私は13年間の喫煙歴があったものの、一念発起して禁煙。ですが1年間の禁煙の後に再びタバコを吸い始めてしまいました。
禁煙は永遠の戦いであると言われます。すなわち、1年間の禁煙に成功したとしても、ふとした拍子にたった1本の喫煙が命取りになって、再びタバコを吸い始めてしまう可能性があるということです。
否。いえいえ、まずはその考えを改めるところから始めるべきです。禁煙/喫煙の二元論から脱することです。たった1本吸っただけ、たった1箱吸っただけ、別に失敗じゃない、と。
これは甘えではなく、自己正当化でもありません。むしろ禁煙に縛られることによって私達の心理はタバコを欲するようになってしまいまうという逆説的な事実があるためです。それは、「勉強しなさい」と言われると逆にやりたくなくなる、「ゲームなんてやめなさい」と言われると逆にやりたくなるという心理と同じで、「タバコをやめなくちゃ」と思えば思うほどタバコを吸いたくなるのです。
現在私は、一時は再びタバコを吸い始めたものの1ヶ月で再びタバコを吸う習慣をなくすことができました。再び私を禁煙に導いた考え方を以下で共有したいと思います。
「タバコをやめなくちゃ」と思わないこと ―シロクマ実験
「タバコをやめなくちゃ」と思えば思うほど逆にタバコを吸いたくなる。これは「シロクマ実験」として知られる心理学の定説です。被験者に「今から5分間何を考えてもいいけれど、シロクマのことだけは考えないでください」と指示すると、逆にそれが気になってしまって、シロクマのことで頭が一杯になってしまうというのです。
これは様々なことに応用できて、例えば、「終わった恋のことなんて忘れよう」と思えば思うほど辛い失恋のことで頭が一杯になってしまいますし、「ゲームなんてやってる場合じゃない」と思えば思うほどゲームが頭から離れなくなってしまうのです。
この「シロクマ実験」の底なし沼に足を絡め取られないために最も有効な手段は「受け入れる」ということです。失恋であれば写真を見ないようにするのではなくむしろ思い出に思い切り浸ってみることで、自然と心の整理がついて新しい生活に踏み出すことができるようになります。
そう、禁煙の場合には「タバコなんてやめなくてはならない」と考えるのではなく、「今、自分はタバコが吸いたいからこうしてタバコを吸っているんだ」という現状を、感情抜きでとりあえず俯瞰して認識することが肝要です。そこから全ては始まります。
自分を責めないこと ―報酬ゾンビにならない
人は報酬を与えられることに快感を覚えます。ここでの「報酬」とはプレゼントや給料のような狭義の意味合いではなく「自分にとっての良いこと」のことです。
例えば、ダイエットのために糖分を制限しようと決意した人が3日坊主で終わってしまうのは、この報酬が関係していると考えられます。お菓子を食べたいのに我慢している。でも食べたい。物凄く食べたい。だけどダイエットをしているんだから食べちゃ駄目。それにしてもお菓子を食べたい。こんなに食べたいのに、つらい――。
駄目だ我慢できない、とコンビニにお菓子を買いに行って、食べてしまう。ああ、美味しい!
