誰もがその沼に脚を絡めとられる。「先延ばし」である。
我々は、やらなければならないとわかっているのに、ついつい後回しにしてしまう癖があるようである。
私事で言えば、仕事から帰ってきてシャワーを浴びるのがとにかく面倒で先延ばしにしてしまうがために、それに伴って就寝時間が遅くなってしまい、いつも寝不足である。
立派な先延ばしだ。
先延ばしが特に問題になるのは、仕事上である。
チームで仕事をしている場合には、先延ばし癖のある者が一人いるだけで、チーム全体の進捗に関わる。
他のメンバーは「あいつの先延ばしをやめさせて、期限を守ってもらうにはどうしたらいいだろう」と頭を悩ませ、先延ばししている当人も「何で重要なことだとわかっているのに、自分はそれを先延ばしにしてしまうのだろう」と苦悩する。
先延ばしによって、救われる者はいない。
物事は表裏一体であり、良い面も悪い面もあると言うが、先延ばしに限っては違う。圧倒的な悪である。
だけど、その先延ばしも今日でお別れだ。さよなら。
先延ばしを克服するための様々な考え方の中から、厳選した3つをお届けしよう。
「やる気」を待っていても意味がない。行動のあとにやる気は出てくる
待っててもやる気は一生出てこない
やるべきことを先延ばしにしてしまう癖のある人は、ある考え方が癖になっている場合が多い。
すなわち、「今はやる気にならない」というものである。「だから、今はやらない。でも、やる気になったら必ずやる」と。
だけど、その「やる気」がいつ出てくるのか、当人でさえわからないのである。
つまり、先延ばしの言い訳は、やる気がない・仕事を終わらそうという気がないのと同じ。いつまで経っても始まらないし、終わらない。
行動してみれば、それに伴ってやる気が生まれる
最新の心理学では、逆だと言っている。
つまりは、「やる気」は行動のあとに出てくるのである。
仕事を終わらせるためには、やりたいかやりたくないか、簡単か難しいかははどうでもいいこと。とにかく、始めること。問答無用。
デスクに座って、資料を揃えて、やってみること。
そうすれば、仕事を終わらせるための道筋が開けるに伴って、「やる気」も出てくる。
その「やってみる」気にならないというのなら、どうしたら自分をやってみる気にさせることができるのかを考えることが肝要となる。
幾つかのテクニックはある。
とりあえずやってみるためのテクニック
・仕事が回ってきた時点で、2分以内で終わる作業は後回しにせずにその場でやっておく。
・仕事を細分化して、一つひとつの項目について達成感を得られやすくする。
・どうしてもやる気がない場合、とりあえず5分だけでいいから取り組んでみる。
・まあまあ体調がよろしい場合、25分だけ集中してやってみる。
・「ちょっと高いコーヒーを飲んだら、厄介な仕事に取り掛かる」など、自分に対して条件付けを設定する(トリガーの設定)。
待つな。とりあえず5分でいいから動け
行動のあとに「やる気」は出る。兎にも角にも、行動してみることが重要だ。
だから、「やる気が出るのを待つこと」とか、「やる気を出すために自己啓発本を読む」とかいう行為は、全く意味のないことであるばかりか、「やらなければならない」というプレッシャーを増幅させ、さらなる逃避を招くという逆効果にさえなることがわかっている。
誰もが怠け者だ。もちろん私も。
だけど、やる気が出るのを待っているなら、仕事を始めるための環境づくりをしたほうが賢明だ。
やる気はポーションや薬草によって、あるいは自然と回復するものではないのだ。
やりたくないことは、重要なことだからやりたくないと自覚せよ
重要だからこそ先延ばしにする?
