劣等感は克服する必要ない。誰も負け犬ではない心理学的理由とは?

 誰かと比べて劣等感を感じることのない人は、恐らくいない。
 だけど、この劣等感というやつは、我々の心を掻きむしって、落胆させ、人生は厳しいという思いを矢のように突き刺してくる。

 例えば私は、他の友人たちに比べて年収が極めて低い。未婚であるのも私くらいである。喋るのが得意ではない。ネガティブシンキング。社会人に向いていない。短気である。
 など、挙げればきりがない。

 だけど、私は他の人も同じような劣等感を感じているに違いないことを知っている。
 だからいちいち自分が劣っているかもしれないという思いにとらわれないようにしている。
 それは私の優越感からではない。私は特別に劣った人間でもないが、特別に優れた人間でもない。

 劣等感を感じない人なんていない。
 且つ、人は「自分だけが」著しく劣っているという思いを募らせてしまう。

 つまりは、誰も優れていないにも関わらず、皆が劣等感を感じている。
 全員が劣等生? そんなことあるわけない。
 どういうことだろう。

 結論から言おう。
 あなたの劣等感は正しい。だけど、それはあなたのせいではない。

 

「あなたの友人は、常にあなたよりも多くの友人を持っている」理由

「友だち何人いる?」の実験

 劣等感に関する研究における最初の金字塔は、社会学者スコット・フェルドが1991年に発表した論文『なぜ、あなたの友人はあなたより多くの友人を持っているのか』である。
 あなたが任意で選んだ友人たちに「友だち何人いる?」と尋ねて、回答を得る。すると、その回答の平均値は、あなたの友人の数よりも大きくなる可能性が非常に高い、ということを示している。
 あなたの友人の数が10人だとして、その中の任意の5人に「友だち何人いる?」と訊ねて回答を得れば、その平均値は13人とか15人とか、とにかくあなたの友人の数よりも多くなる傾向にある。

 なぜこんなことが起こるのかというと、人は往々にして友だちのいそうな人を友人に選ぶからである。
 あなたは無意識のうちに友だちのたくさんいそうな人に「友だち何人いる?」と訊ねるのであり、友だちのいなさそうな人には訊ねない。
 結果、あなたの友人の数のほうが少なくなって、劣等感にさいなまれる。

 

人は、わざわざ都合の悪い相手と比べて劣等感に陥る

 驚くべきことである。
 つまり、「人は自ら都合の悪い相手を選んで自分と比べ、劣等感や自己憐憫に陥る」のである。

 では、今、想像してみて欲しい。
 あなたは他の友人に比べて友だちは多いだろうか、と考えてみて欲しい。
 恐らく、自分の友だちの少なさに劣等感を感じているはずである。

 私も今やってみた。
 私はそもそも友人の多いほうではないが、私よりも友だちの少ない人はひとりも思い付かなかった。
 つまりそれは、自分で勝手に友だちの多そうな友人と比べてしまっているからに他ならないのである。

 

日常にたくさんある劣等感の罠

その幾つかの例

 友人の数だけではない。劣等感を感じるための事象はあらゆるところに溢れている。

 例えば、ジムに行けば自分の体が一番たるんでいるように感じる。
 それは、ジムでたるんだ体の人に出会う機会が少ないがために、引き締まった体の人を選んで比べているからに過ぎない。

 みんな恋人がいて幸せそうなのに、自分はモテない。
 それは、恋人がいて且つ幸せそうな人にばかり目が行ってしまい、わざわざ比べているだけ。

 給与が少なくて生活レベルが低い。
 給料の高い人や散財好きな人と比べているだけ。

 何をやっても下手である。
 上手な人と比べているだけ――。

 

劣等感に悩む必要なんてない

 我々はあらゆることに劣等感を感じることができる。なぜなら、わざわざ劣等感を引き出すように考えているからである。
 従って、もう我々は劣等感に悩む必要なんてない。

 それは「劣等感」であり、「劣等」ではないのである。
 劣等を感じているだけであって、実際にあなたが劣っているかどうかとは別の問題である。
 ただ単にそう思い込んでいるだけ。

 つまりは、劣等感は単なる考え方の問題に過ぎないというわけである。
 なぜなら、人はわざわざ都合の悪い相手を選んで比べてしまう傾向にある。覚えておこう。

 【仕事ができないという錯覚】他人の考えが気になるのは「自己中心性バイアス」のせい。だから気にするな

 

まとめ:その劣等感は正しいけど、あなたのせいじゃない

 だから、今感じている劣等感なんて全く気にしなくていいのである。
 落ち込む必要なんてないし、ストレスに思う必要もない。

 ストレスと向き合う考え方。もう逃げ回らないためのたった1つの解決策

 確かにその劣等感は正しい。だけど、皆そう感じているのである。
 そして、劣等感を感じているからといって、実際にあなたが劣っているかどうかとは全く関係がないのだ。

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