年間所得が低い個人事業主は国民年金を減額・免除した方が得なのか?を検証する

個人事業主・フリーランスとなると厚生年金から国民年金へと切り替わります。一般的に「厚生年金は会社が半分負担してくれるから得で、国民年金は負担額が大きいから損」となどと言われますが、これは大きな誤りです。現状、厚生年金の利回りはマイナスであり、国民年金の利回りは平均寿命まで生きるとすれば圧倒的にプラスです。

(これについては”「サラリーマンは会社に保険料の半分を払ってもらえるから得だ」が大きな嘘・誤解である理由”に詳しくまとめてあります)

で、国民年金の特徴として「利回りがプラス」であることに加えて「申請によって減額・免除が可能」であることが挙げられます。「利回りがプラス」なのであれば将来(老後)のことを考えれば納めない手はないのですが、収入が不安定な個人事業主・フリーランスにとってはそうは言っていられない場合もあります。

現在、個人事業主である私は先日、いろいろと考えた末に「国民年金の減額・免除申請」をしてきました。現状、その方が得だと思ったからです。下記で詳しく述べていきましょう。

 

個人事業主が国民年金を全額納めるメリット

重複する部分もあるとは思いますが、改めて「国民年金を納めるメリット」は2点あります。

 
1. 利回りはプラスであり、マイナスになることはない(既に制度としては崩壊しているが、厚生年金から補填されているのでマイナスにはならない)。つまり、平均寿命まで生きるならば納付した金額以上に確実に貰える。

2. 国民年金の納付金額は控除できるので、節税になる。

 
つまり、国民年金は「支払って損になることは決してない」ということです。だけど、私たちはいつも老後のことだけを考えて生きられる状況にあるとは限りません。今の生活が逼迫しているのであれば、あるいは、戦略的に国民年金の納付を避けたいと思うのであれば、減額・免除の申請をすることも合理的な選択肢の一つとなるはずです。

 

個人事業主は国民年金を減額・免除できるのか? その条件は?

さて、本題です。個人事業主は国民年金の納付額を減額・免除してもらうことは可能なのでしょうか。結論から言うと、条件を満たせば可能です。日本年金機構で下記のごとくきちんと説明されています。

1. 全額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

2. 4分の3免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

3. 半額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

4. 4分の1免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

5. 納付猶予制度
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構

つまりは、前年の所得金額によってどの程度の減額にしてもらえるか、あるいは全額免除になるかが決定されるかがきちんと明記されています。非常に親切な説明で意外と好感が持てます。ちなみに私は、扶養家族なしで前年所得が約60万円でしたので、上記に従えば「4分の3免除」になります。

国民年金の減額・免除申請が通るかどうかは「所得」が基準になるということ。では、「所得」とは何でしょう?

 

所得って何? 収入と違うの?

ここはさらっと説明しますが、個人事業主の場合、「所得」とは「収入から必要経費や控除できるものを差し引いて残った金額」のことです。確定申告とはこの「所得」を明確にする作業のことです。所得を基準に国保税や市県民税の税額が決定されます。

ちなみに私の場合、前年の「年収」は約270万円でしたが、そこからいろいろと差し引いて前年の「所得」は約60万円でした。所得が60万円というのは、国保税が半額になり、国民年金の減額申請ができる、いわゆる貧困と言われても差し支えない金額ですが、特に生活に不自由はしていません。

個人事業主のメリットとして「所得を戦略的にコントロールし、節税をすることができる」ことが挙げられますが、これはまた別の話。さあ、下記ではいよいよ「国民年金を減額・免除申請するメリット」を見ていきます。

 

国民年金を減額・免除申請するメリット

未納よりは減額・免除の申請をせよ、絶対だ

「どうせ年金なんてもらえないんだから納めても仕方ないし、第一、払う金なんてない」と納付書を放置して「未納」状態のままにしまっている人がいますが、これは大きな損になります。まず、年金の未納は財産の差し押さえの対象になります。口座が凍結される場合もあります。おそろしや。

だけど、年金事務所や役所に赴いて減額・免除申請をし、承認されれば合法的に年金を納めなくても良い状態になることができます。減額・免除状態が何年続こうと財産が差し押さえられることはありません。そして、下記で述べる更なるメリットがあります。

 

全額免除でも半額は納めたことになる(重要!)

つい先日まで私も勘違いしていたのですが、仮に全額免除を40年間続けたとしても全額納付していれば貰えたはずの「年金給付額の半額は受け取ることができます(!!)」。この奇跡、わかるでしょうか。1円も納めていなくても受給資格期間に算入され、年金を受け取ることができるということ。つまり、全額免除でも半額は納めたことになるということです。その半額というのは国庫が負担してくれます。

・全額免除の場合は平成21年4月分以降は、2分の1が国庫負担されます。
 (21年3月分までは3分の1が国庫負担)

・4分の1納付の場合は「5/8」が年金額に反映します。
 (21年3月分までは1/2)

・2分の1納付の場合は「6/8」が年金額に反映します。
 (21年3月分までは2/3)

・4分の3納付の場合は「7/8」が年金額に反映します。
 (21年3月分までは5/6)

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構

 

手元にキャッシュが残る

将来の年金受給のために今借金を抱えてしまうことは本末転倒です。国民年金支払いのせいで今の生活が困窮しているのであれば、減額・免除の申請をして今の生活にゆとりをもたせた方が幸福度が上がる可能性があります。

また、個人事業主は所得をコントロールできることが強みです。国民年金のリターンはおおよそ1.7倍程度であると言われています。平均寿命まで生きるならば、例えば100万円が170万円になって帰ってくるということです。

しかし、この1.7倍という数値が低すぎると考えるならば、国民年金を減免申請して手元にキャッシュを残し、そのキャッシュを自分でインデックス投資などで資産運用するという方法もあります。その場合iDeCo(個人型確定拠出年金)で運用すれば節税にもなります。

これらを踏まえて、個人事業主である私が国民年金の減額・免除申請をした理由と見解を下記で見ていきます。

個人事業主は国民年金を減額・免除したほうが得なの?

