ストレスほど恐ろしい物はない。
それは、我々を体調不良に陥れ、やる気を削ぎ、胃に穴を開け、うつ病にいざない、死に追いやることさえある。
ああ、恐ろしい。
誰もがストレスのない生活を望むわけなのだが、人の数だけストレスがあり、ストレスは人間関係に相乗する。
私などはストレスに極めて弱いので、ああ、明日も明後日も人に会いたくないなと思いながらこれを書いている。
だけどそんなわけにはいかないのだった。
ここに紹介するのは、あまり知られていないストレスの解消法6つである。
巷では、「ストレスは発散しろ! ぬいぐるみをあいつの顔に見立てて殴れ!」と教えられていたりするが、最新の研究によれば、それは間違いだということがわかっている。
ストレスは怒りによって発散すると、むしろ増幅されてしまうのである。
一見地味な解消法もあるかもしれないけれど、どれも効果は確実で、私も実践しているものである。
ストレスのない世界はない。
だったら、ストレスと上手に付き合っていこう。
1. 「自分らしく」「自分らしさ」と考えないこと
自分を勇気づける時など、「自分らしくいれば大丈夫」などと言ったりする。歌の歌詞にも「あなたらしさを忘れないで」なんて歌われたりしているのを耳にする。
これは緊張を解くのには有効な手段である。「難しいことはない、いつも通りやればうまくいく」と。
だけど、あまりにも「自分らしく」「自分らしさ」にこだわりすぎると、逆にストレスになってしまうことはあまり知られていないように思う。
これは、「自分らしさ」という考え方の中に自分が閉じこもってしまうことを原因とするもので、
・「自分らしく」いるために、新しいことにチャレンジすることを恐れてしまう。
・「自分らしさ」を失ってはいけないと考えて、自分の行動が制限されてしまう。
という弊害がもたらされる。
自分にこだわるあまり、失敗を恐れて消極的になってしまうのだ。
だけど、そもそも「自分」とは何だろうか?
「自分とはこれ!」という確固たるものが何かあるだろうか。
少なくとも、私にはない。自分で自分のことほどわからないことが多かったりするのである。
であれば、「自分はこうあるべき!」という固定した考えはそもそも間違いということになるのだ。
「自分」というものは、常に変化していくもの。
であるにも関わらず、「自分らしさ」というように固定して考えることは矛盾している。だから、ストレスの原因になる。
失敗も自分が成長している他ならぬ証だから、「失敗するなんて自分らしくない」と考えるのは今日でやめてみよう。
失敗はストレスの原因じゃない。むしろ、ストレスから解放するための成長なのだ。
「自分らしく」「自分らしさ」という考え方が、逆にストレスの原因になる理由
2. 日記を書くとストレスが減る
皆さん、日記を書いているだろうか。
日記を書いている人というのは、なんとなく暗くて、自己陶酔気味というイメージがあるかもしれない。あくまでイメージ。
だけど、日記を書くことはストレスをコントロールすることになると知ったら、どうだろう。
ちょっとは書いてみる気になるだろうか。
心理学者ジャミー・ペンネベイカーの実験によれば、日記を一日に15分かけて4日間続けてもらった結果、被験者のストレスが軽減されたことが認められたのである。
15分だから寝る前のほんの少しの時間でできるし、たったの4日間である。
かなり短期的に効果が現れることは驚きである。
日記をつけることによって、それ自体がストレス解消になるばかりか、継続することによって問題を客観的に捉え、具体的な解決へと思考が導かれるためである。
ちなみに、その日記は誰にも見せないことが肝要である。
あくまでも自分と向き合うための日記にしておくことが大切なことなのだ。
ストレスや悩みは日記に書こう!2つの実験が実証したその効果とは?
3. 自然に触れるとストレス解消になる
自然には癒しの効果があることを我々はなんとなく知っている。
リフレッシュとして大自然に触れること。海、山、川辺。
パワースポットと呼ばれる場所も自然の囲まれた場所が多い。
大自然によってストレス解消になることには、実はちゃんとした根拠がある。
緑色は癒しの色、という単純なものではない。
大自然に触れることによって、自分でコントロールできない大きなものがあると悟り、思考のバランスが取ることができるからである。
いつも我々は、自分の人生を自分で確かにコントロールしている気になっている。
やりたいようにできるし、意志の力でどうすることもできる。
だけど、人生全てが思い通りに行くわけじゃない。
理不尽なこともあるし、思い通りに行かないこともある。むしろ、そのほうが多いかもしれない。
我々は「自分の人生は自分でコントロールできる」と「自分の人生なのに思い通りにいかない」の間で常にせめぎ合い、迷い、悩んでいるのである。
そんな時に大自然に触れることによって、さらに自分の力ではどうすることもできない大きな自然の力を感じて、悩みがリセットされるのだ。
大自然でなくとも、公園や植物の鉢植え、ペットを飼うことでも、同様のストレス解消効果がある。
やはり自然は偉大だったのだ。
やっぱり自然に触れることが一番のストレス解消になる。その心理学的理由とは?
