私が新卒で入社したスーパーマーケットでは、入社式において偉い人が壇上で次のようなことを新入社員に向けて話していました。
「社会人になったら、生活の殆どが仕事に専有される。1日8時間仕事をして(筆者注:8時間で終わるわけがない)、1日8時間睡眠だとすると残りの時間は8時間。その中には通勤時間や家事、食事の時間も含まれるから、自由に過ごせる時間は実際にはほんの一握りしかない。
社会人とはそういうものだ。では、そんなプライベートな時間がごく僅かな中で充実した人生を送るためにはどうすればいいか。
仕事の時間を充実した時間にすればいいじゃないか。仕事を趣味の代わりにすればいいじゃないか。そうすれば一日の大部分が充実した時間としてそのままプラスになる。仕事を生きがいにすることで人生そのものが充実することになるし、やる気があれば収入だって上がる。こんなに素晴らしいことはない」
くそくらえだ。
仕事とプライベートの境目をなくしてしまうことほど危険なことはありません。仕事の活力やアイデアはプライベートで自由な時間から生み出されるものです。また、仕事を生きがいにしてしまったら退職後は人生そのものを見失ってしまう危険もある。
仕事を一生懸命やることは素晴らしいことには違いないでしょう。だけど、「会社のため」という妄信によって仕事を人生の中心にしてしまったり、自分の人生を単なるイチ企業に隷属させてしまうようなことは、むしろ充実した人生から遠ざかっていくことであると私は考えます。
自らの判断で仕事を人生の中心にするのであればそれでも構いません。人生は十人十色。だけど、そうでない人も少なからずいるはず。私もそうです。社畜なんて御免だ。本稿はそんな人のための「社畜にならない技術」を伝授するものです。素晴らしい人生に幸あれ。
1. 同僚・上司とは距離を置くべし
社内の同僚・上司とは「職場の人間」であると割り切って付き合うのがベターです。つまりは一定の距離を保っておくこと。馴れ合いの関係には決してならないこと。
職場の人間と馴れ合いの関係になってしまうことの弊害は、仕事とプライベートの垣根がなくなるおそれがあることです。終わらない仕事を手伝ってくれと言われたり、今度の休みにはみんなでバーベキューをしようと誘われたり、毎週末の飲み会に連行されたりと、職場の人間と過ごす時間が過剰になりプライベートが確保されづらくなってしまいます。距離が近くなれば誘われやすくなるし、断りづらくなる。
敵対せよとか、全く口を利くなということではありません。関係が良好であることに越したことはない。けれど、プライベートに踏み込まれつつある一線をきちんと引いておくことは、社畜にならないための第一の戦略になり得ます。
2. 飲み会には参加すべからざるべし
社会人にとって楽しくもあり面倒でもあるものの一つに飲み会があります。「最近の若い者は飲み会に参加しない」なんてよく言われますが、私の個人的な見解としては、行きたくない飲み会になんて行く必要はないと考えます。なぜなら、行きたくないからです。
私はかつて社内ではそれなりに愛想よくしていた上、断れない性格だったので、飲み会によく誘われて参加していました。だけど、ある時から本当に行きたいと思った飲み会以外は断ることに決めました。お金を貯めたかったし、飲み会に行くよりは家でゆっくりするのが好きだったからです。頻繁なる飲み会は私にとってストレスでしかなかったのでした。
断れない性格の人というのは、自分が断ることによって周囲に悪影響を与えるのではないかと心配してしまう人です。だけど、安心して下さい。あなたが飲みに行くことを断固として断ったところで、何も起こりません。頭の固い上司などムッとする人もいるかもしれませんがそんなものは知ったこっちゃないし、しばらくすればほとぼりが冷めます。
重要なことは、あなたがどうしたいかです。周りは関係ない。自分の意志をきちんと貫くことによって社畜から遠ざかることができます。
3. やりたくない仕事はやらざるべし
「やりたくない仕事もやらなきゃならない。それが社会人ってもんだ」というのはくだらない大人の常套句ですが、やりたくない仕事への唯一にして最大の対処法は「やらない」ことに尽きます。できるのにやりたくないから敢えてやらない。これを「戦略的無能力」と言います。
戦略的無能力が推奨される論拠は「あなたがやりたくない仕事をやらなくても何も起こらない」という圧倒的事実です。クビになるなんてことはあるはずもなく、面と向かって非難されることもそうそうはないでしょう。ちょっとした陰口を叩かれるくらいのことはあるかもしれませんが、それにしたって「やらない」という自分の意志は突き通せるわけですから、ちょっとした陰口くらいはどうってことありません。
頼まれた仕事の全てをやらなければならないわけではない。全てに責任を感じて完璧にしなければならないわけではない。私も性格上、自分で納得した仕事以外は絶対にやらないというふざけたモットーを掲げて堂々と新入社員時代を過ごしましたが、それでも不利になるようなことは何も起こりませんでした。
関連記事:
やりたくない仕事を意地でもやらない方法。戦略的無能力とは?
