専業個人事業主になって1年が過ぎようとしている。おおよそ「家で仕事してるんでしょ? いいなー」と言われる。確かに良い。わざわざ職場に出かける手間がないし、スケジュールがなければ朝に起きる時間も自由。私自身、そんな生活に心底憧れていた。
で、雇われていないわけだから全て自己責任でお金を稼がなくてはならないというプレッシャーはあるものの、それと引き換えに圧倒的な自由があるのは確かである。
しかし、ひとつ盲点があった。「自宅を仕事場にすると逃げ場がなくなる」ということである。下記で詳しく説明していこう。
安らぐ場所としての自宅
サラリーマンでもフリーターでも、職場が「外」にある場合、自宅は落ち着く場所として機能する。「帰ってきたー。今日も仕事終わったー」とバッグを床に投げ、だらっとする。安らぎを得る。世界で唯一の安らぎの場所が自分の家だ。
しかし、自宅が仕事場である場合、「帰ってきたー。今日も仕事終わったー」という解放感がなかなか得づらいことに気づいた。今日やるべきことが終わっても、見えている景色が変わらないので自分の心の中で強制的にスイッチをオフにしなければならない。「強制的にスイッチをオフにする」ことにも労力が必要だ。
仕事をしたパソコンで、そのまま同じチェアで、同じ服のまま、自宅という同じ景色の中。うまくリラックスできることもあれば、上手に切り替えができないこともある。自宅で何もしていないのに「なんか疲れた」と思ってしまうことがあった。
仕事場に「帰ってくる」ということ
気分転換に出かけることがある。少し遠出をして、欲しかったものを買って、少し美味しいものを食べて、自宅に帰ってくる。だけど、その自宅とは「仕事場」のことだ。
気分転換をしている時は全てを忘れられて良い気分である。だけど、本来安らぐ場所である「自宅」兼「仕事場」に帰る段になると途端に憂鬱になってくる。職場に戻るのが憂鬱であることは誰にでもあるだろう。それと同じように、自宅に帰るのが憂鬱になる。
私は根っからのインドア派で、一人で自宅にいるときが最高に落ち着いていたのだが、自宅を仕事場にしてからまさか「一人暮らしの家に帰るのが嫌だ」と思うようになるとは思わなかった。要するに自宅が「逃げ場」として機能しないような気がしているのだ。
思い付く解決策5つ
これは要するに「オン/オフのスイッチ」の問題だろう。自宅でフリーで仕事をしている人なんてたくさんいる。だけれど、私はこの「自宅を仕事場にすると逃げ場がなくなる」という陥穽に全く気づかなかった。一年前には「家から一歩も出ずに仕事ができるぜやっほー」と意気揚々としていた。
解決策はいくつかある。どれもが完璧な解決法ではなくて一長一短だけれど、今持つ駒で勝負するしかない。自分のためのメモとしても簡単に挙げていく。
1. カフェで作業する
メリット
・一時期やっていた。環境を変えることでかなり集中できることを実感した。
デメリット
・お金がかかる。コーヒー代以上を差し引いた以上の金額を稼げなければ費用対効果は薄い。
・トイレに行くためにパソコンや荷物を席に放置しなければならない。
・狭くてすぐ隣に人が座っているような環境だと逆に集中できない。
・自宅にある文献を参照できない。
2. 自宅で仕事部屋を分ける
メリット
・そこそこ集中できる。
・安くて部屋数の多い物件であればカフェ代よりは安くあがる。
デメリット
・結局は自宅なので、そこまでのセパレート効果はないように思っている。
・何より、仕事部屋を快適にするためにエアコンを設置しそのランニングコストもかかるので、多少の支出は覚悟すべき。
3. タスク管理でスイッチのオン/オフをする
メリット
・スケジュールを可視化して、「今日はこれをやったら仕事のことはもう考えない」と決めてしまう。1週間単位など。
・最も安上がりで、何も揃える必要がない。今すぐにできる。
・意外と効果はある。
デメリット
・精神力が物を言う。一度スケジュールを破ってしまうとその先の計画がどうでもよくなってしまう。
・私のような怠け者には向いていないかも。
・結局のところ環境は変わらないので「逃げ場」はないまま。
4. 仕事場としての物件を借りる
メリット
・自分だけの落ち着いた「仕事場」を自宅とは違う場所に構築できる。
デメリット
・最も費用がかかる。
5. 休日を強制的に作る
メリット
・日曜日は何があっても仕事をしないようにしている。これによって、日曜日だけは自宅にいても少しだけ落ち着くように感じている。
まとめ
「自宅を仕事場にすると逃げ場がなくなる」というのは贅沢な悩みなのだと思う。だけど、私にとっては思いもよらなかった事態なので、これからフリーになろうとしている人の参考になれば幸いである。
結局は「気の持ちよう」なのだと思う。私としてはなるべく支出を抑えて、細く長くやっていきたい。つまり、今のこの環境が全て。
社会に上手に適応できなかったので逃げるようにフリーランスになったという経緯がある。私にとって、もうこれ以上の逃げ場はないのだ。いろいろと試行錯誤しながら自分なりにやっていくしかないのだった。
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