今日からは上司の武勇伝や苦労話なんて、一切聞かなくていい。
彼らは「部下のためを思って」そういったありがた迷惑な長い話をしているのだろうが、そんな話は退屈なだけだし、加えて、その中に役に立つ情報など何も含まれていないのである。
仮に、退屈だけど、役に立つ。それなら我慢して聞けとも言える。
だけど、上司の苦労話は「退屈な上に、役に立たない」のである。この世の終わりだ。時間の無駄。スマホのゲームでもしていたほうがよっぽど頭の運動になる。
フォードやトヨタ、グラクソ・スミスクラインのトップの指導にあたった実績のあるマーシャル・ゴールドスミスは、「組織内で昇進すればするほど、迷信を信じやすくなる」と言っている。
幽霊や一般的なジンクスのことではない。
無能な上司における迷信とは、「自分のやり方が最も正しい。だから昇進できたのだ」という根拠のない思い込みのことである。
その努力と昇進に因果関係はあるのかい?
成功した人々が犯すもっとも大きな過ちの一つは彼らの間違った思い込みである。「私は成功している。今のやり方がいい・だから、今のやり方を続ければ、将来も必ず成功するはずだ」と思い込んでいるのだ。
マーシャル・ゴールドスミス
その上司は確かに今、それなりに高い地位にいるかもしれない。
だけど、それはその努力の仕方のおかげであるとは限らないのである。
もしかしたら、違うやり方をすればもっと可能性があったにも関わらず、そのやり方のせいで今の地位に留まっているという考え方もできるじゃないか。
そう、そのやり方のおかげで成功したという因果関係は、どこにもないのである。
どうやっても証明できない。
にも関わらず、恥ずかしげもなく苦労話をしてくるという体たらくなのだった。
「苦労した成功体験=正しいやり方」と思いがち
人は皆、苦労して成し遂げたものを正しいと思い込んでしまう傾向にある。
ストレスと戦いながら難題をようやくクリアした時、「このやり方でやれば成功する」と頭の中で関連付けられてしまうのである。
それはある意味正しい。
なぜなら、実際にそのやり方で成功した実績はあるからである。
ただ、間違っているのは、そのやり方・成功体験に固執することなのである。
――その時はたまたま成功しただけかもしれない。
――もっと効率的で精度の高い方法があったかもしれない。
――次はうまくいかないかもしれない。
そういったことを考慮すべきなのだが、なかなか人の脳はうまくできていないのである。
結果、時代の流れに追いつくことができずに、かつての成功体験を部下に語り続ける無能な上司が誕生するというわけである。
誰もが操られている。「一貫性の原理」という悪魔に騙されないための2つの方法
【余談】無能な上司に関する3つの法則
ピーターの法則
社会学会の奇書とも呼ばれる『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』の中で、著者ローレンス・J・ピーターは「全ての上司は無能である」と断言している。
階層的組織の中で、人は能力の限界まで出世する。
課長の仕事を全うできるようになったら部長に昇進するというのが常である。だけど、部長の仕事がうまくできなかったら、部長止まりなのである。つまり彼は、部長以上に昇進できないということで、「部長としては無能」な人物なのである。
こうして誰もが「それ以上昇進できない地点=無能」まで昇進していくから、全ての上司は無能である、という考え方である。
ジャーディン・フレミングの法則
外資系資産運用会社ジャーディン・フレミング投資顧問会社の幹部が、多くの日本企業を訪問して発見した法則の中に下記がある。
・その会社のトップが過去の苦労話に時間を割くようであれば、その会社の成長性は高くない。
・創業者が自叙伝をプレゼントしてくる会社は儲からない。
ディルバートの法則
アメリカの風刺四コマ漫画『ディルバート』(作・スコット・アダムス)の中で述べられたものである。「企業は、無能な人をあえて昇進させることで、事業の邪魔にならないようにしている」という見解である。
会社にはいろいろな人がいて、生産性の低い者、問題行動を起こす者などもいたりする。
そういった無能な人物をあえて昇進させることによって、実務から隔絶し、他の生産性の高い社員の邪魔にならないようにすることができる。従って、全ての上司は無能である、という考え方である。
無能な上司にならないためのたった一つの方法
我々もやがて、そういった胡散臭い上司になる可能性を秘めている。
私事だが、「大人の説教ほど面倒なものはない」とかねてより思っていたのだが、30代になって、自分が説教臭くなっているような気がするのだった。あーいやだいやだ。
この文章も、説教臭い上長に対する説教とみなすこともできよう。
仕事に「やりがい」が持てないあなたのための、たった一つの理由と解決策
ともかく、上司の苦労話・武勇伝・説教なんてもうたくさんだ。
自分がそういった類の上司にならないように最新の注意を払うべきことは、繰り返すようだが、「苦労」と「成功」は違うものだと認識することである。
上述の通り、成功要因とその苦労は、何の関係もない。原因と結果でさえない。
自分のやり方が正しい、なんてわけない。
このことを肝に銘じておくべし。
自分の働いていた時に会社が成長したとすれば、その時のやり方のおかげであると思いたいところをグッとこらえる。
ただ単にその市場が成長していただけかもしれないのだ。
あなたが関わった何らかのプロジェクトが大成功したとしても、全面的にやり方が正しかったと自惚れるのはやめよう。
99%間違っていたにも関わらず、残りの1%の部分が正しくて成功しただけかもしれない。
自分の成功体験を頑なに美化し続け、追い続けることには何の意味もないばかりか、それが仇になる結果にもなりかねない。
成功から学ぶことは大いに結構。
だけど、苦労と成功に自惚れるのは破滅への道だ。
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