現在、在職中でストレスなどにより仕事を辞めたいと思っている人もいるでしょう。
うつかもしれない、退職したほうがいいのかもと真剣に悩んでいる人もいると思います。
辞めるのはちょっと待ってください。
今、何のあてもなく辞めてしまった場合、ハローワークに行けば失業手当は給付されますが(雇用保険加入の場合)、せいぜい90日が限度です。
たったの3ヶ月で次の職を探すだなんて、無茶です。まして、ストレスで壊しかけた身体に鞭打って転職活動をするのは相当過酷。
金銭的なプレッシャーも相まって、さらに身体を、精神を、心を壊しかねません。
そこで、我々には「傷病手当金」がついています。
社会保険(協会けんぽ)に加入していれば、誰でも最長1年6ヶ月に渡って受給することができるものです。現在の職場を退職したとしても、継続して受給することができます。
1年半もあれば、ゆっくり療養し、自分を見つめ直し、余裕を持って転職・就職活動を始めることができるのではないでしょうか。
但し、傷病手当金の受給には様々な条件があり、それを満たしていなければなりません。
決して難しいことではありませんが、知っているのと知らないのでは大きな違いです。
制度を最大限活用して、精神的に余裕のある人生を送るための全手順を下記に紹介していきます。
ちなみに、私は過去にそのようにして1年半を過ごしました。
なお、傷病手当金の受給資格は、社会保険に1年以上加入していることが基本条件になります。
つまり、今の会社に努めて1年以上経っていなければなりません。
入社して1年未満である場合、傷病手当金を受け取る権利は生じませんので、どうしても傷病手当金を申請したいのであれば、なんとか耐えて勤続1年を目指しましょう。
step0 傷病手当金の給付条件を確認しよう
病気になった全ての人が傷病手当金を受け取ることができるわけではありません。受給には幾つかの条件があります。
下記に、重要な点を箇条書きしておきますので、確認してみましょう。
・社会保険に加入していること。国民健康保険には傷病手当金はありません。
・被保険者期間が1年以上であること。つまり、入社して1年以上が経過していること。
・休養期間に給与を受け取っていないこと。
・医師による「働ける状態にない」との診断があること。病院で診断書を書いてもらいましょう。
それでは、実際に傷病手当金を受け取るための手順を下記で見ていきましょう。
step1 精神科・心療内科を受診する
全てはここから始まります。
職場にまだ在席している時、つまりは社会保険に加入している段階で通院を始めることが絶対条件になります。
行くべきは精神科か心療内科ですが、おすすめは精神科です。
心療内科は、心が原因による身体の不調を診察する場所。精神科は、気の滅入りを診察するところと、私は認識しています。
出勤するのが嫌だとか、うつになりそうという気分を診てもらうのは、精神科が適しています。
精神科というと良からぬイメージがつきまとって、初診に赴くのに勇気が要るかもしれません。
ですが、そんなことはありません。今抱いているかもしれない暗くてネガティブなイメージは、全て杞憂です。極めて健全で普通の場所ですので、恐がらなくてもよろしいです。
医師には、「とにかく気が滅入って仕事どころではない」とか「ストレスでうつになりそうだ」とか、それらしいことを申し伝えれば大丈夫です。
悩みがある場合、とにかく現状を聞いてほしい場合、先生にきちんと相談しましょう。
おおよその場合、一週間分の軽めの向精神薬が処方されると共に、次回の予約をとることになります。もちろん、次回もきちんと通院します。
ここでは通院していたという実績が重要です。
何回か通院することにより、医師との信頼関係が構築され、次で述べる長期休暇を取得しやすくするためのものです。
step2 傷病により会社を4日以上連続で休む
つまり、step1で診察してもらったところの心の病を原因として、会社を休むことです。
その休暇を取得するために医師に診断書を書いてもらいましょう、というのがここでの要点です。
診断書を書いてもらうには様々な方法があります。
私の場合、数日の無断欠勤の末、自宅で衰弱していたところを発見され、救急車で当該病院へ搬送、そのまま「1ヶ月の療養を要する」との診断書を受け取りました。
手段としてはやや強引かと思われますが、有無を言わせず診断書を書いてもらえたので、結果的に良かったと思っています。
恐らく、先生に「もう限界。診断書書いてください」と普通に申し出ても書いてもらえますから、勇気を出してお願いしてみましょう。
病院としては、診断書を作成することにより利益になり、さらには、診断書を書かなかったことで最悪の事態になることは避けたいですから、深刻な顔をして申し出ればすんなりと書いてもらえます。
もちろん、本当に限界で休みを要する場合、きちんとその旨を伝えましょう。
会社は助けてくれません。この場合、病院における医師だけが唯一、手を差し伸べてくれる救世主です。
傷病の発症により4日以上連続の休暇があった場合、傷病手当金受給の権利が生じますから、必ず4日以上連続で休みましょう。公休日を挟んで4日連続でも構いません。
