内向的性格は個性であり、優劣はありません。
それなのに内向的というとなぜかネガティブに思われがちです。「暗い」「何を考えているのかわからない」「協調性に乏しい」「行動力がない」など。もちろんそれは単なる一面であり、短所は裏返せば長所になります。
にも関わらず、子供の頃はまだしも、快活で明るい外向的な人材が重宝されがちなこの社会に出ると内向型の人は肩身の狭い思いをする羽目になってしまいます。私もそうで、上司には「行動力がない」と言われ、先輩社員には「もっと明るく行こうよ」と言われ、恋人には「あなたは何を考えているのかわからない」と誹謗される始末でした。
しかし、冒頭で述べた通り、快活な外向的性格も静かな内向的性格も優劣はありません。個性です。セールスマンという職業が幅を利かせ、コミュニケーション能力という謎の基準が採り入れられたこの世の中のムードが外向型仕様になってしまっているだけです。
内向的性格は悩む必要なんてない
内向的性格の人は、上述のように「行動力がない」だの「何を考えているのかわからない」だの周囲からがやがや言われることに加え、自身の深く考えがちな内向さゆえに、自分の性格についていろいろと思い悩んでしまいがちです。劣等感を覚えがちです。
だけど、断言しましょう。悩む必要なんてどこにもありません。それは人の性格は優劣ではなく個性であるという理由に加え、内向型には素晴らしくかけがえのない長所が備わっているからです。以下に挙げる5つの内向的な人の長所を知ったら、明るいとか朗らかとかいつもプラスに評されがちな外向型が単なる能天気な馬鹿者にしか思えなくなるほどです。
以下、『内向的人間のすごい力』(スーザン・ケイン著、講談社+α文庫)から「内向的性格のかけがえのない5つの長所・メリット」を見ていきましょう。
1. 内向的な人は自制心がある
外向型の顧客は報酬に非常に敏感であり、対照的に内向型の顧客は警告信号に注意を払うと言う。内向型は欲望や興奮といった感情を調節するのがうまい。(P255)
褒められたい、お金を手に入れたい、快楽が欲しい――のように、脳は常に報酬を求めています。自制できるかどうかというのは、心理学的には目の前の報酬に対してどのように振る舞うかということです。で、外向型は報酬に対して非常に敏感であり、内向型はむしろ警戒することが示されています。
つまり、目の前に人参をぶら下げられたら自制できずに猪突猛進に暴走してしまうのが外向型であり、「待てよ、これは罠かもしれないぞ」と心の中から発せられるメッセージによく気づき注意を払うのが内向型であるということです。内向的な人はリスク管理が得意です。
おおよそギャンブルで自制ができずに大金をドブに捨ててしまうのは外向型であり、新しいことやモノに飛びついてすぐに飽きてしまうのも外向型の特徴です。外向型の長所である「行動力がある」「社交性がある」というのは「報酬に敏感すぎる」「自制心・警戒心がない」という短所の裏返しに過ぎません。
ビジネスにおいて内向型はブレーキ役となり得るでしょう。押しの強くてポジティブな外向型が脳天気に間違った方向へと驀進する中、内向型は状況を正しく見極めることができるのです。
2. 内向的な人は学習能力が高い
外向型の不可思議な行動がさらに興味深いのは、間違った行動をしたあとにある。不正解である9の番号を押してしまうと、内向型はつぎの番号に移る前に時間をかけて、なにが悪かったのかを考えている。だが、外向型はそこで速度を落とさないどころか、かえってペースを速める。(P268)
外向型は自分が間違った行動をしても深く考えずに次へ次へと報酬を求めて突き動かされるのに対し、内向型はなぜ間違えたのかをきちんと考えて同じ誤りを繰り返さないようにしているということです。
私の友人(外向型)に、スマホの画面が常に割れている人がいます。新しいスマホを買ってもすぐに地面に落としてしまい画面を割ってしまう。高いお金を払って修理をしても同じですぐに割る。それでいて「画面が割れてて見づらいんだよね」「修理代がすごく高くてもうお金がないよ」と毎回のように言っているわけです。
私(内向型)からすれば、落とさないように細心の注意を払って扱うとか、落としても割れないようにケースを装着するとか何か対策をすればいいのにと思うのですが、全くそうするつもりはないらしく今なお画面は割れたまま。要するに、全く学習しない。
私にとってそれは「操作性の悪さ」「修理代・新しい機種の購入費」が無駄になっているだけの合理性に欠く行為のように思うのでした。
3. 内向的な人は客観的に考えることが出来る
