眠ることは怠惰と思われがちである。
特に、眠るのは夜にすべきことという先入観によって、昼に居眠りをすることは良からぬことであり怠けているとの誹りを受けかねない。
事実は、逆である。
昼寝に関する研究結果は何百例もありそこで証明されていることは、昼寝は記憶力を増し、体の動きを良くし、仕事の能率を上げ、健康効果を生むということである。
心理学者リチャード・ワイズマン博士は「日々の暮らしに居眠りの力を取り入れることは大切である」とその著書『よく眠るための科学が教える10の秘密』の中で強調している。
求められるのは、昼寝力である。
身につけるためのヒントを挙げていこう。
昼寝に最適な場所は?
静かで薄暗い場所が最適である。電話の音などの刺激が強すぎる音に邪魔されない場所を選ぼう。
睡眠に入ると体温が下がるので、温かい部屋を選ぶか、毛布にくるまると良い。
部屋が明るすぎる・うるさい場合は、アイマスクや耳栓を用いると良い。
BGMをかけることでリラックスできる人は、そうすることも良策である。
音楽のほか、ラジオやポッドキャストなど、好みに応じて選ぼう。
横になって眠る場所が確保できない場合、机に突っ伏して昼寝をするだけでも効果がもたらされることが実験により確認されている。
横になってしっかりと休むのが一番良いのだが、不可能な場合、デスクで昼寝をしても「昼寝力」は実感できると覚えておこう。
ほどよい昼寝の時間は?
昼寝には、長さに応じたそれぞれのメリットがある。
つまり、正解はないのである。
コンディションに応じた時間を昼寝に充てよう。
5分以内の昼寝
記憶力や機敏性を向上させる効果はそれほどないが、眠気を振り払う効果はある。
10分〜20分の昼寝
浅い睡眠を充分にとることができる時間である。
目覚めた時は眠る前よりも気分がよく、集中力や記憶力も向上している。
また、人は眠っている時に記憶を整理し新たな技能習得に一役買うと言われているが、この程度の睡眠時間から効果が現れることがわかっている。
血圧を下げるなどの健康効果もある。
20分〜60分の昼寝
浅い睡眠に加えて、深い睡眠ももたらされる時間である。
つまりは、上記の「10分〜20分の睡眠」のメリットを全て享受することができる上、事実や数字に関する習得能力が高まる。
深い睡眠では脳から成長ホルモンが分泌されるため、目覚めた時には明らかに元気になっていることが実感できる。
眠気や疲労感を覚える場合もあるが、30分程度で消える。
60分〜90分の昼寝(完全なる昼寝)
浅い睡眠→深い睡眠→レム睡眠という睡眠サイクルを一通り経験できる睡眠時間である。
上述の深い睡眠のメリットが得られる他、創造的思考力と抽象概念に対する理解力が高まる。つまりは、かなり複雑な思考ができるほどに脳疲労が回復するということである。
レム睡眠から目覚めるため、寝起きは良い。
昼寝に適した時間帯は?
人は昼過ぎ頃に覚醒レベルが低下し、活動が不活発になる。
だいたいいつもランチを食べた後に眠くなるのは、一日のうち夜と昼過ぎ頃に眠くなるという周期が脳内に組み込まれているからである。
午前中に面倒な仕事をどんどん片付けてしまおうと言われるのも、目覚めた直後は脳が活動的であるというバイオリズムを論拠にしている。
つまりは、誰もが薄々感づいていた通り、昼寝に適した時間帯は昼過ぎ頃であるわけだが、カリフォルニア大学の睡眠学者サラ・メドニックは、朝起きた時間による適切な昼寝の時間帯を示している。
自分にとってのふさわしい昼寝入眠時間帯を試してみよう。
起床時間 → 昼寝に適した時間
午前6時 → 午後1時半
午前6時半 → 午後1時45分
午前7時 → 午後2時
午前7時半 → 午後2時15分
午前8時 → 午後2時半
午前8時半 → 午後2時45分
午前9時 → 午後3時
昼寝に罪悪感を感じる時には?
前述の通り、昼寝は怠惰ではなく回復である。
昼寝をしないで生産性や集中力の低いまま働くのと、昼寝をすることによって最大のパフォーマンスを発揮して仕事をテキパキこなすのと果たしてどちらが良いことだろうか。
仕事とは、デスクに座っていることではない。生産性を高く保ち、定時で帰ることである。
従って、「昼寝は時間の無駄なのではないか」とか、「夜にちゃんと寝ているのに昼にも寝るなんてとんでもない」とか、「上司に見つかったらサボっていると思われる」とか、そういった根拠のないネガティブな考えは捨て去ったほうがいい。
むしろ、昼寝をしないと自分にとってマイナスであり損失であると考えるくらいでちょうどいい。
上司が昼寝に怪訝な表情をしてくる場合は、昼寝の効能についてわかってもらうこと。
駄目なら、成果は上げているのだから別に昼寝くらいしたっていいじゃないかと心の中で吐き捨てること。
昼寝もできないくらい余裕のない無能な上司であるとの烙印を押したところで、こちらは昼寝をしよう。
最後に:眠れない場合は? 寝起きのアイデアはある?
眠りに落ちることができなくても、ただ横になったり目を閉じているだけでも程よく血圧を下げる効果が確認されているから眠れないと焦る必要は全くない。
リラックスすることが肝要だ。
寝過ごしそうな場合は、目覚まし時計をセットしよう。
昼寝の寝起きすぐに頭をすっきりさせたい場合は、コーヒーを「寝る直前」に飲んでおくことで25分後、つまり昼寝から目覚める頃にカフェインの効果が現れ、寝起きからパフォーマンスを発揮することができる。
昼寝の効能についておわかり頂けただろうか。
仕事なんてしている場合じゃないぞ。さあ、昼寝をしよう。
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