仕事を辞めたい、人生をやり直したい。けれど、うまく行かないたった一つの理由

 ポジティブな自己啓発書には、大抵の場合、「人生はいつでもスタート地点である」というようなことが書いてある。
 賛成。人生に遅すぎることなんて何もないと私も考えております。

 ただ、さらにポジティブでやや過激な向きになると、「仕事がつまらないなら、そんなものは今すぐ辞めてしまって、わくわくすること、楽しいだけをやりましょう。そうすれば人生はハッピー」と無責任にも書いてあったりする。
 これはどうなんだろうか。
 もちろん、仕事を辞めてしまったらお金はどうする、生活はどうするの、という問題もあるけど、それはひとまず置いておいておこう。

 私が問題にしたいのは、「退屈である」「仕事がつまらない」からと言って、それまでとは全く違うことを始めさえすれば退屈が解消される結果になるのか、ということです。

 新しい人生、というのは誰もが憧れることだけれど、そのように人生を一から再出発すれば、充実した毎日を過ごすことができるのか。
 私はそうは思わない。

 

私の友人の例

 彼は常に退屈だと言っていた。
 彼女なし。仕事は家業を継がなければならない。

 恋人さえできれば、この退屈が解消されるのかもしれない。
 家業に縛られなければ、楽しく仕事ができるのかもしれない。

 果たして、出会いがあって、猛アプローチの末に恋人が出来た。
 仕事はというと、家業を継ぐのは嫌だからと、なぜか突然に市議会議員選挙に出馬した。
 新しい自分になりたい、家業に縛り付けられる前に何か始めなくてはという思いからである。

 選挙には当選。約一年後に恋人とは結婚。
 彼は望みを達成した。家業は継がなくていいし、恋人は自分のものになった。全て自分の思う通りになったのである。
 素晴らしい人生をその手に掴んだ。もう退屈ではないし、閉塞感もない。
 晴れ晴れとした気分でこれからの毎日を生きて行ける。

 はずだった。

 当選から2ヶ月後、彼は言った。「選挙になんて出るんじゃなかった」
 結婚から3ヶ月後、「結婚なんてするんじゃなかった」

 要するに、退屈や閉塞感から逃れようとして恋人を作り、選挙に出馬したのだったが、それらは彼の人生をやり直すための役には立たなかった。
 つまらない毎日は、形を変えてまた違うつまらない毎日として彼を取り巻くこととなったのだった。

 

焦点の錯覚 つまらない毎日の原因を見誤ること

 なぜこんなことになったのか。
 なぜ彼のつまらない毎日は、選挙などという大それたことをもってしても、結婚という人生最大の転機をもってしても、つまらないままだったのか。

 

人生は複雑だから、転機であっても大きく変わらない

 我々の人生も、この社会も、一筋縄では行かないことになっています。複雑にできている。
 我々は、例えば毎日がつまらないのは仕事が原因だと感じる時、この仕事を辞めれば刺激的で前向きな毎日が訪れると期待しがちなのですが、決してそうではない。仕事を辞めて転職したとしても、時を経ればまた同じ問題が降り立ってくる。

 つまりは、人生を変えるために転職を画策しても、人生はもっと複雑にできているし、我々一人一人も複雑な感情や様々な人間関係の元にここにあるわけだから、職業というのは要因のほんの一部分に過ぎないわけです。その一部分を変革したとしても、根本的には何も解決することにはならないというわけです。
 我々は、仕事や職業というものは人生に大きな影響をもたらすものであると考えがちで、それを変えれば、人生もガラリと変わると思い込む傾向にある。だけど、それがそもそもの間違い。

 毎日がつまらない原因の大部分を占めると思っていた仕事だけれど、それは単なる勘違いと言っていい。原因のほんの一部分にすぎない。だから、今の仕事を辞めたからといって、劇的な何かが起こるわけではない。
 この勘違いを「焦点の錯覚」と呼びます。

 

