のんびり自由に暮らそう。恐れずに生活レベルを下げる5つのメリット

 人は今の暮らしよりももっと豪華で便利な生活を志向しがちです。

 もっと広い家を、もっと高いクルマを、もっと性能の良いスマホを、もっと高い食材を、もっと家事を便利に――、など。例えば、テレビを買い換える際、だいたいの場合は大きなサイズのものを買うのではないでしょうか。よっぽどの事情がない限り小さいテレビにグレードダウンさせることはないように思います。

 ええ、私もかつて所有していた21型のテレビを人に譲った際、27型のディスプレイに買い換えました。21型に不満があったわけではないのですが、なんとなく大きいものを買ってしまったのでした。そう、なんとなく。人には本能的に向上心が備わっており「なんとなく」グレードアップを目指してしまう傾向にあるように思います。

 だけど、グレードアップや向上心だけが人生の本質でしょうか。人生をより良くするための手段が豪華絢爛な暮らしを志向することだけだとは私には思えないのです。

 

生活をグレードダウンさせると自由が手に入る

 私は後に、ストレスにならない程度に生活水準を下げていくことを試みました。それは私が豪華絢爛な暮らしを全然望んでいないことに自分自身で気づいたからです。贅沢なんてしたくない。平均以下の水準の暮らしで構わない。

 自由に生活をしたかったのです。お金と仕事にがんじがらめにされる日常は私にとってはストレスフルで、そんな状況から解放されたいと思って暮らしをグレードダウンさせることに決めたのでした。

 具体的には、

 
・クルマを手放した

・スマホを不便だが安いプランに乗り換えた

・外食をやめて自炊にした

・タバコをやめた

・家計簿を付けて支出を管理した

・家賃の安い物件を探して入居した

 
 これらを実行し、金銭的には多くを望めないけど自由な時間を充分に確保できるスタイルに生活を変えたのでした。

 
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 人それぞれ価値観があると思います。「お金持ちになることが人生における自由だ」と考える人もいるでしょう。でも私にはお金が人を自由にするとは思えなかった。むしろ、お金は人の自由を奪うものでさえあるのではないか。そう考えた私は「お金に縛られない自由」に価値を見出し、お金に縛られない生活を志向したのです。その具体的な方法が生活レベルを下げることです。

 以下、私にとっての生活レベルをグレードダウンさせることの5つのメリットを紹介していきましょう

 

1. 労働時間を短くできる

 生活レベルを下げるということは支出を低く抑えることに他なりません。日々を生活していくために出ていくお金が少ないということは少ない収入でも暮らしていけるということです。

 それなりに高い生活レベルで生活している人は、その生活を維持するために多くのお金を稼がなくてはなりません。広い部屋、高い携帯電話料金プラン、クルマ、外食の習慣など、黙っていても出ていくお金が月15万円であるなら、月に15万円+α以上は稼がなくてはならないということになります。

 で、その稼いだお金で更に生活水準を高くすれば20万円、25万円と更に高い維持費がかかり、高い給料を貰うために一生懸命に働かなければならないし、嫌な仕事であっても会社を辞めるなんてことは心理的にも生活的にも難しくなっていきます。

 生活レベルを低く抑えた私は週3日労働・月10万円で生活しています。家賃、光熱費、通信費などを合わせた固定支出は月5万円です。残りの5万円は食費や小遣い、貯金などに充てられます。贅沢な暮らしでは全くありませんが私が求めていた清々しい生活がここにあります。

 なにしろ週4休み。仕事に毎日を縛られないがために人生の中で今の生活が最も幸福度を高く感じることができていると断言できます。生活に不安もありません。

 
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2. 本当に必要なものに気づくことができる

 私が生活レベルを下げる暮らしを志向したきっかけは仕事に縛られないためと、もう一つ、将来の不安という理由がありました。

 当時私が勤めていたのは地方の零細企業で日給8,000円・社保完備・ボーナスなし・退職金なし、という待遇でした。週休2日としても手取りで15万円程度。昇給の見込みなし。むしろ、倒産の可能性ありという状況です。