4. ストレスは自分の内部で生じるものと考えると、柔軟に対応できる
勘違いしやすいのだが、「ストレス」というものが外部から襲ってきて我々にダメージを与えるのではない。
ストレスというのは、何らかに原因がもたらされることによって我々の内部に生じるものなのである。
全く同じ境遇にあっても、片方の人はストレスを感じ、もう片方の人はむしろ楽しんでいるということがよくある。
例えば、知らない人だらけのパーティーに招かれたとして、私のような内向的な人はストレスを感じやすく、とにかく一人にしてくれという気分になるのに対し、外向的な人は初対面の人とも打ち解け、人脈を築こうとするだろう。
このように、同じ環境、同じ外部からの刺激でも、感じる人にとってストレスになったりならなかったりするのだ。
つまりそれは、ストレスの原因は外側にあるかもしれないけれど、ストレス自体は内部で発生するものであることの証左である。
ストレスが外にあるのではなく、我々の中にあると認識することは、ストレスをコントロールする上で極めて重要な考え方となる。
なぜなら、「気の持ちよう」と考えることができるからだ。
大災害やテロなどに巻き込まれた人には、日常生活では考えられないほどのストレスが襲いかかったと考えられるけれど、彼らが生き延びることができたのは、現状と向き合ったからである。ストレスと真正面から向き合ったからである。
決して、外部の対象に対して理不尽な仕打ちだと嘆き、悲観し続けたわけではない。
これを、「困難に対応していく力=レジリエンス」と呼ぶ。
我々のストレス対策も、ここにヒントがある。
つまり、ストレスを外的要因のせいにして逃げ回ったり、石のようにただじっと耐え続けるのではなく、内なるストレスときちんと捉えた上で対処することである。
そうすることによって、従来のような逃げる・耐える・愚痴をこぼす以外の選択肢が見えてくる。
今までストレスだったものを、考え方や対処の仕方によってストレスでなくすることが可能なのである。
ストレスと向き合う考え方。もう逃げ回らないためのたった1つの解決策
5. 怒りやイライラは発散すると更なる怒りを生む
誰もが聞いたことがあるだろう。怒りは発散するべきだ、と。
例えば、枕を怒りの対象に見立てて殴る、殴る、殴る。
そのように、ネガティブな感情は放出することにより、身体の中から出ていき、スッキリすることができる、と。
まして、自分の部屋で自分の枕やぬいぐるみにパンチを繰り出すことは、誰も傷つけないし周囲に迷惑もかけない無害な方法である。
怒りやイライラは、そのような方法で発散すべきだ――。
これは過去の話である。従って、間違い。
怒りは発散しても意味がないどころか、更なる怒りを生むことがわかってきたのである。
怒りだけでなく、不安や不満なども同じことである。
つまり、不安・不満に思っていることを友人などに愚痴ることにより、自分の中でそれら後ろ向きな感情が増幅されてしまい、更なる不安・不満を呼び込んでしまうというわけなのである。
では、怒りやストレス、不安はどのように解消すべきかというと、それらとは関係ない行為によって忘れるのが一番である。
それが最も健康的で無害で理に適ったストレス解消法である。
趣味に没頭するというのが最適だけれど、読書、料理、掃除など、それら怒りなどの感情と関係のないことであれば何でもいい。
そう考えると、「カラオケでストレス解消」というのは、大変に効果的で適切なストレス解消法なのである。
八つ当たりや愚痴は逆効果。仕事のストレス、本当の解消法とは?
6. ストレスは小さなことの積み重ねが一番危険。気付いたストレスはすぐに対処しよう
我々はストレスというと、何か大きな原因があって、それに脅かされていると思いがちである。
だけど、実際は小さなストレスの集積によることが多い。
それ自体は些細なことなのに、連日繰り返し積み重なることによって、膨大なストレスとなってしまうのである。
この些細なストレスのことを、「バックグラウンドストレッサー」と言う。
我々がストレスと呼ぶ大部分は、このバックグラウンドストレッサーによるものである。
なぜ些細なストレスの積み重ねが、後戻りできなほどの強力なストレスとなってしまうのか。
1. 意外と大きなダメージを確実に与え続けるため。
2. 原因が些細なだけに、それに腹が立っている自分にも腹が立つため。
3. そのストレス原因に対して無力であるため。
特に職場での人間関係の場合、そのストレス原因を「どうすることもできない」ことが多い。無力である。
そのために対処のしようがなく、イライラを募らせてしまう場合が多い。
それでも、バックグラウンドストレッサーへの対処法は、ストレス原因を紙に書き出して、優先度の高い順から処理していくという極めてシンプルな方法が最も効果的である。
物理的な原因であれば数分で対処できるであろう。
人間関係の場合は単純には行かないであろうけれど、「1. 自分の行動を変える」「2. 自分の考え方を変える」のいずれかの対処法を講じることとなるだろう。
小さなことだと甘く見ることなかれ。
些細なことだからこそ迅速に対処することによって、ストレスが太刀打ちできないほどの塊になってしまうのを未然に防ぐことができるのだ。
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