ぎっくり腰での仮病欠勤は、その凄まじい瞬発力・やんごとなき緊急性の高さが魅力です。
そして何と言っても、当日欠勤が可能であるということが最大のメリットとして挙げられます。
私事ですが、先日、誠に清々しい休日の朝、「ようやく仕事から解放された。今日はどんなに素晴らしい一日になるだろう」と思いを巡らせているところにふと電話が鳴り「ぎっくり腰になってしまって、寝床から起きれない。代わりに出勤してくれないか。誠に申し訳ない」という旨のことを告げられ、「それは大変だ」とパブロフの犬の如く、何の疑問も抱かずに急遽出勤したものでした。
もちろん、そのぎっくり腰は正真正銘のぎっくり腰だったのですが、ぎっくり腰には人の責任感を誘発する魔法のようなものがかけられているようで、せっかくの休日を妨害されたにも関わらず不思議と悪い気はしませんでした。
これを逆手に取ろうというのが、ぎっくり腰になったと虚偽の報告をして休日を得ること(仮病)です。
ぎっくり腰の仮病、ここがおすすめ!
当日欠勤が可能
冒頭でもお話しした通り、ぎっくり腰の最大の特徴は「当日欠勤が可能」であるということです。
このメリットは「価格破壊」ならぬ「欠勤破壊」とでも比喩すべきものであり、腰の機能が破壊されたとの申告をするだけで仮病者に破壊的な恩恵がもたらされるものです。
社会人たるもの当日欠勤など言語道断なわけですが、ぎっくり腰は数少ない例外なのです。
おおよそ、その際には当日朝に会社に電話をかけ「起きようとしたら腰がやられた。ぎっくり腰に違いない。全く動けない」との報告をすることになります。
「全く動けない」のだから出勤なんて望むべくもありません。にも関わらず「我慢して出勤せよ」などと言う血も涙もない人の腰の痛みもわからない会社はそうそうないと思われます。これを「涙そうそう」と言います。
もちろん、当日欠勤をするのは気が引けるという場合には、前日の夜に「ぎっくり腰になってしまった。動けないので明日は欠勤させて下さい」と申告すれば大丈夫です。
いずれにしても、高確率で休暇を取得できます。
連休取得も見込める
ぎっくり腰の仮病のメリットは当日欠勤だけではありません。
なんと連休まで取得できる可能性が飛躍的に高まるのです。
風邪による仮病欠勤は、休暇日数と後ろめたさが比例関係にあることがわかっています。
すなわち、風邪による仮病欠勤が二日目に突入すると一層罪悪感が強まり、一週間ともなると執行猶予なしの有罪判決を下されたような気持ちになるのです。
一般的な仮病においては単日の休みが無難であり、二連休は冒険、三連休は破天荒です。
これを初夢の「一富士、二鷹、三茄子」になぞらえて、「一良し、二ヤバ、三博打」と言うのは広く知られたところでしょう。
しかしながら、ぎっくり腰においては例外です。
なぜなら、ぎっくり腰は「すぐには治らない」からに他なりません。
そう、絆創膏を貼っておけば良い、薬を飲んでおけば良いという脳天気なものではないのです。
せっかくぎっくり腰で仮病を取得するのなら、連休を取得してのんびりとすることをおすすめします。可能な限り長期に渡って休みましょう。
特に、お盆や正月休みもないようなシフト制の勤務体制になっているところであれば連休なんて滅多に取得できないので、ぎっくり腰の仮病によってもたらされた長期の連休は「ぎっくり腰の奇跡」と呼ばれ、玄人から愛好されています。
雑用や重労働を断ることができる
腰は人体の中枢であり、要点です。
以前私が勤めていたスーパーマーケットの野菜売場においては、玉ねぎやじゃがいも、キャベツ、白菜などの名だたる重量級野菜が詰め込まれたダンボールが山ほどある中、ある社員は「かいわれ大根」を持ち上げた瞬間に腰に激痛が走り、そのまま動けなくなったそうです。
かいわれ大根は空気の次に軽い物質と言われていますから、つまりぎっくり腰になってしまったら何も持てない状態であるとみなして良いでしょう。
従って、ぎっくり腰の病み上がりに出勤した際には雑用という雑用をやらなくていいという恩恵に与ることができます。
