なぜ仕事にがんじがらめにされてしまっているかというと、お金がなければ生きていけないからである。
贅沢したいわけじゃなくても、ただ住む場所を確保するだけでもお金がかかる。部屋の明かりを点けるには電気代がかかる。お金がなければご飯を食べられない。従って、仕事をしなければならない。明日も仕事、明後日も。束の間の休み。また仕事。
否。
高度経済成長期は終わった。一億総中流社会は崩壊した。これからは格差の時代だ。
がっかりすることはない。格差の時代だって、我々には生きる権利がある。人生を楽しむ権利がある。思考を転換するだけで、高所得者よりも豊かに暮らすことだってできるのである。
これからの時代の価値観のひとつとして、お金に縛られずに豊かに暮らすこと大きな潮流になりつつある。お金に縛られないということは、仕事に縛られないということだ。我々はいつだって仕事なんてしたくない。そんな考え方が我々の生き方のひとつとして認められつつあるのだ。
仕事は嫌だ。うつになりそうだ。そんなあなたにおすすめする本たちである。
『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』
固定観念を根底から覆す本。
お金がなければ生きていけない、と我々は当たり前のように思っている節がある。お金がなければ電気が使えない、ガスが、水道が、食べるものだって、着るものだって。もちろん、住む場所だって。
だけど、本当にそうだろうか。
かつては、海の幸、山の幸の恩恵を受けて、お金なんてない中で不自由なく生活していた。現在、社会は高度に文明化され、格差社会だと叫ばれているが、そんな今には「都市の幸」がある。
著者の言う「都市の幸」とは、要はゴミのことである。なんだゴミか、ではない。都市に住む人々にとっては不要で捨てられてしまうものでも、まだまだ使えるものが豊穣に存在するし、大きなお金に変えられるものも普通に落ちている。
もしあなたが何もかも嫌になって全て投げ出しても、都市では決して死ぬことはない。なんとかなる。
現代における至高のサバイバルガイドである。
『野宿入門―ちょっと自由になる生き方』
無類の野宿好きによるエッセイであり、野宿ハウツー本である。確かな経験による野宿のコツやその楽しさが記されている。抱腹絶倒。
著者にはもちろん家がある。だけど、気が向いたら近くの公園であえて野宿だ。終電を気にしなくていいように、予め野宿グッズを持って公園に集まって飲み会である。
本書もサバイバルガイドとして一冊は持っておきたい。もしも明日、帰る家をなくしても大丈夫。本書『野宿入門』があれば、街の全てが宿泊場所へと変わる。
我々を家という場所から解放し、ちょっと自由に生きるための本だ。
『怠ける権利』
一日3時間労働を真面目に提唱している本。
現在、一日8時間労働とは言え、残業や休日出勤が次から次へと襲いかかってくるのが現状である。我々の自由は、素晴らしい人生はどこにいったんだ。まして過労死なんて狂気の沙汰である。
我々はもっと怠けなくてはならない。すなわち、労働は一日3時間に留め、残りの時間は美味しいものでも食べて、人生を謳歌すべきだ。みんな働きすぎだよ。たくさん働いてもいいことなんて何一つない。
ということがものすごい情熱を持って書かれている。熱弁。
全てのオフィスの本棚に飾っておくべきであると私は考える。
※以下、全文が掲載されているウェブサイト
ポール・ラファルグ『怠ける権利』
『誰もが幸せになる 一日3時間しか働かない国』
アジアのどこかにあるキルギシアという架空の国では、国民は一日3時間しか働かない。本書は、そのキルギシアへ旅行に行った人からの手紙、という体裁を取っている。
労働時間を3時間にすることと、それに伴った抜本的な改革により、キルギシアでは、生産性は上がり、犯罪は減り、子どもたちはのびのびと育ち、政治家の腐敗は減り、国民はお互いを尊重しながら幸福に暮らしているという。素晴らしいことには違いない。
