目標にこだわりすぎる完璧主義が、極めてむなしい人生である5つの理由

 人生で成功するためには、ゴールを設定して、それに向かって猪突猛進。とにかく突き進むべし。よそ見をするな。ゴールや目標のない人生は無駄なだけ。
 負け犬になりたいかね? 人生は勝つか負けるかの二者択一。それ以外はない。
 とにかく目標を追いかけるのだ。価値のない人間にならないためには、それだけが重要だ――。

 おいおい、そんな馬鹿な。んなわけない。

 人生は自由だ。勝ち負けは関係ない。考え方にもよるけれど、私はそう考えている。
 勝つためだけの人生なんて疲れるだけ。私は疲れるために生まれてきたのではないのである。

 それだけではない。
 目標にこだわりすぎること、それにおける完璧主義を発揮することは、人生を輝かせるものではなく、むしろ虚しいものに仕立て上げるものであるという極めて鋭い見解もある。
 以下、目標にこだわりすぎることの5つの落とし穴について見ていこう。

 

「今死ぬ気で頑張れば、老後に楽をすることができる」間違い

 「目標を定めて、死ぬ気で仕事をしろ。休んでいる暇なんてない」と唱える人の理由は、殆どの場合「人生の勝者となり、すなわち、山ほど稼いだお金で老後に楽をするため」であることが多い。
 老後に美酒を味わいたいだろう? だったら、今、精一杯努力をすることだ。そうすれば、それに見合う分だけの報いが訪れるだろう、と。

 この考え方の大いなる間違いは、日々の幸せを無視していることに尽きる。
 辛いけれど毎日死ぬ気で努力することは、毎日の幸福を我慢し、節約することに他ならない。
 つまりは、「今は死ぬ気で努力しろ、あとで必ず報われる」という考え方は、「毎日の幸せを我慢し続ければ、死ぬ間際になって自己満足に浸ることができる」と言っているのと同義である。

 このように考えると、なんとも馬鹿馬鹿しく思えて来ないだろうか。

 

目標にこだわるのは「悲劇的な生き方」

 「夢を持つこと」について、タモリがバッサリと切り捨てたと一時話題になった。

 タモリは「夢の達成される前の期間は、まったく意味のないつまんない期間になる」と指摘し、そうした人生を「悲劇的な生き方」と断言してみせた。さらに「夢が達成されなかったらどうなるんだ?って話だよね」とも口にした。

 タモリ 夢を持つ生き方について持論「人間終わりだね」|ライブドアニュース

 目標やゴールにこだわって死ぬ気で頑張るというのも、夢を持つことと同義である。私はタモリの見解に完全に同意する。

 我々は今日を今日のために生きているのであって、そのことを言葉を変えて言うと「幸せ」と呼ぶのである。
 明日の利益を考えて生きることは幸せでも何でもない。

 第一、その目標とやらが達成されるまでに生きているかどうかもわからないではないか。
 たくさんの財産を築くため、名誉を誇らかすため、優越感に浸るために、その目標とやらに猪突猛進になっていたのに、偶発的な事故によって命を落とす可能性だってある。
 であれば、その努力は何だったのか。「夢の達成される前の期間は、まったく意味のないつまんない期間になる」とタモリは指摘したが、その「つまんない期間」だけで人生が終わるだなんて、悲しい。

 だったら、目標にこだわらないで、今日を今日のために生きたほうがよっぽど良いのではないだろうか。

 

寄り道にある素晴らしい可能性に気づけない

 人は特定の目標に拘束されることなく、自らが進む方向を決めることができる。

 ステファン・シャピロ

 目標やゴールを明確に設定し、それに向かって突き進むことは、美徳に見えるし、努力家に見えるし、少なくとも私には出来ないすごいことであると確かに思える。
 だけど、目標ばかりにとらわれて、他のことを見落としてしまう危険性はないだろうか。

 私の持論として、「向上心のある者は上しか見ていないから、今本当にすべきことを見落としがちである」というのがある。
 つまり、「出世ばかりに気を取られて、今すべき細かな仕事が目に入らない」というように。
 私事で誠に恐縮だが、私は社会人になってから、こういった向上心のある者に誠にうんざりさせられることが多かった。
 上司のご機嫌を取るための仕事しかしないからである。

 また、柔軟性が損なわれ、もっと素晴らしいものになるはずだった人生の可能性を棒に振ってしまうかもしれない。
 答えは決してひとつじゃないということだ。

 チャンスはしばしば訪れる。ときにとそっと訪れることがある。自分の特定の目標を盲目的に追いかけている人は、予想しなかったすばらしい可能性の到来に気が付かない。

 ステファン・シャピロ

 人生の最大の醍醐味は、「思いがけないこと」が起こることであると、私は考えている。
 目標に固執して死ぬ気で努力することは、この「思いがけないこと」を排除することに他ならないのではないだろうか。

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我々はそもそも不完全だから、完璧主義はストレスなだけ

 目標に向かって進め。人生を丸ごと変えるためには、中途半端は許されないぞ――。

 こういった目標至上主義、完璧主義において疲れるのは、少しだけの改善で満足することが許されないところにある。
 隅々まで全てを変えて初めて目標達成であり、全てが変わるまでは努力をし続けることが強いられる。
 ああ、疲れる。

 だいたい、我々は不完全な人間である。完璧な人間などこの世に存在しない。
 完璧な人間に憧れるのはわかるけど(ミスなんてしない完璧な人間に私も未だに憧れているが)、そんな者は存在しないし、目指してもなれない。
 なぜなら、我々は人間だからである。にんげんだもの。

 目標至上主義、完璧主義というのは、何事も自分の意志の力によってのみ達成できると信じることに他ならない。
 運やタイミングなんて関係ない。意志と努力さえあれば、達成できる。
 一位になるのが目標だとすれば、外部的要因は関係ない、一位になりたいと他の誰よりも願い、他の誰よりも努力をすれば必ず一位になれる。

 少し考えてみればわかる通り、そんなわけないのである。全てが意志の力によって遂行できるなんて、現実的じゃない。
 従って、完璧主義なんてものは、不完全で普通な我々にとってはストレスなだけなのである。

 

目標なんて定めなくても楽しい人生を送っている人はたくさんいる

 考え方の問題である。
 目標を定めてそれに向かって生きるのが素晴らしいと考える人もいれば、難しく考えても仕方ないから楽しければ何でもいいじゃんと考える人もいる。

 完璧主義はあなたの人生を窮屈にし、あなたの気を狂わせてしまう。
 あなたは、踏み石を一つひとつ踏み外さないように注意しいて歩いていけば死ぬ心配はない、などという妄想に取り憑かれてしまう。だが、人はいつか必ず死ぬのであって、多くの人は足元をろくに見ずに走りながら、それでもずっと楽しい人生を送っているではないか。

 アン・ラモット

 人生は自由。どちらも正しい。
 だけど、完璧主義で毎日が窮屈になりストレスを抱えている人がいれば、完璧にこだわりすぎることは人生を台無しにしてしまいかねないから、もう少し適当に考えてみたらどうだろう、と言いたい。
 というか、私が完璧主義的な傾向にあって、よくストレスが溜まるので、私にそう言いたい。

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