「取る」「持つ」「運ぶ」という雑用の三大要素が不能なわけですから当然のことと言えるでしょう。
出勤してただ座っているだけで構わないのです。
ぎっくり腰の仮病のデメリット
メリットばかりと思われるぎっくり腰ですが、それと引き換えに厄介なデメリットも存在しますから留意しましょう。
腰が痛い演技をしなければならない
ぎっくり腰の仮病で気をつけなければならない点は、休み明けに俊敏で激しい動作をしてはならないということです。
従って、間違っても、急に椅子から立ち上がる、機敏な動作で落としたものを拾う、重い壺を持ちあげる、華麗なるブレイクダンス、棒高跳び、などの動作・行為は全面的に禁止されています。
「あんなに華麗なるブレイクダンスを披露して、腰はブレイクしないのだろうか」と上司や同僚から疑惑の目で見られる結果となりますので注意しましょう。
ぎっくり腰は一日や二日で完治するものではありません。
従って、三日程度休養を取って出勤した際でも、腰に痛みが走るから動作が緩慢である演技を終日意識しなければならないと覚えておきましょう。
おすすめの方法は、腰なんて痛くないにも関わらず腰にコルセットを巻いて出勤することです。
そうすることにより意識せずとも自然と腰に負担がかからなそうな姿勢・動作になりますから、説得力のあるぎっくり腰の病み上がりっぽい感じを演出できます。
出掛けることができない
ぎっくり腰は連休を取得しやすいと上述しましたが、連休を取ったからといって旅行に出掛けるなどの行為はおすすめできません。
会社の上司や同僚が心配して訪ねてきた際に留守にしていたり、駐車場にクルマがなかったりした場合には疑惑の目で見られます。
もちろん、腰が痛くても食べ物くらいは買いに行かなくてはならないでしょうから、家を空けることはあるでしょう。
しかし、朝も夜も訪ねたのに留守だったとなれば、疑念は深まります。
仮病はバレることなく完遂されてこその仮病です。
周到すぎるのに越したことはありません。
ぎっくり腰での仮病欠勤中は、家でテレビを見るなり、ゲームをするなり、読書をするなり、木彫の仏像を制作するなり、おとなしくしていましょう。
ひとり暮らしへのおせっかいなお見舞い
ぎっくり腰が物々しい雰囲気を醸し出す理由に「動けない」ことが挙げられます。
我々は「ぎっくり腰で動けない」ことを理由に休暇を強奪するのです。
従って、この優しい世の中において「動けないんじゃあ大変だ。お見舞いに行って、買い物を手伝ってあげよう」という有志が出現してもおかしくはないわけです。
特に我々は、いざという時に何の疑いも持たれぬ仮病で休むために普段の勤務態度は真面目で、それなりに人当たりも良く社内では過ごしているはずですので、それが裏目に出て「お見舞いに行こう」というおせっかいを生み出すことは仕方のないことなのです。
ひとり暮らしの場合、おせっかいが襲来する可能性に留意すべきです。
もちろん、社内で恋い焦がれている憧れの人がお見舞いに来てくれるというのならまた話は別ですが、神様はなかなかそういった名采配はしてくれないものです。
優雅な仮病中にどうでもいい同僚が訪ねてくることほど面倒なことはありません。
対策としては、アポなしで来られてもいいようになるべく外出は控えること、「お見舞い行くよ」と連絡が来たら「両親が面倒を見てくれている」とか「恋人が来てくれているから大丈夫」とか理由をつけて断ることが肝要です。
仮病中に人と顔を合わせることはバレる可能性を飛躍的に高めますから、いかなる見舞いの提案も断ることが肝要です。
まとめ
・ぎっくり腰の仮病は、当日欠勤が可能である。連休の取得もしやすい。
・デメリットとしては、すぐに治るものではないのでしばらくは腰が痛い演技をしなくてはならない。
・コルセットを巻いて出勤すれば、腰が痛い動作を自然と獲得できるのでおすすめである。
・見舞いは何か適当な理由をつけて全力で断るべし。
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