花粉症ほど、激しく我々を悩ませておきながら、甚だしく軽視されている病気が他にあるでしょうか。
もちろん、軽視されるには理由があるでしょう。
しかしながら、花粉症患者にとっては花粉のシーズンというものは脅威以外の何物でもないのであって、すなわち、客観的に見れば軽視されるに値するが、花粉症である本人にとっては大変な問題であるということができるでしょう。
花粉症が軽視される理由
まず、死なないということが挙げられます。
花粉症においては、喘息やアナフィラキシーショックを引き起こすことがありますが、それはかなり稀な事態だそうです。
つまり、国民全体においても患者が限定される花粉症という病気の中で、死に至る機会はさらに限定されるというわけですから、それは軽々しく見られる客観的理由として認められがちになってしまうというわけです。
まして症状も、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみという子供騙しのようなものばかりです。脅威的である思わせるところが一切ありませんし、会社や学校を休むに足る理由がないように思われます。
「花粉症がひどくて、休ませてください」
「ハハッ、花粉症? どういう症状なんだ?」
「くしゃみと鼻水がひどくて、鼻も詰まってつらいですし、目もかゆくて」
「大丈夫だよ、死にゃあしないんだから」
「……」
往々にして人は「死にゃあしない」と言って物事を力技で解決しようと試みることがありますが、花粉症においてはまさに「死にゃあしない」ので、何も反論できないのです。
花粉症の歴史
それでも花粉症はつらいものです。
「死にゃあしない」などと軽々しく言ってしまいましたが、「このまま目のかゆみに耐え続けるくらいだったら、いっそのこと死んでしまいたい」と思っている人がいないとも限らないのです。
花粉症が社会問題として大きく取り上げられたのは、1970年後半からと、歴史は意外と浅いです。
もちろんこれは、花粉症患者の歴史自体が浅いのではなく、私たちの花粉症に対する認識の歴史が構築されてまだ間もないということですので、花粉症を新参者といって馬鹿にする理由にはなりません。
また、同じく歴史の浅い病気として各種の精神的な病が挙げられますが、これらは花粉症よりももっと歴史が浅いにも関わらず、現在、花粉症よりも市民権を得て、欠勤するに足る理由として並べられています。
法律によれば、会社は、精神的なものを含む傷病を理由に従業員を解雇することは難しいですが、それ以外の理由で花粉症患者を解雇することは堂々とできるのです。
せめてその名称が「花粉症」ではなく、「花粉病」に変われば事態は好転すると思うのですが、医学会は重い腰を上げようとしません。
花粉症で仮病は可能か
現在のところ、花粉症はその症状の苦しみに比べて、市民権を得ているとは言いがたいです。
従って、花粉症がひどくて、どうしても会社を欠勤するとか学校を欠席するとかしたい場合、概ねは「体調が悪い」や「風邪をひいた」という理由で休むことになっています。
正真正銘の花粉症患者においてさえ、このように他の理由を付けて休日を貰わなければならないという厳しい現実がありますから、花粉症を仮病に使うということはさらに厳しいことであると言えるでしょう。
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