夢を見なければうつ病が治る!?うつ状態の人が眠れない・不眠症がちな本当の理由

 我々の睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」とがあり、それらは眠りに落ちた瞬間から周期的に交互に繰り返します。
 二つの睡眠の違いは、眠りの深さです。

 レム睡眠
 浅い眠りで、実は脳は活発に活動している状態。ほぼ起きていると言っても過言ではない。
 夢を見たり、トイレに起きたりするのはこの浅いレム睡眠の時。
 レムとはREM(Rapid Eyes Movement:高速眼球運動)のことで、脳の活動により眠っているにも関わらず瞼の奥で眼球が動いているため。

 ノンレム睡眠
 深い眠りで、脳もあまり活動していない。
 ゆえに、ノンレム睡眠のときには夢を見ない。
 脳も眠った状態であるので眼球の動きもないため、ノンレム(Non-REM)と呼ばれる。

 実はこの「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がうつ病の原因や解決に深く関わっているというのです。

 

「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」と脳の関係

心の問題を解決しようとする「レム睡眠」

 レム睡眠は浅い眠りで、夢を見させ、その時脳は活発に働いています。
 このレム睡眠、実は我々の心の問題を解決してくれる働きがあることがわかっております。

 昼間に受けたストレスや不安を、浅い眠り状態における活発な脳が処理してくれている。
 起きている時間では処理しきれなかった問題を、我々に代わって無意識の中で処理し、ダメージを軽減させようとしている。
 翌朝起きた時にストレスを引きずることなく少しでも頭がスッキリになっているように働いてくれているのです。
 なんていい奴。

 

脳を休ませる「ノンレム睡眠」

 そんな脳も休まなくてはならない。休息が必要です。
 そこに登場するのがノンレム睡眠。深い睡眠です。
 夢さえも見ないほど、寝返りも打たないほどに脳はほぼ活動休止状態に入ります。
 そして翌朝にはエネルギーが休息によってエネルギーが補給され、また一日の活動を始めることができるというわけです。

 おおよそ、起こしてもなかなか起きない時というのはこのノンレム睡眠状態のときです。
 朝、アラームが鳴って起こされてあなたの機嫌がものすごく悪かったら 、それはノンレム睡眠状態を無理矢理起こされたと考えていいでしょう。
 せっかく休息していた脳が、けたたましいアラームで叩き起こされたわけです。
 そりゃ機嫌も悪くなるはず。

 

双方のバランスが大事

 「レム睡眠」の比率が大きくなればストレスや不安などの心のケアはされるけれど、「ノンレム睡眠」が短くなることによって疲労感が残ってしまう。
 逆に「レム睡眠」の時間が短くなれば心の問題はあまり解決されないものの、充分な「ノンレム睡眠」によってエネルギーは回復する。

 一長一短あり、どちらを優先すべきという問題でもない。
 バランスが大切であるというわけです。

 

うつ病の人はレム睡眠が長くて、よく夢を見る?

 私は昔から寝付きが大変に悪いのですが、うつ状態であると診断された人も一晩中眠れなかったり、うとうとと眠れても極めて浅い睡眠の連続で起きても疲労感が残っていたりします。
 「うつの前兆は睡眠障害」と言われたりもします。

 睡眠の研究者はこの現象を、昼間に受けた過剰なストレスを脳が睡眠中に処理しようとして「レム睡眠=心の問題を解決しようとする浅い睡眠」をとりすぎてしまうためではないかと考え、うつ病患者の睡眠中の脳波を測定しました。
 結果、その通り。

 うつ病患者は普通の人に比べて、夢を見ている浅い眠りの時間が長い反面、深い眠りに落ちた時間や回数は極めて少なかったのです。
 つまりは、レム睡眠による心のケアが充分な時間を取ってされるがために「寝付きが悪い」「眠りが浅い」「すぐに目が覚めてしまう」などの傾向が見られるのです。
 浅い眠りに比べて深い眠りがしっかりと取れないために脳や身体が休まらずに、朝起きても疲労感が残ったり、頭がぼんやりしたりしてしまうのです。

 

だったら夢を見させなければいいじゃない ――驚くべき実験

 うつ病の人はレム睡眠が長いゆえに、心身が休まらない。
 心身が休まらないから疲労が溜まり、うつ状態になる。

 !

 そうか!
 だったら、レム睡眠の時間を強引にでも短縮させればうつ病が治るはずだ!

 エモリー大学のジェラルド・フォーゲル教授の研究チームは、眠っているうつ病患者を無理矢理に起こす実験を行いました。
 被験者は二つのグループに分けられ、脳波を測定されます。

 グループa:夢を見る度に(レム睡眠)起こされる。
 グループb:夢を見ていない時(ノンレム睡眠)に、グループaと同じ回数だけ起こされる。

 実験する方もされる方もたまったもんじゃない実験なわけですが、結果は驚くべきものでした。
 6日間に渡って行われた実験でしたが、その3週間後、グループa(夢を見る度に起こされた)の患者は退院可能なレベルにまで回復していたというのです。

 本当かよ、と思われる実験結果ですが、事実なようです。

 

まとめ:うつと睡眠の関係を知ろう

 ここから得られる教訓は「うつの人が夢を見始めたら無理矢理に起こせ」ということではありません。
 それを家庭で行うには脳波計やら一晩中観測している人やらが必要になってしまい、観測する人が寝不足によって鬱になる可能性も孕んでいます。
 それに、うつが治るとは言え、眠りを妨害されるのは嫌だ。

 ここから知るべきことは、「眠れないことにはどんな意味があるのか」ということと、「眠りが浅いとどういったメカニズムでうつ状態に誘引されてしまうのか」ということです。
 まずは知ることで、自分を客観的に捉え、そして安心しましょう。

 眠れない・眠りが浅いことには、「レム睡眠状態で脳が活発に働き、心の整理や問題解決を促してくれている」という意味がある。
 そのようなレム睡眠の比重が高くなってしまうと、「脳や身体を休める時間を確保できず、疲労が蓄積されてしまう」ためにうつ状態になりやすくなってしまう。

 うつと睡眠には密接な関係があるというお話でした。

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