4. 何があっても定時で帰るべし
一日の仕事の期限は終電までではありません。定時までです。8時から5時まで。それ以上でもそれ以下でもない。
私の観察上、遅くまで残業をしている人というのは一日をだらだらと過ごしている人が多いように思います。長い休憩を挟みながら馴れ合いの仕事仲間と喋りながらタバコを吸いながら仕事とも言えないような仕事をだらだらとしているから退勤がどこまでも遅くなるのです。
会社に遅くまで残ることが美徳であるという時代は終わりました。サービス残業が当たり前の時代も終わりつつあります。サービス残業が発覚した場合、非難されるのは会社です。私たちの残業代は会社の利益の中から捻出されています。
であれば、私たちが会社のために出来ることは「定時で帰ること」ただ一つだけです。そして、それは会社のためでありながら私たち自身の健康を守り、人生を取り戻すことにも繋がるのです。
関連記事:
【保存版】絶対に残業しない。定時で帰るための超効率・計画的仕事術スーパー7選
5. 休め!とにかく休むべし
人体は週5日、計40時間労働に耐えられるように設計されていないという考え方があります。週に40時間も働いていたら身体に甚大なるダメージがもたらされるということ他なりません。であるにも関わらず、私たちは週40時間どころかそれ以上の残業をこなす始末です。長い社会人生活において、それは死活問題です。
「会社では決して教えてくれない、うつにならない一番の秘訣について」という秀逸なブログ記事においては、筆者が「採用担当として、約10年間、労務系の仕事を担当して、数百人の社員の入退社に関わる中で、気づいた」「どんなに劣悪な環境下であっても、きちんと成果を残しつつ、しかも不思議な事にうつにならない人」の秘訣として、「上手に仕事をサボっている」という事実を挙げています。
ちょっとキツイなと思ったら、仮病をでっち上げるとか、客先から直行・直帰を利用するとか、子供が熱を出したとか、適当な理由をぶち上げて「小さく、確実に細かく休みを取ってストレスを解放する」ことがうつにならない秘訣であると言うのです。そう、休むことが健全な社会生活を継続していくための唯一の方策なのです。
とはいえ、「休んだら怒られるかも」「評価が下がるかも」なんて心配してしまう人が多いのも事実。「仕事なんだからきちんとやらなきゃ駄目だ」とわざわざ自分にプレッシャーをかけてしまう人もいるでしょう。
そんなときには前項の「戦略的無能力」を思い出しましょう。「やりたくない仕事はやらない」「休みたいときには休む」。あなたの会社にも他人の迷惑を顧みずに自分勝手にやりたい放題やっている人がいるでしょう。そういう人たちは往々にしてストレスとは無縁に見えて、やたらと元気です。彼らのその自分勝手さにも見習うところがあるのかもしれません。
まとめ:自分の頭で考えるべし
社会人というやつには法律とは別の独自のルールが存在するようです。
・「飲みニケーション」は大事だから必ず出席しろ
・サービス残業なんて当たり前のことだ
・入社したら3年間は何があっても辞めるな
・上司の言うことは絶対だ
・社会人である以上、理不尽に耐えるのは当たり前だ
その訳の分からないルールに「まあ、社会ってのはそんなものか」と巻き込まれて、盲目に隷従し、思考停止してしまうことは危険なことであり、馬鹿馬鹿しいことです。
入社した当時は「なんでサービス残業なんてしなければならないんだ」と疑問を抱いたとしても、社会生活という惰性の中でそれが当たり前になってしまうと、いつしかあなたが上司になった時、部下に対して「サービス残業なんて社会人として当たり前だろ。ったく最近の若いやつは」なんて破綻した論理を振りかざすことになってしまいます。それは恥ずべきことです。
重要なことは、自分の中に芯を持つこと。信念なんて大それたことでなくても「これは嫌だな」「これは違うな」と思うことに対しては疑問を抱き続けることです。疑問を持ったこと全てに対してパンクスピリッツを発揮、反旗を翻すことは現実的に不可能であるとしても、おかしいことに対してはおかしいと心の底では思い続けること。できうる範囲でアクションを起こしていくこと。拒否というアクション。
最も重要な事は会社に従うことではなく、自分の頭でしっかりと考え、自分なりの価値観に基づいてはっきりと行動することです。誰もそれを責めることなんてできません。私たちは社会人である前に立派な一人の人間だからです。
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