都心への人口流出が激しさを増す反面、田舎暮らしに憧れる人も増えています。どこに住むかを決めることは人生における大きな要素のひとつでもあります。憧れやなんとなくのイメージだけで決めてしまって、実際に生活を始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように居住地を選定したいものです。
本稿においては「生活コスト」つまりは「生活するのにお金がかからないこと」に観点を置いて、住むのに最適な場所を検証していくものです。私の5県7都市に住んだ経験に加え、書籍などで得た知識、ウェブ上でのデータをもとにご紹介していきましょう。
地価 ―家賃はどのくらいかかるか?
黙っていても出費されてしまうのが家賃です。それこそ息をしているだけで一秒ごとにお金が出ていく。ということは、生活コストを下げる基本的な戦略は「家賃の低い物件に住む」ということになります。
都内(23区内)の家賃がべらぼうに高額であることは誰でも知っています。もちろんその分給与も高く設定されているに違いありませんが、高い家賃を払うために高い時給の職場で身を粉にして働くというサイクルが次第に馬鹿馬鹿しくなってしまうことが往々にしてあります。都内に住む明確な目的がないのであれば、避けたほうが無難です。
かと言って田舎が良いかというと、実感としてはそうでもありません。山奥では家賃がタダ同然かもしれませんが、田舎特有の濃密な人間関係に巻き込まれた挙句に村八分的なことが起こり得ることに加え、クルマがなければ生活できない。では田舎県の都市部が良いかというと、これもそうでもない。そもそも物件数が少ないために激しい価格競争が起こらず、思ったより家賃が安くないのです。
私が住んでみて居住環境について満足であったのは、仙台市、高崎市、宇都宮市です。つまりは、それなりに栄えた地方都市です。物件数も多いので探し甲斐があり、その中で好条件でありながら2万円台の物件も出てきます。
水道光熱費
電気、ガス、水道料金も各地域・都道府県によってバラつきがあります。私が衝撃を受けたのは山形県のガス料金で、料理はせずに毎日シャワーを浴びているだけなのに毎月10,000円程度の請求が来ていたことです。地方では都市ガスの整備もままならないでしょうし、民間のガス会社は独占状態ですのでガス料金は高めになる傾向にあります。北海道は家賃が信じられないほど安い代わりにガス料金が信じられないほど高いと聞いたことがあります。
電気代は関東・中部地方が割安で、東北・関西・四国は高いです。水道料金についても各都道府県ごとにバラつきがありますが、関東・中部地方が無難であると言えます。
参考記事(外部リンク):
物価 ―食費はどのくらいかかるか?
衣食住という生活の基本三原則がありますが、この中で最も支出金額が多く且つ居住環境に左右されるのが、上述した「住」とここで紹介する「食」です。
家賃は異様なほどに高額である都内でしたが、食品価格に関してはむしろ安いほうです。この要因としては「競合が多いため価格競争になりやすいこと」「客数が多いため薄利多売が可能であること」が挙げられます。
逆に、田舎は物価が安いと聞くけれど、実際に住んでみるとそうでもありませんでした。むしろ高いと感じられるくらいです。これは都会とは逆で「客数が少ないために価格を上げざるを得ない」ためと考えるのが妥当でしょう。
また、データによれば野菜の主要な産地である茨城県において野菜の価格が他県よりも高いというデータがあり、一概に「産地=安い」とも言えないことがわかります。従って、食品の価格は「産地かどうか」というよりは「流通量、競合、客数」などから総合的に設定されるものと考えて良いでしょう。
参考記事(外部リンク):
・物価、消費についての都道府県ランキング|都道府県格付研究所
クルマは必要か?
私は現在、世帯あたりの自動車保有率のかなり高い県に住んでおり、つまりは完全なるクルマ社会の中にいますが、自動車は保有しておりません。持っていたのですがコストがかかるのを嫌って廃車にしました。つまりは、クルマが必要かどうかは個人のライフスタイルによるものと考えるのが妥当であると考えます。
都内においては駐車場代がべらぼうに高い上に交通インフラが完璧に整備されているのでクルマを所有するメリットは殆どないと言えます。あるとすれば見栄か趣味か節税対策くらいなものでしょう。
私が現在住んでいるのは北関東の地方都市であり、郊外に大型ショッピングモールが乱立するようなクルマ社会ですが、自転車移動でも不便を感じたことはありません。クルマがあれば越したことはないですが、なくて生活できないとかどうしても不便だということはありません。これは日本全ての地方都市に言えることであると思います。
逆に、山間部の田舎に居住することを余儀なくされる場合、クルマの所有は必須でしょう。週に一回、クルマで一時間かけてスーパーに来て一週間分の食料を買い込んで帰っていくという光景は地方では決して珍しいことではありません。家の周辺にスーパーはおろか、コンビニや個人商店もないのでやむを得ずそうする他ないのです。
コストの観点から考えるとクルマの所有は贅沢以上の何物でもありません。私は月10万円以内で生活するためにクルマを思い切って手放しました。クルマの所有にかかるコストは概算で月15,000円、年間で180,000円でした。休日にちょっと出掛ける以外は殆ど乗ることがなかった私でさえこれだけ高額なランニングコストがかかるわけです。
若者のクルマ離れが深刻であるとのニュースをよく耳にしますが、これは見方を変えれば、いずれはクルマなしでも不便なく生活できるような社会環境が確立されていく兆候であるとも解釈できます。クルマは必ずしも必要ないというのが、実際に手放した私の見解です。
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クルマはもう要らない!自動車を手放して一年経って感じた5つのメリット
国民健康保険料 ―意外と地域差がある
納めるべき国民健康保険料は各地方自治体によって金額が違うというのは意外かもしれませんが、実際、かなりのバラつきがあるというのは驚くべきことです。同じく国(あるいは地方)に納めるべき所得税や年金、消費税はどこに住んでいても一律であるのに国民健康保険料はそうでないのです。
受けられるサービスは同じなのですから、安い場所に住んだほうがコスパが良いに決まっています。特に国民健康保険料を納めるべき自営業者・個人事業主・フリーランスの人にとって高額な保険料の支出は死活問題です。
傾向としては関東・中部地方は安く、都心から離れるほど高額になるという傾向が見られます。大阪・兵庫を含む関西地方はやたらと高いです。
参考記事(外部リンク):
・国民健康保険保険料の地域差は最大6.2倍!?|シニアガイド
まとめ:本稿の結論
以上見てきたことをまとめると、
・都心(23区内)は家賃は高いけれど、それ以外にかかる生活コストは安い。
・北海道、東北、関西、四国、中国、九州地方は、総合的に見てコストは高め。
・関東・中部地方は家賃、水道光熱費、食費、国民健康保険料共にコストは低め。加え、クルマを所有していなくても問題はない。
つまり、本稿の結論は下記になります。
・関東・中部地方の都市部(23区内を除く)に住めば生活コストを低く抑えることができる
中でも私のおすすめは「群馬県高崎市」です。物価の低さは隣市の前橋市と並んで全国随一、つまり圧倒的に生活にお金のかからない場所であるということです。私は現在月10万円で生活しているのですが、それが実現できたのは物価が安くて生活のし易い高崎市ならではであると思うのです。
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