仮病と言うと、まず風邪が思い浮かびます。
私たちのほとんどは「仮病=風邪」と思い込んでいる節があるようで、どうもその症状を申告する際にワンパターンになりがちです。
概ね「風邪をひいたみたいです」「熱が出ました」で風邪の症状が出尽くすのであり、その後は「頭が痛いです」と路線変更をし、「腹痛です」と泥沼にはまり、ついに仮病全体でのアイデアが枯渇します。
そして、行きたくもないのに仕方なく出勤を余儀なくされるわけです。
そんな時におすすめなのが「歯痛」です。
激痛をもたらす歯痛
仮病において、なかなか歯痛という発想は出てきません。
なぜなら、仮病を使う際に実際に歯が痛いわけではないからなのですが、もっと言えば、歯痛は考えるのも恐ろしいくらいの激痛だからです。
とある参考文献によれば、歯痛は、人間の感じることのできる痛みのうちで最も痛い部類に入るとのことです。
私も、たかだか歯磨きをしなかったくらいのことでエナメル質が損傷し、激しい歯痛に襲われたことがありますが、歯痛にかかると、他の何にも集中できないくらいの苦しみが襲来します。本当にあの時はどうなるかと思いました。
歯痛は、痛みの中では独占欲と嫉妬心が強い部類に入るのでしょう。「もうあまりにも歯痛がうるさいから歯痛と結婚しようかと思う」と言い始める人がいてもおかしくないのです。
私は生憎、歯痛と結婚はしていませんが、あの痛みは考えるだけでも嫌なので、交際すらしたくないと思っています。
歯痛の申告の仕方
従って、仮病としての歯痛は、申告する際になかなかの不意打ちとなります。
どんな擦れっ枯らしの仮病使いでも、「歯痛で…、休みます」と苦しそうに申告すれば、相手は思考停止し、しかるのちに「そりゃあさぞかし苦しいだろう」と納得して、すんなりと休みをくれるのです。
納得という領域まで行かなくとも、歯痛についてなど誰も考えたくないし、まして、歯痛の者と一緒に仕事なんてしたくないわけですから、「歯痛で…、」の時点で、「今日は来なくていい」と出勤停止を告げられる場合さえあるのです。
風邪の場合は、嫌味な上司の場合、「体調管理を怠った」ということを叱責される場合がありますが、歯痛の場合、「歯磨きを怠った」ことを問われることはほとんどありません。
不思議なのですが、事実、そうなのです。
また、歯痛の場合、診断書の提出を求められる可能性が低いことも、推薦される理由です。
歯痛になったことのない上司への対処法
中には、歯痛になったことがないという珍しい上司もいるでしょうが、仮病のプロフェッショナルの間では、そういうひねくれた者に対しては、あらん限りの力を込めて平手打ちをしても構わないことになっています。
そして、「歯痛は、これの何倍痛いかわかってるか」と問いただせばいいのです。
もちろん、それで納得する物分かりのいい上司もいますが、平手打ちをされてもさっぱりわけがわかっていない人、中には逆上してくる人さえいます。
それはそれで構いません。歯痛ほど市民権を得ている痛みはないので、「これの何倍痛いかわかってるか」とパフォーマンスをすることによって、だいたいの同僚を味方に付けることができるからです。
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