内向型は新しい情報を自分の予想と比較する傾向があるそうだ。「予期したとおりのことが起きたのか。なるべくしてこうなったのか」と、彼らは自分自身に問いかける。そして、予想が当たらないと、失望の瞬間と、そのときに周囲でなにが起きていたかとを結びつける。それによって、つぎに警告信号にどう反応するかについて明確な予測をする。(P269)
前項とも関連することですが、内向型はひとつのことに対してきちんと反省し、考え、検証し、自分のものとして吸収する能力に長けているので、同じ時間で同じことをしても比較的成長が速いという特徴があります。外向型が常に報酬という雑念にとらわれるのに対し、内向型は自身の成長に重きを置くようにプログラムされているからです。
内向型の学習能力の高さ、客観的に考える能力は生まれ持った非凡な才能と言えるでしょう。
4. 内向的な人は簡単には諦めない
内向型と外向型の対照的な問題解決スタイルは、さまざまな形で観察されている。ある実験では、心理学者が50人の被験者に難しいジグソーパズルを与えたところ、外向型は内向型よりも途中であきらめる確率が高かった。(P271-272)
諦めない力が現代においてとりわけ重要視されているのは2016年のベストセラー『GRIT』がよく示しています。『GRIT』では、大きな成果をあげるために必要なことは高い知性や才能ではなく「やり抜く力」であるとしており、このやり抜く力は内向型の領分です。つまり、内向的な人は簡単には諦めないのです。
特に様々な誘惑、集中力を欠かせる要素が手の届く範囲に散らばっている現代のこの世界において、粘り強さを発揮するのは一層に難しくなっていると言えるでしょう。ミクロな視点で言えばスマートフォンの登場により頻繁に気が散るようになったこと、マクロな視点ではインターネットによって多くの情報を得ることができチャレンジする選択肢が無限に増えたこと(言い換えれば、一つのことに執着しなくても良くなったこと)です。
前述の通り、外向型は目先の報酬・短絡的な結果を求めがちなので、そういった誘惑に弱く集中力を欠きがちです。惑わされるだけ惑わされた上であらゆるものに手を出した結果、何も自分のものにならなかったということが起こり得ます。
しかし、内向的な人は本能的に一つのことに集中できる才能が備わっています。誘惑の多い時代だからこそ、内向型が極めて有利なのです。
5. 内向的な知的パフォーマンスが高い
小学校の時点では、外向型は内向型よりも学校の成績がいいが、高校や大学になると逆転する。ある研究では、大学生141人を対象に、美術、天文学、統計学など20種類の様々な科目に関するテストをしたところ、ほぼ全科目について内向型の学生の方が知識で勝っていた。(P270)
内向型も外向型も知性(IQ)には差がないことが明らかになっています。では、何が内向的な人の知的パフォーマンスを引き上げているかというと問題解決のスタイルです。
上で見てきたように、内向的な人は「注意深く」「集中して」「粘り強く」且つ「正確に」「客観的に」物事を考えることができます。問題点を見定めそれを解決すべく熟考するという方法を採用しているために、知的に高度な問題も解決することができるというわけです。
もちろん、それには弱みもあります。内向型が劣るのは「スピード」「マルチタスク」「プレッシャーへの対応」であり、逆にこれは外向型が得意とする分野です。つまり外向的な人は「プレッシャーの中で」「素早く」「同時進行で」作業をしたり、問題解決を図るのが得意であるということです。
内向型と外向型はそれぞれの短所をそれぞれの長所で補い合う関係であると言えるでしょう。どちらが欠けてもいけないのです。
まとめ:内向的な人は開き直ってしまうのも悪くない
内向型・外向型。繰り返しになりますが、それは優劣ではありません。個性の問題です。
そう、ここで声を大にして言いたいのは、非難の的になりがちで劣等感を抱きがちな内向型ですが、その性格を直そうとする必要はどこにもないということです。そもそもが本能的に備わった特徴なので、例えば無理に明るく振る舞ったり、一人が好きなのに積極的にパーティーに参加してみたりしようとしても疲れるだけなのです。
その性格は個性であり長所です。私も極度の内向型であり、「なぜ自分はみんなと同じようにできないのだろう」と思い悩んだ時もありましたが、今ではこれは個性であると理解し、短所ではなく長所であると捉え直した上で「このままで自信を持っていいのだ」とある意味開き直りました。そうすると一気に気持ちが楽になりました。内向型に対するネガティブな意見も気にならなくなりました。
無理をしてもつらいだけ。一人でもやもやと考え込みがちな内向的な人は開き直るくらいでちょうどいいと私は考えています。
参考文献:
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