4日目の欠勤からが傷病手当金の支給対象であるということで、3日目までは待機期間(支給対象外)となります。
私と意見しては、上記の通り、この際ですから1ヶ月くらい休んでしまうのかいいと思いますが、各自の判断に任せます。
step3 傷病手当金の申請
果たして長期休暇を得たあなたが次にすべきことは、本題である傷病手当金の申請の準備です。
協会けんぽのウェブサイトから申請用紙をダウンロードできますので、記入して、協会けんぽに郵送するだけです。
会社に記入してもらう箇所もありますが、私は未記入のまま郵送しました。何の問題もなかったです。
傷病手当金支給申請書には医師による記入欄もありますのでかかりつけの病院で当該箇所を書いてもらいましょう。
その場で書いてもらえる病院もありますし、次回の来診の時に受け渡しとなるところもあります。
この医師による記入によって「働くことができない」ということが証明されることとなり、傷病手当金を受け取る要件を満たすこととなります。
医師の診断が、傷病手当には必須です。お医者さんも快く書いてくれます。
費用ですが、医師に傷病手当金支給申請書に記入してもらう行為は傷病手当金意見書交付料と言い、健康保険が使えます。
100点なので、1000円。その3割が自己負担です。
病院によっても違いはあれど、330円〜500円が一般的です。
1ヶ月ごとに傷病手当金支給申請書を協会けんぽに送付する形が良いでしょう。
私の場合、約1週間から2週間程度で支給決定通知が自宅に郵送され、間もなく指定銀行口座に振込されます。
傷病手当金の金額は、休暇取得直前3ヶ月分の給与の平均額の2/3です。
従って、戦略的に傷病手当金をもらいたい場合、3ヶ月間残業しまくって給与を引き上げてから休暇に入ると、支給額が増えます。
裏技として覚えておいて損はないです。
関連サイト:
傷病手当金支給申請書ダウンロードページ – 協会けんぽ
step4 退職する
傷病手当金の素晴らしい点は、在職中に傷病手当金が給付されたという実績があれば、医師の診断付きの傷病手当金支給申請書さえ提出することで、退職しても継続して支給される点です。
従って、退職しても構わないですし、会社に残りたいなら残りたい意志を会社に表明しましょう。
できれば会社都合退職を
退職するなら、傷病手当金の給付終了後の失業手当を見据えて、できれば、会社都合退職で会社を後にするのが望ましいです。自己都合退職と会社都合退職では、失業手当を受ける際の待遇に違いがあります。
給付期間、待機期間の有無など、会社都合退職のほうが何かと有利です。
私の場合、3ヶ月程度会社を休んでいたところで、突然解雇されました。何の予告もなく急に離職票が送られて来たのでかなり驚きましたが、再三の出勤要請に応じなかった当然の報いであり、解雇ですから離職票には会社都合退職と銘記されていたので、そのまま事態を受け入れました。
会社都合退職にしてもらうためには、上記の方法しかないと思われます。つまり、一向に出勤せずに解雇を待つことです。
会社としては、会社都合退職にしてしまうと評判が落ちますので、何としてでも自己都合退職をと、力技で勧めてくる場合があります。
会社との交渉次第でしょうが、会社都合退職であればベストです。難しそうなら自己都合退職でも構いません。
【重要】退職日に出勤してはならない
これは最も重要なことですが、退職日に出勤してはなりません。退職日に出勤したとの実績が付いてしまうと、その日以降、傷病手当金を受け取る権利が消失します。つまり、これまでの経緯、努力が全て水の泡。
事を慎重に運ぶためにも、会社に荷物を取りに行くなどの用事は退職日以外の日に行いましょう。絶対です。
step5 退職後の各種手続き
退職後にすべき手続きは大きく分けて2点あります。ハローワークでの手続きと、役所での手続きです。
いずれも重要なことで、金銭に関わることも含まれますので忘れないようにしましょう。
ハローワークに離職票を提出する(失業保険の給付延長手続き)
まだ失業手当は受給しません。なぜなら、傷病手当金をもらっている身だからです。
失業手当と傷病手当金は同時にもらうことができないのです。失業手当は、働ける状態になって初めて支給の対象となります。我々は今、医師から就業不能であるとの診断を受けて傷病手当金をもらっているわけですので、失業手当の給付延長(延期)の手続きをするためにハローワークに赴きます。
手続きの期限は退職日の翌日から2ヶ月以内ですので、忘れずに申請しましょう。
給付延長申請をしなかった場合、傷病手当金の受給が終わった後の失業手当の受給ができなくなってしまい、大きく損をすることになってしまいます。
「国民年金」「国民健康保険」「住民税」の減免申請を行う
就業不能のため、収入がありませんので、「国民年金」「国民健康保険料」「住民税(市県民税)」の減額・免除を受けることができます。傷病手当金を受け取っていても、それは就労による収入とはみなされないので、減免申請が可能なのです。
これは必ず自ら役所に赴いて申請しなければなりません。自動的に減免になることはありませんので注意しましょう。
国民年金については、免除を受けることで老後の受給額が減ってしまいますから、それぞれのライフプランに照らし合わせて免除申請するか、全額を払い続けるかを決めましょう。
