聞こえない。
*
上記は全て実話であり、私が3年間のうちに実際に見たり体験したことである。
しかもこれらはテナントやパート・アルバイトの話ではなく、全て百貨店の中年正社員の事例なのだ。
質が高いと言えるだろうか。
建物の老朽化・陳腐化
かつてヤマダ電機は各店舗のスクラップ・アンド・ビルドをいち早く推し進めたことが、コジマ電機との争いを制した一因となったと聞いた。
つまり、老朽化した店舗やトレンドに合わない店舗を次々に新築したことが、来店客を増やす契機となったのである。
地方百貨店の現状はどうかというと、敗因しか見当たらない。
百貨店全盛期のザ・昭和のままの売場レイアウト、壁や設備などの老朽化がそのままになっているのである。
例を箇条書きで挙げていこう。
・汚れていたり亀裂が入ったりしている壁
・頻繁に利用不可になるエレベーター
・不衛生な食品バックヤード
・トイレからの悪臭が押し寄せる食品売場
・全体的にバリアフリー未対応
・出入庫のしづらい駐車場
従業員の質の問題がソフト面の要因とすれば、建物の老朽化はハード面の問題である。
不衛生で不便な百貨店にわざわざ買い物に行くくらいなら郊外型ショッピングモールに行こうと思ってしまうのは当然ではないだろうか。
経営力のなさ、遅れるIT化
百貨店はかつての栄光にあぐらをかいている、としか私には思えない。
かつての成功体験にしがみついているが故に、改革が妨げられているのではないか。
とにかく時間が昭和のままで止まっており、思考停止しているのである。
様々な事象について幾つか例を挙げよう。
IT化の遅れ
・売上集計をいまだに手書きで行っている
・公衆wifi未対応
・ウェブサイトがモバイル未対応
その他の事象
・品切れ商品の対応がされておらず一週間以上に渡って売場が雑然としたままでであることが多発
・競合に対して何も手を打たない
・店内に防犯カメラがない
・各テナントから徴収する出店料に明確な基準がない
・法外な年会費がかかる時代遅れなポイントカード
*
時間が昭和で止まっていることがおわかり頂けただろうか。
古き良き時代、ではない。お客さんが離れていくということは「古き悪しき」ということに他ならない。
まとめ:百貨店は経営戦略・経営努力が足りないせいで自滅した
商店街の凋落についての議論においては「郊外型ショッピングモールのせいだ」という意見が必ず出てくるのであるが、経済学者たちの一致した見解は「郊外型ショッピングモールが直接の原因となって駄目になった商店街などひとつもない」ということで落ち着いている。
つまりは、商店街の経営努力が足りなかったということである。
逆に言えば、イオンやAmazonはその的確な経営戦略と経営努力によって業績を伸ばし、競合を圧倒してきたとも言えるのである。
百貨店についても同様であると私は思う。
経営戦略・経営努力が足りないせいで自滅したに過ぎないのである。
現に、百貨店内部では殆どの社員が低い生産性でだらだらと仕事とも言えないような仕事らしきことをしている。
テナントに高圧的な態度を取る勘違い社員も少数だがいる。
次々とできる周辺競合店に対して具体的な手も打てずに「お客様には元気に挨拶をしましょう」「新商品を提案しましょう」という曖昧な文言を壊れたレコードのように何年間も繰り返すばかり。
努力しない者が救われるほど経済は甘くはないのである。
以上が、内部から見る地方のデパート離れ3つの要因である。
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