なんかあいつ仮病で休んでるっぽいぞ、と思っても、いきなり本人に問いただすことはご法度です。なぜなら、本当に体調が悪くて休んでいるかもしれないからです。
冤罪ほど信頼を失墜させる事象はありません。
「お前、仮病だろ、ふざけるな」「ひどい、本当に具合が悪くて、申し訳ないなと思いながらうなされて寝込んでたのに」
なんてことになれば、嫌疑をかけたあなたの社内での評判はガタ落ち、陰口を叩かれ、指示を無視され、業務に支障が出、上司からの評価は下落し、出世の道は阻まれ、退職に追い込まれ、一家離散、などということにもなりかねないのです。
そうならないためにも、まずは冷静に観察することから始めましょう。
疑わないのが一番ではあるのですが、世の中には狡猾でずる賢く無責任な人間も一定数存在するものです。ズルい社員が存在しない会社なんて、まずありえません。
となれば、「あいつは仮病で良く休みやがる」と目星をつけた者がいたとしても、まずは寛大な心を装って、相手を油断させることが肝要です。「そうかい、お大事にね。君が心配だ。元気に出社してきてくれよ」と接していれば、相手もそのうちボロを出すでしょう。
これはゲームです。
仮病戦略を駆使して休んでくる者と、それを見破り決定的な証拠を掴もうとする者との、終わりなき戦い。果てしなき頭脳戦。
以下、仮病を見破るための5箇条を掲載しておきますので、その戦いに終止符を打つのだ。
1. 疑わずに詳しく尋ねてみる
恐らく、電話がかかってきて「今日は体調が悪いので休ませて下さい」と言ってくるのでしょう。戦いの火蓋は切って落とされた。
その際には、全然疑っていない、むしろとても心配している風を装うことが重要です。そうすることで、相手を油断させることができます。
そして、相手を質問攻めにしてやりましょう。もちろん、疑っているからあれこれ聞くのではなく、心配しているからあれこれ聞くのです。
「休ませて下さい」
「ああ、わかった。お大事に。どんな具合なの?」
「熱があって」
「そりゃ大変だ。何℃くらい?」
「38℃…くらいです」
「だいぶあるね。風邪かな?」
「いや…、あ、たぶんそうだと思います」
「へぇ、病院に行ったほうがいいんじゃない? この頃具合悪そうだったもんな(嘘)」
「え、まあ。行かなくても寝てれば大丈夫…、や、でも午後になって治らなかったら行こうかな」
「一度病院で見てもらったほうがいいぞ。近くに病院はあるのかい?」
「えー、まあ、そうすね。歩いて、割と近くにあると思います」
「もし、あれなら病院まで送っていこうか? 今日仕事暇だし」
「いやいやいやいやいやいやいやいや、結構ですよ。自分で行きます」
こんな具合に質問しまくることで、返答までにやたら間があったり、答えにまごついたり、曖昧にしたり、答えに矛盾があったりと、仮病のしっぽを相手から引き出すのことができます。
ただ、返答に明らかな矛盾があったからと言って、そこで相手を叱責し、あわよくば出勤させようなんてことはしないほうがいい。
ゲームは冷静に長く楽しむのがいいのです。
相手は「仮病がバレたかもしれない」とビクついているはずですから、翌日にでも出社してきた際の、そのおどおどした態度を観察してやりましょう。
我々の目的は、部下を怒ることではなく、仮病で休ませないことですので、一度や二度仮病をしたからといって怒る必要はないのです。
当該人物がきちんと真面目に出勤してくるようになればいいのです。ゲームクリア。
2. 枕詞「ちょっと」
どうやら、仮病を申請する場合、すなわち嘘を付く際に、我々は無意識に「ちょっと」と口にしてしまう習性があります。防衛本能の一種でしょうか。
「ちょっと風邪をひいたので休ませて下さい」
「ちょっと頭がいたいので」
「熱があるので今日はちょっと休ませて下さい」
もちろん、これは100%ではありません。証拠と呼ぶにはあまりにも頼りない。
本当に具合悪いのだけれど、電話するのに緊張して「ちょっと」とつい付けてしまうのかもしれません。口癖なのかもしれません。
「ちょっと」という言葉自体に拘泥するのではなく、態度はおどおどしていないかなど、相手の態度や平時の勤務態度などと共に評価されることが望まれます。
「おい、ちょっと来い」
「なんですか」
「君、ちょっと前に「ちょっと頭が痛いんでちょっと休ませてください」って電話かけてきて、一日ちょっと休んだよな?」