また、全額免除申請をしないままに払えないから払わない、となると、未納扱いとなり、老後の支給額に大きなペナルティが付きますから、払えない、払いたくない場合、必ず申請しましょう。
収入がなかった期間を遡って申請することも可能です。既に支払ってしまった分については還付(払った分が振り込みで戻ってくる)されますので、免除申請を忘れてしまっていても遅すぎることはありません。
国民健康保険、住民税(市県民税)については、減額申請をすることになりますが、デメリットは何もありません。申請することを強くおすすめします。もちろん、過去に遡っての申請も可能で、過払い分は還付されます。
私は国民年金、国民健康保険、住民税のいずれも減免申請しました。
特に国民健康保険と住民税は、普通であれば生活を逼迫するほど意外と高額ですが、減額措置により信じられないほど少ない金額となり、大変に助かりました。
step6 通院は継続し、1ヶ月ごとに診断書を書いてもらう
前述の通り、傷病手当金は最長1年半まで受給が可能で、受給には医師の「就労不可能な状態である」との診断書が必要不可欠です。
従って、体調が良くならず働ける状態にない場合、あるいは、さらに傷病手当金を受け取りたい場合は、通院を続けて医師に診断書を書いてもらうことを継続することとなります。
私の場合は、1ヶ月ごとでしたが、各々、診断書に記載されている休養期間は違うでしょう。休養期間が切れつつある頃に、また診断書を書いてもらうこととなります。
診断書と併せて傷病手当金申請書を協会けんぽに郵送することには変わりありません。およそ1週間程で支給決定通知が自宅に送付され、指定口座に当該額が入金されます。
step7 傷病手当金受給終了後
傷病手当金の最長受給期間である1年半。支給終了日が近づいてくると、結構焦ります。どう頑張っても支給期間を延長することはできません。
傷病手当金の受給が終了したらまずハローワークへ行き、失業手当を受け取る申請をしましょう。失業手当は就労可能な人に対して支給されるものであるので、まだ働けない場合は申請する必要はありません。
ただ、傷病手当金の支給が終わり、現在、あてとなる収入がありませんから、失業手当を受け取る手続きをすることによって、当面の生活費は工面できます。就労可能かどうかハローワーク職員に聞かれますから、「働けます」と答えれば、失業手当の支給資格が与えられます。
失業手当は、おそらく殆どの場合、受給期間は90日ですから、3ヶ月後を見据えて次の策を練る必要があります。
就職するに越したことはありませんが、いまいち働ける状態にない、働きたくない場合もあるでしょう。
公共職業訓練で失業手当給付を延長する
職業訓練には「民間職業訓練」と「公共職業訓練」とがありますが、失業手当の給付期間が延長されるのは、公共職業訓練のほうです。ハローワークが斡旋しています。
公共職業訓練を受けることで、職業訓練修了まで失業手当が延長して給付されます。ハローワークにおいて応募可能な公共職業訓練の案内が掲示してありますので、受けたい訓練が見つかったらハローワーク職員にその旨を伝えましょう。訓練内容や面接日についての案内がスムーズにされます。
どの訓練を受けたいかわからない、職業訓練って何? という人も、職員に聞けば詳しく教えてくれます。
職業訓練は3ヶ月コースが多く、稀に6ヶ月コースもあります。長く失業手当をもらいたい場合、期間の長いコースを選びましょう。
Microsoft Office技能習得の訓練が一般的ですが、自治体によって様々な訓練がありますので、確認してみましょう。
ちなみに私は、失業手当給付期間1ヶ月を残してMicrosoft Officeの6ヶ月コースを受講し、失業手当が5ヶ月分延長して給付されました。
公共職業訓練は金銭面の他にも様々なメリットがありますので、失業中の方は一度確認してみることをおすすめします。
障害年金を受給する
国民年金を未納せずに支払っていることが絶対の受給要件になります。
上記step5で、国民年金の免除申請を行いましたが、そのように減免申請をきちんとしていれば、障害年金は受給可能です。あくまでも、何の申請もせずにただ納めていなかったのが、「未納」ということになるのです。
障害年金とは、肉体的あるいは精神的な障害を抱えているために就労が困難であるとみなされた場合に受けられる保障です。言ってしまえば、障害者として認められ、国民年金から保障が受けられるということです。
うつやパニック障害、自律神経失調症などの精神的要因によっても受給が可能です。
ただ、障害年金は、傷病手当金のように医師の診断書さえあれば受給できるといったものではありません。医師の診断書を提出するところまでは同じですが、その後受給の可否についての審査があり、それを通らなければ受給決定とはなりません。
私も、ハードルが高そうだと足踏みしてしまい、障害年金については申請していません。
ただ、障害年金受給のコツなどをまとめたウェブサイトがたくさんありますから、受給を目指す方は参考にしてみましょう。
また、本当に就労が困難である場合、きちんと申請をし、生活の金銭的な不安を解消しましょう。
コメント