なぜやりたくないのか。なぜ先延ばしにしてしまうのか。
早く片付けなければならない重要な仕事なのに。
夏休みが終わって宿題が終わっていないとなれば、先生に怒られるのは目に見えている。確実なこと。
そんな重要なタスクをなぜ先延ばしにしてしまうのだろうか。
ズバリ、それは重要なことだからである。
つまりは「重要な事を先延ばしにしてしまいがちなのは、それが重要なことだとわかっているから」である。
え? 矛盾しているだろうか。屁理屈だと思うかい。
先延ばしにしている仕事=重要な仕事=成長させてくれる仕事
作家のスティーブン・プレスフィールドは、その著書の中で興味深いことを教えている。
物事がわれわれの精神の進化にとって重要であればあるほど、それを実行するにはより大きな抵抗感を覚えるのである。
「やりたくない」と思う仕事は、あなたの成長を促す仕事なのだ。
だけど、成長・進化するためには大きな労力が伴うし、リスクもあるだろう。我々の大部分は、安泰な現状維持を望む傾向にある。
そのために抵抗感を覚え、先延ばしにしてしまうのである。
先延ばしは重要な事を教えてくれるアンテナ
つまり、先延ばしはアンテナであると考えることができよう。
今、先延ばしにしている仕事や事象があるとすれば、その仕事はあなたにとって重要なものなのだよ、と先延ばしが教えてくれているということなのだ(安請け合いしてしまったがために、ただやりたくないだけの場合もあるけど)。
どうだろうか。「先延ばしにしている仕事は、あなたにとって重要であり、成長を促してくれるもの」と考えれば、少しはやる気になるのではないだろうか。
仕事を重要度でランク付けすることは無意味。だったら、とにかく減らすべし!
スケジュールの立て方 ―仕事の計画は敢えて立てない
「勉強しなさい」→「やりたくないなぁ」と仕事も同じ
先延ばし症候群の者がいつも考えていることは、「やりたくない。でも、やらなければならない」ということである。
やろうとする気持ちは心のどこかにあるのだが、行動に移すことが難しいのである。
例えば、「勉強しなさい」と親が言えば言うほど、子供は勉強したくなくなるとよく言われる。
「ゲームなんてやってはいけません」と言われるほど、ゲームをやりたくなる。
大人になっても、この心理は同じである。これを「シロクマのリバウンド効果」という(「シロクマのことを考えるな」と言われると、かえってシロクマのことが頭から離れなくなる効果)。
すなわち、「仕事をやりなさい」と自分自身を叱責すればするほど、先延ばしにしている仕事をやりたくなくなるのである。
「仕事をしろ。ニュースサイトなんて眺めるをやめろ」と自分に言えば言うほど、心理は仕事から遠ざかっていく結果となる。
心理学者ネイル・A・フィオーレは著書『戦略的グズ克服術 ナウ・ハビット』において、グズを「仕事をはじめるときや仕上げるときに感じる不安に対処する為の心のメカニズム」と定義している。
すなわち、先延ばし(グズ)は、不安だから先延ばしにするのである。
仕事の計画を立てないスケジュールのススメ
同書において提案されているのは、スケジュールを立てる際に、仕事に費やす時間を予めスケジュールに書き込むのではなく、実際に仕事をした時間を後でスケジュールに記録すべしということである。
予め仕事の時間をスケジュールに確保してしまうデメリットは、例えば、2時間を仕事の時間として確保しておいた時間に、「なんとなくやる気が出なくてやらなかった」、或いは、「1時間しか集中できなかった」となれば、その仕事の時間としてスケジュールされた時間はネガティブなものとなってしまう。「仕事をする計画だったのにできなかった。なんてダメな奴なんだ」と。
一方、スケジュールには予定されている確定の計画(通勤時間、ランチ、会議、友人と会う約束、家事、など)だけを書き込んでおいて他は空白にしておき、その空白時間に仕事に取り組んだら書き込んでいくという方式にすることによって、5つのメリットがある。
仕事をした時間を後で書き込むメリット
1. 意外と空いている時間は少ないから早めに片付けなければ、という自覚が生まれる。
2. 仕事を「させられている」感覚が少なくなり、空いた時間に自分の意志で仕事を「している」と考えられるようになる。
3. ほんの30分くらいの空白時間でも、それが空白時間と認識できることによって、積極的に仕事に取り組もうと意識できる。
4. その空白時間に仕事をしなくても、それはそもそも仕事の時間ではないから、「仕事をしなかった」というネガティブなものとはならない。
5. 逆に、仕事をした分は成果となって目に見えるものになる。
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このやり方がそのまま使えるかどうかは人それぞれであろうが、自らの自律心を刺激して仕事をこなせるように枠組みを整えておくことは、重要なことであると考える。
すなわち、「仕事しろー!」と自分を脅迫するのではなく、「仕事しよう」と思えるような環境を構築し、自分の意志で仕事を始められるように上手に促すことである。
究極のToDoリストを作るために、絶対にやってはいけない3つのこと
まとめ:先延ばし癖を克服するための究極の3つの方法
・「やる気」を待っていても時間の無駄。とりあえずやってみることで、「やる気」が生まれる。
・「やりたくない」と思う仕事は、あなたにとって重要であり、成長を促してくれる仕事である、と認識する。
・仕事の計画は敢えて立てないで、やった分だけあとで記録してみる。
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