「もっといい給料を貰っていれば幸せになれたのに」の間違い

 我々は、就職、転居、結婚などの大きな転機が人生にもたらす幸福度を過大評価する傾向にあります。
 それがまさに「焦点の錯覚」です。
 重要なのはそれだけじゃないのに、それだけが重要であると錯覚してしまう。

 「もっといい給料を貰っていれば幸せになれたのに」「もっと都会に住んでいれば退屈しなかったのに」「結婚さえしていればこんなに惨めじゃなかったのに」などと我々は嘆きがちですが、決してそれらが原因で現在の幸福度が左右されているわけではないのです。
 もっと無数の複雑な要因があるわけなのですが、職業や結婚などの一見大きくみえる事象のせいにしているだけに過ぎません。

 だから、人生を変えるために仕事を辞める、住む場所を思い切って変える、という行為が、本当に人生を変えて、幸福度を上げて、つまらない毎日からの脱却として功を奏するかというと、甚だ疑問なわけです。
 人生はもっと複雑で大きいものなわけですから、それらの「仕事を辞める」「住む場所を変える」というのは、一見は劇的な変化のように見えますが、実は無数の要因のうちの小さなたった一つを変えることに過ぎないのです。

 

人生を変えることは不可能じゃないけど

今の自分から完全に逃れようとする試みは必ず失敗する

 もちろん、人生を変えることが不可能なわけではありません。
 冒頭でも述べた通り、「人生はいつでもスタート地点」であると私は信じています。
 何かを始めるのに遅すぎることなんて何もない。

 ただし、重要なことは、人生を変える、とは言え、いきなり真っ白な自分から始められるわけではないということ。
 自分には自分の性格があり、特性があり、経験があり、記憶があり、それまでの人間関係があるわけなので、それらを切り離して完全なる人生の再出発をするなんてことは不可能なのです。
 外部的要因を荒療治しても何の意味もない。

 憧れるのはわかります。
 だけど、人生に突拍子もないような劇的な変化はない。もしあったとしても、それによってつまらない毎日が恒久的に輝き続けるように変化するわけではないのです。
 我々に羽はない。歩いて行くしかない。

 今の自分から完全に逃れようとする試みは必ず失敗する。

 オリバー・バークマン『HELP! 最強知的”お助け”本』下隆全・訳

 退屈から直接に逃げようとすると、なんであれ失敗するに決まっていて、長い目で見ると逆に退屈を強めるだけである。

 ラース・スヴェンセン『退屈の小さな哲学』鳥取絹子・訳

 

考え方を変えれば、人生が変わる

 であれば、そういった劇的な外部的な変化を望むよりは、自分自身の考え方を変えるほうが賢明なやり方ではないでしょうか。
 仕事を辞めたいと言って転職する人は、転職先でも同じように仕事を辞めたくなるものです。
 田舎だから生活がつまらないという人は、都会に引っ越してもつまらないと言うでしょう。
 ひとり暮らしがつまらないという人は、恋人ができても、結婚しても楽しみが見出だせないものです。

 仕事がつまらないなら、現状でどうすれば少しでも前向きになれるかを考えてみましょう。

 とりあえず一生懸命やってみるというのでもいい。
 ゲーム感覚で仕事に取り組んでもいい。
 自分はやりたくないから全部人に任せるにはどうすればいいのかを考えてもいい。
 会社には一分一秒もいたくないから絶対に残業をしない方法を考えるのでもいい。
 仕事は仕事として、熱中できる趣味を見つけるのでもいい。

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まとめ

 環境を大胆不敵に変えても、つまらない毎日や退屈は解消されない。絶対に。解消されたとしても、それは一時的なもの。
 冒頭で述べた通り、私の友人がそれを証明してくれております。

 だったら、現状はとりあえず維持したままで、考え方を変えてみてはどうでしょう。
 あるいは、大胆不敵に環境を変えるのではなく、ほんの少しずつ変化させてみてはどうでしょう。
 というお話でした。

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