そんなことが実際に可能かどうかはともかく、我々は8時間も働きたくないのだ。
毎日毎日、歯車のように仕事をされられるのは嫌だなあと思ったら、この3時間労働の国のことを思い出して、心を弛緩させることをおすすめする。
『労働廃絶論』
一日3時間労働? そんなの甘いよ。労働自体をなくさないと問題は解決しない。仕事なんてしないで遊ぶべきだ、というかなり過激な提唱である。
労働時間を短くすべきとか、国民全てを平等にすべきとかいう提言はよく聞くが、労働を廃絶すべきという主張は寡聞である。日本国憲法にも勤労は義務だと書いてあるっていうのに。
労働が世の中からなくなったらどうなってしまうんだろう、なんて憂れう必要はない。兎にも角にも我々は働きたくないからである。
※以下、全文が掲載されているウェブサイト
ボブ・ブラック『労働廃絶論』
『年収100万円の豊かな節約生活術』
豊かさとは何か。ここでまた我々の価値観は覆される。
著者は東大卒のエリートである。有名企業に就職し、出世コースだったものの、これを一生続けるのはなんか違う、と退職。以来、親の残した不動産の家賃収入年100万円を頼りに、20年間ニート、プータロー生活を続けている。
著者はこの極貧生活を楽しんでいる。決して貧しくなんかない。むしろ豊かで生き生きとしてさえいる。
著者にとっての豊かさとは、お金ではなかったのである。お金がなくとも、日々工夫して、やりたいように生きること。お金稼ぎに縛られないことこそ、謳歌すべき人生だったのである。
お金を稼ぎたい人は構わない。働けばいい。だけど、なんか違う気がするんだけどお金のために働かなきゃいけないっぽいからつまらないけど働いている嫌だなあ、という向きにはいい刺激になるであろう。
『ぼくはお金を使わずに生きることにした』
一年間、お金を全く使わないというルールを自分に課して生活したというノンフィクションである。
舞台はイギリスだが、お金がなくても健やかにそれなりに行きていけるという事実がユーモラスに描かれている。
経済の奴隷にならないために、アイデアを振り絞って過ごした豊かな一年間の記録だ。
『持たない幸福論』
京大卒・日本一のニートphaさんの代表作。
とにかく人生は窮屈だ、疲れた、と思っている向きには、いい息抜きになるであろう。
定職を持たなければならない、家族を持たなければならない、老後のためにお金を持っておかなければならない。果たしてそうだろうか。
一度きりの長い人生をどのように豊かに生きていくかを考えるために、本書のような「ゆるい」考え方も頭の片隅に入れておいて損はないと私は考える。
『怠惰への讃歌』
平凡社ライブラリーにおける、『怠ける権利』と双璧をなす怠惰本。
しかし、本書『怠惰への讃歌』は、「みんな、だらだらしよう」ということを主張しているものではない。
『怠ける権利』が無責任に3時間労働を提唱しているのに対し、本書『怠惰への讃歌』は労働は労働として4時間くらいこなして、残りの時間は余暇として自由に知的に使いましょうと提言している。
労働に重きを置くのではなく、それ以外の時間を充実させることが幸福に繋がる。哲学者ラッセルの金言が詰まっている。
『20代で隠居 週休5日の快適生活』
土日のみ仕事をして、それ以外は自由時間。月収8万円。家賃を始め、それで全てやりくりする。
一見不可能かと思われるそんな半隠居生活を20代で実践してしまったのである。すごすぎる。
こういった本や考え方に対する批判として必ず出てくるのが、「結婚はどうするんだ」とか「老後はどうするんだ」とか。
だけど、別にええじゃないか、と私は考える。
それぞれの価値観があって、それぞれの生き方がある。一生懸命仕事してお金を稼いで、家族を幸せにして、老後に備える、というステレオタイプの生き方だけが讃美される時代はもう終わったのだ。
私は『20代で隠居』の著者を支持する。
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