はい、ここが要点です。私のように国民年金を減額・免除できる対象である場合、その申請をしたほうが得なのか、損なのかという問題です。一概に「得だ」「損だ」言える問題ではないものの、実際に個人事業主をしている私なりの見解を、私が減額・免除申請をした理由と共に述べたいと思います。

国民年金は決して損にはならない

国民年金が払い損であるならば、誰も納める人はいなくなってしまうはずです。そうなってしまっては困るので厚生年金(サラリーマン)の負担分を増やし続けることによって、既に制度として崩壊している国民年金が何とか維持できています。この傾向は今後も続くはずです。国民年金の信頼は日本国の信頼と同義だからです。

従って、全額納付でも支払って損にはなりません。節税にもなります。ちなみに、国民年金を全額納付できるのであれば月400円を上乗せすることで「払った月数×200円」が受給額に上乗せされる「付加年金」の申請もしたほうがリターンは大きいとされます。

 

減額・免除申請ができるならしたほうが良い

上で示した前年所得に該当し、減額・免除申請が可能なのであれば、申請をしたほうが良いのではないかと思います。生活に余裕があるのであれば納付しても構いませんが、今現在の生活を困窮させてまで無理に納付金額を捻出する必要はないように思います。年金納付のために借金を抱えてしまうでは本末転倒ですし、減免申請をしても国庫負担によって受給資格があるからです。

私は「減免申請をしても国庫負担によって受給資格がある(半額は受け取れる)」ことを知ったことが決め手となって減額・免除申請をしました。前年に比較して収入が減じてしまったことによって国民年金の支払いが大きく家計を逼迫していたので、ひとまずは安心です。

 

手元にキャッシュがある安心感は何物にも代えがたい

貯金の残金がゼロでも全く不安に思わない人もいれば、貯金が200万円あっても将来のことを考えれば不安で堪らない人もいます。人それぞれの考え方があります。私は後者です。

個人事業主になるにあたって、ある程度の貯金をもって臨んでおり、収入が漸減しているとは言え、まだまだ蓄えにはある程度余裕があります。しかし、私にとっては貯金の総額ではなく「貯金が減り続けている」という事実自体が不安を引き起こし、ストレスになってしまうのでした。

不安やストレスで頭が支配されてしまうと、私の場合は生産性が著しく低下し、そのことが更なるストレスを生み…、という悪循環となります。であれば、いっそのこと国民年金の減額・免除申請をしてしまって、手元のキャッシュを確保したほうが精神衛生上良いと思いました。

 

個人事業主に定年はないので、年金に依存しないライフスタイルが可能

そもそも年金とは、労働力が低下し収入が得られなくなることへのリスクマネジメントです。逆に言えば、老齢になってもお金を稼ぎ続けることができるのであれば、多額の年金なんて必要ないとも言えます。減額・免除を申請することによって受給額は減額されますが、収入を年金だけに依存しなければいいだけの話なのです。

 

減額・免除申請をした上で自分で資産運用をしたほうが良いかも

上で少し触れましたが、国民年金のリターンは40年で1.7倍です。投資としてこの数字は果たして優れているのでしょうか。

世界経済にインデックス投資した場合、年利3〜5%のリターンがあると言われます。株式の長期投資の場合、複利によって元本が雪だるま式に増えていくことが特徴です。これを踏まえて計算すると、年利3%で40年運用した場合、3.26倍になります。国民年金のおよそ倍です。

ということは、理論上は国民年金を減額・免除して浮いたお金をインデックス投資したほうが老後に貰えるリターンが大きいということになります。iDeCoで運用すれば国民年金と同様に拠出額は控除対象になるので節税にもなります。

 
世界経済へのインデックス投資はウォーレン・バフェットやチャールズ・エリスも勧める極めた優れた投資法ですが、注意点もあります。世界経済は長期的に見れば上昇し続けることが強く見込まれますが、例えば、受け取る直前に世界的な不況が偶然にも来てしまったら、リターンが目減りしてしまう可能性があるということです。紙くずになってしまうことはありませんが、リーマンショックのようなインパクトのある不況とリターンの受け取り時期がたまたま重なった場合、半減してしまう可能性もあるということ。

その反面、国民年金はインフレ調整はあるものの、おおよそ1.7倍のリターンというのは揺るがないでしょう。投資としてリスクもリターンも少ないのが国民年金、リスクもリターンもやや高めであるのがインデックス投資です。それぞれのライフスタイルに合った資産運用を画策しましょう。

 

まとめ

というわけで、私個人の見解としては「個人事業主やフリーランスでも可能であれば減額・免除申請をしたほうが良い」という結論に至り、実際に減免申請をしました。申請自体は非常にスムーズに行われ、何も恐れることはありません。また、減免分はさかのぼって納付することも可能(過去10年分)ですので、悩んでいるのであれば潔く減免申請をしてきてしまったほうが良いと思います。

 
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