 30歳という言わば働き盛りの年齢であった私は、この自分の置かれた状況を考えた末に「給与の高い会社へ転職を目指す」のではなく「生活レベルを下げる」という決断をしたのでした。つまりは「給与を多く貰って生活を維持しながら貯金をしていく」のではなく、「支出を究極まで抑えて限られたお金の中で貯金をしていく」という戦略です。

 なぜなら、仕事に縛られたくなかったからです。わがままな私はお金よりも、自由を望んだのでした。

 支出を究極まで抑えるということは様々なものを切り捨てていく過程でもあります。私の例で言えば、クルマを手放しました。私にとってクルマは惰性で所有していただけで本当に必要で大好きだったというのではなかったのです。クルマを手放して一年経った今でも全く後悔していないどころか、早めに決断して思い切って手放してしまって本当に良かったと思うのでした。

 生活レベルが低いから幸福度も低いというのは誤りです。お金持ちが皆幸せであるというのが誤解であるように。

 生活をグレードダウンさせることによって自分と向き合いながら不要なものを手放し、本当に必要なものを手元に残すという取捨選択をすることができます。不要なものを惰性でお金に物を言わせて周囲に集めることは幸福度とは関係のないように思います。逆に、本当に必要なものだけを周りに置いておくことによって、雑念にとらわれずに本当に自分がやりたいことに集中できるようになると実感しています。

 かつては同会社で週休2日で働き手取り15万円程度稼いでいたのですが、倹約も板についてきた頃に更なる自由を獲得しようと週休4日にしてもらったのでした。万が一、私にとってクルマがまた必要になったら、その時は何か収入を増やす手段を考えるなりクルマに代わって何かを削るなりしようと思っています。

 
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3. 変化に対応しやすくなる

 生活レベルを上げてしまうことはお金にがんじがらめにされてしまうことでもあるというのは先に述べました。高い水準の生活を維持するためだけに嫌な仕事にかじりつかなければならないという事態にもなり得るということです。

 それに対して、予め生活レベルを落としておくことによってあらゆる変化に対応できると私は考えています。例えば、それなりに高い給与に対して低い支出で暮らしていれば多額の貯蓄ができるでしょう。充分な額が貯まった頃に退職し、自分のやりたいことを安心して始めるということもできます。

 支出の少ない暮らしをして普段から倹約を心がけていれば突然の解雇や倒産にもあまり慌てずに済むでしょう。高水準の生活を維持するために焦ったままに転職活動に突入して不本意な会社に慌てて入社してしまうという事態を避けることのできる余裕があるはずです。転職において焦ったり慌ててしまうことは良い結果を生まない傾向にあります。

 私は現在週3日だけ出勤していますが、お金が必要になったら残りの4日の中から単発のアルバイトなどをして臨時収入を得ることも可能です。支出が少ないために自分の意志で自分の人生をコントロールできているという実感があります。万が一、解雇や倒産の憂き目にあったとしてもしばらくは貯金で対応できるようになっています。

 

4. 生活レベルには下限があるから倹約は難しいことではない

 人の欲望には上限がありませんが生活には下限があります。お金を持っていることによって無限に散財することが可能ですが、節約・倹約は有限です。無限のものを無限に消費するよりも、有限の手持ちの駒でどれだけ工夫して生活できるかというゲームのほうが私にとっては魅力的に感じます。

 お金をたくさん稼ぐことは無限の努力を支払うことに他なりません。もっと上へ、もっとたくさんといつまでも上昇志向を続けることができる。しかしながら、お金ほど頼りないものはありません。特に「お金を稼ぐ」という観点においてはあまりにも不確実です。「お金を払って生活を維持する」ことはリアリズムですが「お金を稼ぐ」ことは不確実なファンタジーに過ぎません。