この「ああ、美味しい」が報酬です。「我慢した分だけ美味しい」という話ではありません。つまりは、「ダイエットをしなければならないのにお菓子を食べたい駄目な自分」が「実際にお菓子を食べること」によって報われたということです。お菓子を食べたことによって「もう苦しい思いをしなくて済んだ=報酬を与えられた」ということ。この無限ループによって人はダイエットに失敗します。
タバコも同じ。「タバコを吸いたい駄目な自分」が実際にタバコを吸うことによって報われてしまうという快感が深層心理にもたらされ、ますますタバコをやめられなくなるというわけです。
これには3つの解決策があります。1つは「タバコを吸っている自分を責めない」こと。自分を責めるから報酬がもたらされてしまう。であれば、シロクマ実験で示した通り「今、自分はタバコが吸いたいからこうしてタバコを吸っているんだ」と考えることです。
2つ目は、報酬を先延ばしにすることです。つまり、「タバコを吸うこと」を報酬にするのではなく、「タバコを吸っていない未来の自分像」を報酬とするよう意識付けをすること。ただ、タバコを吸いたい中で自制心を保つのはかなり難しいと思うので、そういう考え方もあるという程度に覚えておいてください。
最後に、「やめたい」と思ったタイミングでやめること。継続的にタバコを吸っていても「タバコがうまい。ああ、落ち着く」と思っている瞬間と「タバコ吸うと気持ちが悪いし頭がボーっとする。健康にも悪そうだ」と思っている瞬間があると思います。
ゲームが「これから面白くなってくる」というときにいきなりやめるのは難しいですが、「なんか飽きてきた」と思い始めてきたときにやめるのは簡単です。同様にして、すんなりタバコをやめるためには「タバコ、やめようかな」と自発的に思う瞬間を待ってからやめるのが成功率が高いと思います。実際に私はそうしました。
成功体験を思い出して自信に繋げる ―世界にひとつだけの禁煙法
今再びタバコを吸ってしまっているかもしれませんが、あなたはかつて一度はタバコをやめれたのです。すなわち、「再びタバコを吸ってしまっている駄目な自分」ではなく「一度は禁煙できたのだからいつでもやめることができる」と考えてみてはどうでしょうか。
かつて、数日でも一週間でも一年間でも禁煙を成し遂げることができた時の感覚を思い出してみましょう。つらかったけれど意志の力で何とか乗り切ったという人もいるでしょうし、とにかく気を紛らわせるように取り計らったという人もいるでしょう。「コンビニに寄らない」というルールを作った人もいるでしょう、喫煙仲間と会わないようにした、飲み会に参加しないようにしたという人もいるはずです。
その成功の経験をよく思い出して、同じようにしてみれば再び禁煙をすることができる可能性が高いはずです。なぜならそれは本に書いてあるような画一化された一般論としてのセオリーではなく、あなたが実際に成功できた世界で一つだけの禁煙法だからです。とにかく自分に自信を持ちましょう。
習慣を変えてみること ―トリガーを減らす
私の経験上、タバコは習慣です。ニコチンの中毒性という科学的な理由もあるでしょうけれど、心理的には習慣が大きな影響を与えていると実感しています。
私が最初の禁煙で苦労したのは「仕事が終わった後」と「食後」にどうしてもタバコが吸いたくなってしまうことでした。食後に無意識にタバコを探してしまう自分がいて、「いやいや、タバコはもうやめたんだった」と頭の中でわざわざ打ち消さなくてはならず、これは1ヶ月近く続きました。
で、一年間の禁煙の後に吸い始めた際には、「外では吸わない。家の中だけで吸う」というルールを自分に敷いていたのですが、そうすると仕事中は全く吸いたい気持ちは起こらないのに、仕事が終わって家に帰ってくると無性に吸いたい気持ちに襲われるようになったのでした。タバコは生活の中の何らかのトリガーに誘発されて、私たちに「吸いたい」をそそのかしてくるようです。
であれば、再びタバコをやめたい私たちにできることは「トリガーを減らす」ことです。例えば、「家のベランダでだけ吸う」というルールを敷いてしまえば、居間にいる時には「吸いたい」が誘発される危険は減るでしょう。タバコを今すぐ全面的にやめることはできなくても、少しづつ習慣を変えていき、「吸いたい」をゼロに近づけていくことは可能です。
何はなくともニコレット ―最強説
私は最初の禁煙のときも二度目の禁煙のときにもニコレットのお世話になりました。ニコレット凄し。
吸いたいなと思ったらとりあえずニコレットを噛む。最初は半信半疑で、「あーガムなんかよりもタバコ吸いたい」と思っていたのですが、噛みながらしばらくするとタバコのことを忘れている自分がいました。これにはとても驚いたことを覚えています。
とにかく吸いたいと少しでも思ったらニコレット。ニコレットは3ヶ月を目安に禁煙に導く禁煙補助薬ですが、私は身体の中でニコチンを分解する能力が高かったのか、1週間でもはやニコレット要らずでやめることができました。神ツール。
タバコをやめようと思った時にすぐにやめられるよう、ニコレットを手元に置いておくことをおすすめします。二度目の禁煙を決意した際、私はとにかく最優先でニコレットを注文しました。ちなみに、ミント味によって糖衣されているものの方が美味しく禁煙できます。味なしのものは私にとってはまずくて、ニコレットを噛む習慣を投げ出しそうになってしまいました。
参考文献:
▲「ホンマでっか!?TV」でお馴染みの植木先生による人生を変える心理学の入門書です。
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