「はい」
「あのな、言葉に「ちょっと」って付ける奴、嘘ついてる確率がちょっと高いって知ってたか」
「いえ」
「仮病だろ? いいやー、ちょっと休んじゃえー、つってちょっと休んだんだろ」
「いえ、それは本当に」
「ちょっとは反省したらどうなんだ。ちょっと君、態度悪いね。俺は今、不愉快だ。ちょっとどころの話じゃないぞ」
「待ってください、それは」
「何が「ちょっと待ってください」だ。ちょっとふざけ過ぎじゃないかい。もうちょっとさぁ、誠実さってものがあるだろ」
「もういいです。辞めます。さようなら」
「え? ちょっと待ってよー」
たかだか「ちょっと」のために、こんなことがあってはならないのです。
3. 急な欠勤に規則性がある
体調不良などで休む、あるいは遅刻の頻度の高い人の場合、もちろん、本当に体調が悪いのかもしれませんが、その規則性に目を向けると何か発見があるかもしれません。
例えば、木曜日に休みがちである、とか、月の初めであるとか、給料日直後であるとか。
当該仮病休暇者に、どのような事情があるのかはわかりませんし、知らなくてもいいことです。
ただ、規則性を持って急に休むということは、体調不良以外の何らかの事情があると考えられてしかるべきです。
嫌疑に値すると覚えておきましょう。
4. いつもより饒舌である
人は嘘をつく時、聞かれてもいないことをたくさん喋ってしまう。
これは誰もが知っていることであり、聞いている方からすれば、「なんか必死に嘘の言い訳してるぞ」とバレバレなのですが、やっている本人も、わかっていながら喋るのをやめられないのです。特に、言い訳のために同じことを繰り返して話してくるのは、嘘の可能性が高いです。あくまで可能性。
具合が悪いにも関わらず、饒舌に言い訳や状況説明などをしてくる場合、疑ってみてもいいかもしれません。ただ単におしゃべりなだけのおそれもありますが。
これについては決定的な策がありまして、すなわち、疑わしい仮病休暇挑戦者から電話がかかってきた際、黙ってみることです。
「熱があって、休ませて欲しいんすけど」
「…」
「や、あの、昨日の昼くらいからなんかおかしいなって、で、帰ってきて熱計ったら38℃もあって、やばいなーって」
「…」
「で、朝になったら治るかなーって、風邪薬も飲んだんすよ、でも、朝になってもだめで、夜中うなされてて殆ど眠れなかったんすよ」
「…」
「仕事は行きたいんすよ。行かなきゃなって。でも、熱が。どうにもこうにも。仕事もほら、しなきゃなって、わかってるんすよ。うーん、でも、熱が」
「…」
「ほら、サトウさんに代わりに俺の仕事やってもらって、なんとかなりませんかね。や、サトウさんには悪いんすけど。だって、熱があって、38℃もあるから」
「あーごめんごめん。電波悪かったみたい(嘘)」
5. こちらから電話をかけてみる
上記4つの戦略は、全て防御です。あっちからの攻撃をパリィで華麗に受け流し、隙をつくためのものです。
では、部下の仮病を疑う管理職は、受け身でいるしかないのかというと、決してそうではありません。
そろそろ攻撃の時間だ。
つまり、当該仮病休暇満喫者が、仮病らしきもので休んでいる最中、こちらから不意打ちの電話をかけてやることです。
できれば、予測不可能な時間に仕掛けることが望ましいです。
となると、昼休みの時間帯は除外、夕方から夜も翌日の出社予定などで電話が入るかもしれないとあちらも警戒しているでしょうから除外。
すなわち、適切な時間は、朝、休むとの電話を切ってから一時間後あたりとか、午後の2時とか、そのあたりでしょうか。
疑う素振りは見せてはいけません。心配で電話したんだよという態度を貫きましょう。
相手が必要以上におどおどしているようだったり、周囲ががやがやしていたり、電話に出ないまま一日が終わるなどの場合、しめたものです。
かなりのプレッシャーを与えることができていると予想されます。
もちろん、圧力を与えることが目的なのではなく、こちらとしては仮病で休むことをやめて欲しいだけなのです。
「あいつにはバレてるっぽい。ズル休みはもうできないな」と思わせることができれば、こちらの勝利です。
しかも、一滴の血も流れない完全勝利。名誉革命です。
コメント
これがブラック企業、パワハラの発生方法です。
皆さんよく覚えておきましょう。