私たちの向上心は誠に素晴らしいので、給与が上がったりボーナスを貰ったりして手元にキャッシュがたくさんある際にはついつい生活レベルを向上させてしまいがちです。
広い家に引っ越すこと、高いクルマを買うこと、高性能の家電を揃えること――。
私たちが仕事をしてお金を稼ぐ目的は当然ながら生活を維持・向上させるためです。だから、「頑張ったご褒美にクルマを買おう」「広い部屋に引っ越そう」となるのは当然の流れなのですが、そこにはリスクが潜んでいると私は考えます。
私は数年前、30歳を過ぎたあたりから生活レベルを上げるどころか、むしろ下げることに情熱を注いできました。従って、現在では月10万円で生活することができています。月10万円で生活ができるということは貯金のことはとりあえず置いておくとしても、要するに月10万円を稼ぐだけで生活が成り立つということです。すなわち、週3日出勤でも充分であるということになります。自由気ままな暮らしです。
生活レベルを上げるということは、それとは逆の行為です。手元にキャッシュがたまたまあったからといって生活をグレードアップさせてしまうと、お金に縛られる負のスパイラルに陥る可能性があります。絢爛豪華な生活にはデメリットも存在するのです。
私の友人Mの実例
私の友人Mは親戚の家に住まわせてもらいながらアルバイトで生計を立てていた。時給は地域水準並の800円、社会保険は未加入。
ある時、新規事業のパートリーダーに任命され残業が増えたことによって収入が激増したのだった。Mはそれがきっかけとなってひとり暮らしを始め、念願だった犬を飼うことにした。新築で家賃6万円のアパートだった。田舎の物件としてはかなり高い方である。当時、別の会社で社保完備の正社員として働いていた私でさえ家賃4万円のアパートに甘んじていた。
果たしてMはひとり暮らしを始めたわけだが、一年ほど経った頃、その新規事業も落ち着きを見せて残業が殆どなくなったことに加え、店長が交代したことによってシフトが減らされてしまったのだった。
ひとり暮らしを始めた時には残業代込みで16万円ほどだった給与は、12万円になり、10万円という月もあった。月給10万円に対して家賃6万円はあまりにも高すぎる。ましてペットの犬もいる。税金も払えないほどにMの生活は破綻してしまった、という顛末である。
維持費・出費が雪だるま式に増えていく
もちろん、広い部屋に引っ越すことが夢でそのために頑張って働いているという人もいるでしょう。乗りたいクルマがあるんだという人もいるに違いありません。お金を消費してその夢を叶えることを否定するわけではありません。
ですが、暮らしをグレードアップさせることに伴い維持費や出費が増幅するということは覚えておいて損はないと思います。
クルマを買えば当然ながら黙っていても維持費が毎月かかります。それどころか、そのクルマに相応しい装備を揃えたくなってくるもので、自発的な出費もかさむことになるでしょう。
広い部屋に引っ越すことによって毎月の家賃が増えると共に、冷暖房費もかさむことになるかもしれません。人というのは空いているスペースを見つけると物で埋めたくなる性質があるようで、絶対に必要ではないけれどなんとなく欲しいと思っていた家具・家電でそのスペースを埋めるために更なる出費が要請されることになるかもしれません。
ペットを飼うこともそう。それが夢であり目標であり、日々を頑張るための原動力になってそれを実行できるのであれば問題はありません。むしろ努力家で凄いことだと思います。本当に。
問題なのは「なんとなく広い部屋に住みたい」「なんとなくいいクルマに乗りたい」「なんとなくペットを飼いたい」という動機によってあまり後先を考えずにそれを実行してしまうと、後に何かのきっかけで収入が減ってしまった際に身動きが取れなくなってしまう可能性があるということです。
生活を維持するために働き続けなければならない
友人Mがその家賃6万円生活を維持させていくための要件は、収入を維持・向上させる以外に手段はありません。シフトが減らされてしまったのなら他のアルバイトと掛け持ちをすることも視野に入れなければならないでしょう。正社員を目指すことになるかもしれません。いずれにしても家賃6万円を維持するために心労が絶えないであろうことは明白であるように思います。
人は自立を志向すべきであると考えています。Mもいつまでも親戚の家に住まわせてもらう生活から脱却しなければならないでしょう。であれば、せめてもう少し安い家賃の物件に住んで生活レベルを落としていれば、暮らしが破綻することはなかったのではないかと思うのです。
どういう動機で高い家賃のアパートに住みペットさえ飼ったのかは私には知る由もありませんが、予め高望みしないことが苦労なく生活を維持するための唯一の要件であったように思います。
まとめ:生活レベルを下げれば自由が手に入る
私は今、生活レベルを極限まで下げて月10万円で生活しています。家賃は2万7千円。この生活はお金に関する自由は少ないかもしれないけれど、それでも困窮することなく自由に暮らしています。週3日労働でも充分に生活していける今の暮らしを気に入っています。
対して、家賃6万円のアパートに住んでしまったがために生活レベルが上がり、毎月の支払いにがんじがらめにされてしまったのが友人Mです。この例は決して極端な例ではなく、何らかの縮図となっている気がしてなりません。
生活レベルを上げることは必ずしも私たちを豊かにすることには繋がらない。生活レベルをグレードダウンさせることで、一見、不自由な生活を強いられているようにも思えますが、実はお金に縛られない自由を手にする最もシンプルな要素にもなり得るというお話でした。
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