 私にはそういった上昇志向の競争や虚栄心には全くと言っていいほど関心がなかったので、こうやってすんなりと生活レベルを落として倹約できているのだと思います。もちろん「どうやってもっとお金を稼いでやろうかと考えているときに一番幸せを感じる」という人もいるでしょう。

 私が主張したいのは、お金を稼ぐことにそれほど興味・情熱がないにも関わらず、周囲のムードや自らの惰性に巻き込まれてなんとなく欲望を増幅させ続けながらも「仕事がつまらないな。嫌だな。鬱だな。体調を壊しそうだな」と悶々としている人がいれば、そんなレールからは脱却してしまっても恐れることはないということです。

 

5. つまり、お金から自由になれる

 つまりは、生活レベルを落とした生活をこうやって望んで継続してみて、私は「お金は人を自由にするものではない」とはっきりと感じています。むしろお金は人を束縛し拘束するものである。私の今の暮らしは、同年代の人に比べれば自由に使えるお金は少ないであろうけれど、精神的な自由は豊富でストレスも小さいであろうと思います。

 そう、高い水準の生活を維持するためにはどうしてもそれなりのお金が必要である。そのためには嫌な仕事であってもしがみついて長時間働かなくてはならない。

 でも逆に、生活を維持するための費用が低く抑えられていればお金はそれほど必要ない。従って、週3日労働でも、一日5時間労働でも充分である。で、例えば、その余った時間を活用してのんびりするもよし、趣味に没頭するも良し、自分で自由気ままにビジネスを始めることだってできるというわけです。

 もっともっとお金を消費してあれこれ買ったりより良い暮らしを志向したりする自由を目指すか、本稿の論旨であるその逆を目指すか。私は後者の自由に魅力を感じてこのような暮らしをしているというわけです。

 

まとめ:生活レベルを下げることに向いている人

 生活をグレードダウンさせることは怖いことかもしれませんし、万人に向いた方法であるとは思えません。お金をたくさん稼ぐことが人生の目標であるという人もいるでしょうし、人よりも豪華絢爛な暮らしをすることに燃える人もいるでしょう。

 だけど、例えば「仕事なんてしたくないのにそれなりの生活水準を維持・向上しなければならないために嫌々働いている」という人にとっては生活レベルを下げることによって、もっと楽な仕事に転職できる可能性があります。転職というとキャリアアップだけがまことしやかに喧伝されていますが、積極的キャリアダウンのための転職があってもいいと私は思っています。

 私は新卒で入社した会社が嫌で嫌で仕方なかったのですが、まさに「それなりの生活水準を維持・向上しなければならないために」仕方なく毎日働いていたのでした。当時は視野が狭かったので「辞めてしまったら給料がなくなる。すなわち生活の破綻に繋がる」としか考えられなかったのでした。

 結局、体調不良で退職した後、貯金を崩しながらの一年半に渡る無職生活を経て転職しましたが、給与は半分程度になってしまいました。それに加え、先にも述べたように後に自分で望んで週3日出勤にしてもらったので現在は月収10万円程度で生活しています。

 でも、なんとかなっています。「辞めてしまったら給料がなくなる。すなわち生活の破綻に繋がる」と私はかつて考えていましたが、無職になっても月収10万円でも私の生活が破綻することはありませんでした。もちろん、運の要素もあるとは思いますけれど、現になんとかなっている。

 なんとかなっていることに加え、自由を手にできている今の暮らしのほうが私にとっては幸福度が高いとはっきりと言えます。かつてのように、嫌々ながらそれなりの生活を維持するために鞭打って働く生活はもうしたくはありません。いくら給与が高くとも嫌です。

 生活レベル・生活水準をグレードダウンさせるという選択肢もあるのだということは、覚えておいて損はないと思います。正解はありませんが、選ぶことは自由であり、どれもが正解であるとも言えるのです。

 
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