やりたくない仕事はちゃんと断らないと、賛成しているとみなされる。アビリーンのパラドックスとは?

 人は集団でいると思考が緩慢になり、思いもよらぬ結論を導き出すことが往々にしてある。

 身近な例。
 それほど親しくもない数名で映画を観終わったところ。初めてのデートの2人でもいい。
 映画館から出てきて、目的地が決まらないままにふらふらとなんとなく歩いていくのだが、一体どこに向かっているのかわからない。
 誰もどこに向かっているのかわからない。
 誰かが意を決して言う。「これ、どこに向かってんの? ここどこ?」
 全員「わかんない。なんかみんながこっちに歩いて行くからついてきた」

 こういうことは、よくある。
 コミュニケーションがうまく取れていない集団の中ではこういったことが起こるのである。
 上記の例では、皆があまり親しくなかったために、どのように主張したらいいか、どの程度の距離で接すればいいのかが誰もわからないままに、思いもよらぬ方向へ歩いて行くこととなってしまった。
 一人だったら絶対に起こっていない事態である。

 自己主張の弱く、こだわりがない私などはよくこういった事態に陥るので、あまり親しくない人とは出かけないようにしているのだった。

 集団思考の一種。集団における意思決定は、個人の思惑とはかけ離れたものになり得る。
 これは、ジェリー・ハービーによって名付けられた「アビリーンのパラドックス」という現象である。

 

「アビリーンのパラドックス」とは?

 アビリーンとは地名である。
 これは名付け親であるジェリー・ハービー自身の体験が元になっている。

 息がつまりそうに暑いテキサスの夏の物語だ。ハービー夫妻は妻の両親と一緒に住んでいた。ある日の午後、のんびりくつどいでいたハービーに義理の父が話しかけてきた。「アビリーンへ行って夕食をとるのはどうかね」と。ハービーはびっくりした。アビリーンは五十マイル(約八十キロメートル)も離れており、途中は神にも見離された砂漠地帯である。そんな所を、焼けつくような太陽にさらされて、わざわざ不味い食事をとるためにドライブするなんて、考えるだけでぞっとした。でも彼の妻が行きたそうだったので、ハービーは自分の気持ちを抑えた。
 結果は、やはり予想したとおり、散々な経験をすることとなった。後日、家族みんなの気分を引き立てるように言った。「すばらしい旅だったね。そうは思わないかい?」。すると、家族が一人また一人と告白したのは、「ひどい目に遭った。初めから行きたくなかったが、みんなが行きたがっているようだったので賛成したまでだ」というものだった。言い出しっぺの義父まで「聞いてくれ。私自身はアビリーンになど行きたいとは決して思わなかったが、君たちがきっと退屈しているだろうと思ったので……」などと言い出す始末だ。

  オリバー・バークマン『HELP! 最強知的”お助け”本』下隆全・訳

 一人ひとりが「自分は反対だけど、みんなが賛成しているようだから」と黙っていた結果、誰も望まない結果になってしまったのである。

 これは例えば、お盆や年末年始に親族が一同に集まることになっている家族などは典型例と言えるかもしれない。
 長期休暇くらいはゆっくり休みたいからあまり気は進まないけれど、自分だけ行かないのもどうかと思うからと、嫌々と実家へ帰り、気を遣いながら休暇を過ごす。悲劇である。

 私事だが、私が幼い頃、年末に両親がタラバガニを買ってきたことがあった。
 初めて食べる丸ごと一杯のカニを私は夢中になって食べ、「すごく美味しい」とか言ったのだと思う。
 一人息子を喜ばせようとしたのだろう、翌年以降の年末は毎年一人一杯のカニが振る舞われることになったのだったが、次第に私はカニに飽きてしまったのだった。
 けれど、私は両親にそれを言えなかったがために、「わーい、カニだー、ありがとう」と言いながら、「あーまた今年もカニかー、やだなー」なんて思いながら仕方なく美味しそうに食べていた。なんて贅沢な奴だ。
 これもアビリーンのバラドックスの一種と言えるだろうか。

 

会社内での集団心理にも当てはまる

 アビリーンのパラドックスは、家族や友人の間だけで起こるものではもちろんない。
 会社という組織の中でも日常茶飯事で起きていることは自明である。

 会社内で引き起こされるアビリーンのパラドックスほど厄介なものはない。
 意味のない仕事が増えたり、目標が理由もなく引き上げられたり、残業・休日出勤させられたりすることも考えられるからである。
 個人では嫌だと思っているのに、組織はそれとは違う結論を出してしまう恐れがあるのだ。

 ポイントはただひとつ。
 各従業員が目立つこと、非難や批判を恐れて何も発言しないと、会社は従業員の考えを全く反映しない結論を出してしまう恐れがある、ということ。

 黙っていることは、暗黙に「賛成」と言っていると同じことなのである。
 そして、その賛成という判断は、必ずしも皆が望んでいた正しい結論とは限らない。
 誰も賛成していないのに、賛成という意思決定がなされてしまう。

 

「アビリーンのパラドックス」を回避するには

 ではどうすればいいのか。解決策はある。
 各々の意思とは違う間違った結論を集団が出さないためにできるたった一つのことは、思っていることははっきりと口にすることである、とジェリー・ハービーは言う。
 はっきり「ノー」と自分の意思を伝えることだ。

 あのアビリーンで経験したパラドックスを克服する方法があるとすれば、あなたが思っていること、感じていることをはっきりと遠慮なく口にすることが唯一の実践可能な方法であり、それこそが人間関係を改善するための戦略なのだ。(ジェリー・ハービー)

 オリバー・バークマン『HELP! 最強知的”お助け”本』下隆全・訳

 映画館から出てきた時であれば「これからどうする?」とか「じゃあ解散するか」とか「次はここに行きたいんだけどどう?」と遠慮なしに言ってみることである。
 アビリーンに行って食事でもしないか、と義父が行った時であれば、「このままゆっくりと休んでいたい」とか「近くのレストランでもいいんじゃない?」と主張することである。
 タラバガニに関して言えば、「なんかもう飽きちゃったから、もし来年もあるなら違うのがいいな」と思ったことをきちんと言うことである。

 物事を拒否することや否定することは難しいことには違いない。
 だけど、それしか解決策はないのである。

 「ノー」と言うための考え方。「相手は軽く聞いてきているだけ」と考えると何事も断りやすい
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 自分から「ノー」と主張することは、わがままに映る場合もある。
 だけど、民意を反映して集団が間違った方向へ行かないようにコントロールすることに繋がる場合もあるのだ。

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